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「失礼します。第2部隊、ただいまラング王都につきました」


 ラング国第2都市へ行っていた部隊の幹部たちが叔父上に報告する。報告の内容は、争いもなく合併の命を受け入れられたという内容だった。

 数人入ってきた騎士の中に同僚のマリアンナの姿もある。


「ご苦労だった。こっちもすべて安定した。予定どおり明日の早朝に出発する。今夜はゆっくり休め。そうだルークも同僚たちと今夜はゆっくりしたらどうだ? 先ほどから顔色が悪いぞ」


 叔父上がルークに声をかけた。


「ルーク殿下、どこかお体をこわされたのですか?」


「いや、なにもない。大丈夫だ。マリアンナ」


 マリアンナはセシルより背が高い。訓練で引き締まった筋肉質で細い体は、彼女が令嬢ということを忘れさせる。マリアンナは日焼けを気にしていたが、他の騎士のように日焼けをしていない。でも、セシルたちに慣れるとセイズ国民の肌の色が濃いと思った。彼女の顔は整っているし女性ともわかるが、女としての愛らしさを感じないハンサムな顔をしている。

 騎士仲間の紅一点のマリアンナだが、騎士たちは彼女に恋心を抱く者の話を聞かない。ルークの若い同僚たちは強い女性より守ってあげたい女性が好きなようだ。

 その点、セシルは亡国の姫で儚い赴きがあり、リンダやリリーに対しては説明など必要ないくらい守るべき対象なのだ。だから、それが今回の護衛をさらに困難な状況にしている。


 護衛対象がセイズ国へ連れていかれると、ラング国騎士たちの憤慨な直訴を何度も目にする。

 

(なぜマリアンナの顔の批評をしているのだ?)


 セシルのことを考えていたら、他の女性とどう違うのかと考えてしまう。あまりにもルークがマリアンナの顔を凝視していたようで、彼女が顔を赤く染める。


「そ、そうですか? ルーク殿下が無理をしないようにと、ソフィアさまに注意をしてください、とわたくし頼まれたのですよ。それなのに、どうしてわたくしは第2部隊に所属されたのかいまだに納得していません」


 マリアンナはクレード辺境伯爵令嬢だ。彼女はクレード家三女だが、ルークと同じく12歳の時から騎士学科で一緒に学んでいる学友だ。そしてソフィアは母上の妹の娘でいとこだ。彼女は侯爵令嬢で、兄上の婚約者候補に何度も名前があげる。

 だが血縁関係が近いから他の令嬢たちのように、婚約候補のままだ。

 しかし、ソフィアは体の弱い母上の王妃業務を手伝っている。


 マリアンナの実家、クレード領は東南の国境を守っており、国でも重要な地位にいる。跡取り息子も王太子の側近で優秀だ。長女は兄上の婚約者候補の一人で、次女も結婚相手として優良株だ。そんな優秀な家出身でマリアンナ自身も普通の令嬢として結婚相手を探せばいいのに、なぜか騎士科に入学した。


 セイズ国学園は、騎士科、医師科、薬師科、文官科、侍女科がある。国の中央機関に将来努める人材を教育する場所だ。そしてその特別科を選ばない淑女科と言う一般教育がある。

 セイズ国学園は城の敷地内にある。12歳から国の裕福な者たちが入学してくる。医師科や薬師科は将来王族や貴族のお抱え医師と薬師になる。薬師に関しては国の薬剤機関に勤務する。

 セイズ王国学園以外には他にもたくさん国の学校があり、軍科や商科、薬師科や医師科などある。でも国の中央で仕事を得るにはセイズ王国学園を卒業した法がいいから、入学率も学費も高い。


 騎士科に毎年女性も入学してくる。女性たちは大体王族女性たちの護衛になる。多分マリアンナも将来王妃の護衛になるのだろう。

 ルークが入学した年の騎士学科は、マリアンナしか女子がいなかった。だから身分の高い者として、伯爵令嬢に目をかけた。まわりはルークがマリアンナを側近にすると噂している。

 ルークの側近はレイ以外にもう二人いる。後の二人はルークより年上でいまはセイズ国にいる。あくまでも今回の遠征は騎士科卒業実習の一部だから二人は居残りだった。


『コンコン』「失礼します」


「なんだ?」


「アリス姫さまのことです」


 叔父上がため息をついて報告をしろといった。


「はい、アリス姫さまの荷物が多くなり荷台一つでは足りなり荷物を減らすように申し上げましたら、『王女の旅行に荷台一つなど理不尽すぎるわ。もう一つ手配をするように』とおっしゃって、結局荷台三台になりました」


「はあ、そうか……。一体それだけの荷物をセイズに着いたらどこに置くつもりなんだろうな。わかった」


「しかし、叔父上、タイラ閣下、そんな我がままを許してどうするのですか? それにかかる費用はどうするんですか? アリス姫の荷台は一台と決まっていたではありませんか?」


 セシルじゃないが細かい経費を心配する。軍を動かすには一人一人お金がかかる。五日の道のりにかかる費用がある。


「後でミチル国へ請求すればいい。それかアリス姫の資産から引けばいい」


「あの~。それと、アリス姫さまがセシル姫さまに美しい神殿騎士が護衛についたことを大層憤慨していました。『どうして自分には神殿騎士がついていないのか?』と怒っています」


「セシル姫付きの神殿騎士は、ラング国神殿長がつけたのだ。それに彼はセシル姫の幼なじみだ。といってもアリス姫には納得しないだろう。少しセシル姫と話をしてくる。

 あっ、そうだ。ルークも今夜は仲間とおいしい料理でも食べてゆっくりするといい。もうほとんどの仕事は終えたしな。

 私も今夜はゆっくりとおいしい珍しい料理を食べようとするか。ラング滞在最後の日くらい羽を伸ばそうじゃないか」


 叔父上がセシルに会うのはリンダに会って晩ご飯を一緒に食べるためと、ほとんどの側近たちは気づいているから、鼻歌を歌いながら支度を始めている叔父上を顔を引きつらせながら見ている。

 部屋にいた者たちは、叔父上が今回の滞在ずっとサボっていたではないか? と心の中に思っても口に出し命を捨てる行為はしない。

 それに叔父上の側近の中には叔父上が結婚するかもしれないと喜んで応援している者の方が多い。


「まあ、タイラ殿下ありがとうございます。ルークさま、レイさま、どこかおいしいお店を案内してください。城下に降りるのでしたら、わたくしも服装を変えてきてもいいですか?」


 目を輝かせながらマリアンナがルークを見つめる。


「俺も確かめたいことがあるから、叔父上についていく。レイ、マリアンナにおいしい料理を食べさせてやれ」


「ちょ、ちょっとルーク、さま。側近をつねに一人つけないと危ないので俺、いや私も一緒に行きます。マリアンナも遠出で疲れただろう、城の食堂も素晴らしいよ」


 レイが慌てて目の前の書類を抱えてルークの後をついてこようとしたがが無視して叔父上の後について部屋を出る。


「ルークさま!!」


 レイとマリアンナの呼ぶ声を無視して、急ぎ足の叔父上についていく。

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