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 唯一外との連絡ができるデビー女官や女官長に助けを求めたけれど、とーさまは面会謝絶で彼女たちにはなにもできなかった。10日前にセイズから軍隊が王都に進軍していると聞いた。


 国民たちは戦争がはじまると混乱したが、父が自分に会いに来るだけで戦いはないとお触れを出した。

 ミチル王族殺害についてセイズが動いた。と、国民は父のことを案じた。ミチル王族殺害をしたとーさまだったが、彼は賢王だった。彼の時代になってラングは小国の中で飛び抜けて裕福になった。


 同じくセイズ大国の北に位置するミチル国と、土地の位置や大きさ人口は同じなのにここ10年、ラングの国力ははるかに上となった。


 ミチルから隣国ラングへの移民の数も多く、国境で小競り合いが増えた。

 だからラング王が側室の死後、ミチル王と王太子を殺害したことは衝撃なニュースだった。その期を境に、数人の貴族たちが殺害された。


 デビー女官の、どんなことがあってもセシルたちを助けると言う言葉を信じて脱出できる機会を待った。3日前にセイズが入城したと聞いた。

 それからのデビー女官の様子がおかしかった。国民や上級役人、城の人達は無事でいままでのように生活をしていると聞いた。


 セシルは父に会う希望をデビー女官に託したが返事をもらえなかった。ただラング王が王権を破棄をして国がセイズになると。

 セシルは父が裁かれたと思って覚悟した。王家の一員として、連座を覚悟した。

 セシルたちは今後の不安を忘れるために、忙しく屋敷の整理をした。


 また王宮を出てからのことを何度も相談する。セシルは処刑されるけれど、二人に生きる希望を与えるために、城を出てからの未来を話し合った。


 リンダとリリーには、簡素な黒い暖かいウールのコートの裏側に、宝石を何個か縫い付けさせた。二人はセシルにもするように言った。セシルは処刑される予定なので資金はいらないけれど、二人を安心させるために逃げる準備をした。


 王族として国のお金を持っていくことはできない。セシルが縫い付けた宝石は、薬草を売って手に入れたものだ。リリーとリンダの宝石は、二人の女官の稼ぎ。

 セシルたちはお金と無縁だったので、小ぶりの宝石に課金してもらっていた。


 庭にある畑で薬草を育てて、セスに教えてもらった通りに調合した。日常品を渡すデビー女官と交換して、彼女が城の薬剤師に売ってくれた。

 門の横にある小さな窓がセシルたちが唯一外につながる窓だ。小さい時に、窓から外に出れるかなとよじ登ったけれど無理だった。 


「殿下、わたくしは罪がないのでしたら、ここから出て行ってよろしいと言うことですね。

 この屋敷にある金品すべて、賠償金でもこの国の復興にでもお使いください。わたくしたちは、リリーが起き次第にここを出て行きます」


「姫様。私は大丈夫です。すぐに出発の準備をします」


 リリーが体を起こして言った。ついさっき目をさましてから会話を聞いていようだ。


「ちょっ、ちょっと待て!?」


 ルーク殿下の大きな声で、隣にいるリリーの体がおおげさにふるえる。


「いや、ここを出ていくとはどういうことだ?」


 ルークの質問にあきれてため息が出る。


「わたくしはもう王族ではありません。ここに滞在する理由も資格もありません。殿下はわたしには罪がないとおっしゃられました。

 今回の謀反は国民のせいではないので、どうぞラング国民をセイズ国民のようにお守りください。わたくしたちは国のどこかでセイズ国王と王族の皆様のためにお祈りをしております。

 さようなら」


 スカートを少し掴みお辞儀をする。


「リリー、リンダ、行きましょう」


 リンダとリリーも頭をペコっとさげる。



 夕時までに城街に下りて、宝石を課金して宿を探さないといけない。急いで部屋を出ようとしたら、ルーク王子に右腕を捕まれる。


「ちょっと待て! ここから出て行ってどこに行くんだ!?」


 ルーク王子は心からセシルたちを心配している顔だった。セシルの心がきゅっと締め付けられる。


「わたくしたちのことは、ご心配なさらないでください」

 彼の腕を払おうと試みたけれど、びくともしない。


「……いや心配するだろう?」

「この腕を離してください」


「腕を離したら、ここにいるのか? それよりここから出て行ってどこにいくのか? どうやって暮らすのだ?」


 この話方が王子の地だろう。

「いいえ。だから、殿下たちには関係ないことです!」


 ここで時間を無駄にしている暇はない。王子と会話している間、リンダとリリーが不安がっている。大勢の男たちに囲まれている場所から、セシルも早く逃げ出したい。

 セシルは王子を睨みつける。


「お前たちはここから生まれて一度も出たことがないのだろう? 普通の令嬢だって、一人では生きていけないんだぞ!」


「だから殿下には関係ないって言っているでしょう! それにわたくしは一人じゃありません。リンダとリリーがいます!」


 セシルはイライラして低い声を出す。


「世間知らずの若い女たちが生きていける世の中じゃない!」


「リンダは大人で保護者です!」


 王子がまた大きな声をあげて、はっとした顔をしてセシルの腕をはなした。


「殿下、落ち着いてください。セシル姫。あなたはまだ王女です。直接セイズ王から、今後の身の振り方を聞く義務があります」


「そ、そうだ。レイ。すまぬ」


 中性イケメンの名前はレイと言うらしい。彼は黒い髪で茶色の目の色をしており眼鏡をつけている。身長はルーク殿下より少し低いくらいだ。

 セシルも興奮して大声を上げたことを反省する。城から出るまで、身の安全が保証されたわけではない。

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