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 ひっそりと馬車に乗る旅は精神的にも体力的にも疲れた。

 セシルたちはハープを城に置いていくつもりだったが、気をきかせたタイラさまが三人の物を持ってきてくれていた。

 タイラさまはリンダが音楽を好きなのことに気づいていたみたい。

 荷物になるからとハープを置いていくようにリンダに言った時の彼女の顔を覚えている。だから、タイラさまがリンダにハープを渡した時の喜びがすごかった。

 ふと、そうしたタイラさまのリンダへの細やかな気遣いに触れると、我が道を行くタイラさまだけれどリンダを大切に思っていると伝わってくる。このさりげない心遣いがイケメン中年攻めの奥義なのか!!

  だから、馬車の中にあるハープに触れられなくてリンダは落ち込んでいた。


 リリーもいままで生きてきた世界と違う世界で生きないといけないことに不安な顔を時折見せる。でもセシル自身の様子が不安定だと思ったらしく、馬車の中で明るく振る舞おうとしていた。

 セシルたちの中でリリーが突拍子もないけれど一番我慢強い。リリーに手伝ってもらいながら、セシルが創った植物のまとめを編集した。

 自分でもこんなにたくさん植物を創造していたことに驚く。まだ植えていない植物の種もたくさんある。

 とーさまが数多く新しい植物を育てるのは危険と言っていた。どうして危険なのか理由が分からなかったけれど、とーさまの言葉に従った。だから人々にすぐに必要な植物や北の寒い気候で育つ植物を植えた。

 

 あいにくセシルにはかーさまのように薬草は創れなかった。前世で馴染んだ物しか創造できなかった。




 セイズ王城に着けば、少しは体が休まると思っていたのに……。


 馬車から外を見なかったから、自分たちが裏門から入城した気づかなかった。でも、まわりが静かでおかしいことに気づき外を見た。

 セシルたちは本部隊のセイズ軍と離れて、ひっそりと裏門から入城する。


 ディランに聞いたら、王妃の命令で混乱をさけるためと言われた。納得できるようで納得しないまま案内された部屋へ向かう。

 アリスさまはミチル王族の元へ行った。


 案内された建物は暗くてカビの匂いがする。もしリンダたちがいなかったら、お化け屋敷のようで足が竦んでいた。リンダとリリーとは荷物があるから腕を組むことができずに、お互い近寄って歩いた。


 案内された部屋に一歩入り、暗い上に埃でなにも見えない。


「あの、これはなにかの間違えではありませんか?」


 あまりにもひどい部屋で、案内した使用人に尋ねる。彼女はセシルたちの部屋に案内したら、なにも言わずにその場を離れようとしたから急いで腕を捕まえて尋ねた。セイズ王はセシルを客人と迎えると言った。それがこんな部屋なんて信じられない。


「いいえ、ラングの元王女の泊まる部屋です」


「!!?? ルーク殿下かタイラ殿下と話がしたいです。これはなにかの間違えに決まっています」


 もしかしたらセシルたちは騙されてラング国へ連れて来られたのかもしれない。次々と嫌な創造が頭の中にわく。


(やっぱり私たちは誰かの妾にされるのでは? 幽閉? 見せしめ処刑?)


 リンダとリリーのためにも確認しなければいけない。


「あたしが殿下たちに伝言なんてできないよ。一応上の人に伝えるけれど……。そっちの人たちはあんたのお付きなんでしょ? じゃあ、自分たちで掃除でもすればいい。あんたはもう偉い人じゃないんだろ?」


 目の前の女性はくたびれた感じがするが、若い女性だった。20歳くらいだろう。

 セシルたちにひどく物を言わないのは、ディランがいるからと分かる。


「お願い。上司に聞いてみて。それで食事はどうすればいいの?」


 彼女はチラチラとディランを見ている。


「食堂に行けば」


 ディランがいなかったら、セシルの質問にも答えなかっただろう。彼女はセシルと会話をしている時間が無駄とあからさまな態度だったからお辞儀もせずに去った。セシルたちは知らない場所で途方に暮れた。後は彼女の上司がルークかタイラさまに連絡を取ってくれることに期待するしかなかった。


「私、掃除をする道具を借りてくるわ」


 どうしたらいいか分からず、そこに突っ立っていたセシルにリリーが明るい声で言った。


「そうね。私は食堂に行って軽食をいただいてくるわ。そして今晩の夕食の時間を聞いてくるわ」


 リンダも無理に明るい声を出して言った。


「二人とも危ないですので、ここにいてください」


 ディランには二人の護衛を同時にできないと言ったが、二人は「大丈夫よ」と部屋を出て行った。


 二人が出て行った後の部屋の窓を開けて空気の入れ替えをする。でも窓を開けた途端、汚物の匂いがしたから、急いで窓を閉めた。


 この部屋は不浄場に近いらしい。部屋には汚れた薄いマットレスがすまなそうに一つだけある小さなベットでいっぱいだった。決して四人で寝ることができない。


 リンダとリリーがいくら掃除をしても、ここには泊まれない。

 ディランがベットを触ると、「ッ!!」ノミが飛び上がった。たくさんのノミが埃と一緒に飛び散り、セシルは急いで廊下に避難した。


 もう部屋へ二度と足を踏み入れることができない。ノミがコートにくっついていないか確認する。

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