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 後宮の真ん中に四方囲まれた壁の中に、こじんまりとした平屋の屋敷がある。


 唯一ある門の外側は鍵がかかっており、父王以外が鍵を開けることがない。鍵を壊そうとする女官は、後宮にはいなかった。一度、鍵を壊してかーさまに会おうとした側室が消えた。今の後宮は、16年前に側室たちが暇を出されて以来閑散している。


 とーさまはかーさまを溺愛していた。時間がある時は、いつも箱庭で過ごした。かーさまは傾国姫と言われるだけあって、この世の人と思えない容姿をしていた。


 銀色のくせ毛のない長い髪と深いアメジストの目。セシルが生まれてから16年母の容姿は衰えることがなかった。かーさまとリンダが16年間ふけることがなかったので、この世界の人は歳をとらないのかな。と思った時もあったけれど、父とセスは白髪が目立ちシワもあった。


 リンダは母がこの世で一番美しいと言って、セシルもかーさまにそっくりと褒めた。


「わたくしたちは処刑されないのでしたら、どこかに幽閉されるのですか?」


 応接間に移りセシルたちはソファーに座って、目の前の王子からなんと言われるのを待っていた。けれど王子は何か考えている顔をしたままなにも言わなかった。たまにセシルたちを見て、周りを見てため息をこぼした。


(王女が住むような豪華住まいじゃないわよ! もうあんたなんか鬼畜総受けキャラに決定!)


 しびれをきらしてセシルが沈黙を破った。リンダとリリーは、セシルの隣にいる。


 セシルの横にリリーが横になっており、リンダが彼女を介護している。中性イケメンが失神したリリーを運んだ。彼は柔和なインテリな顔のわりには力がある。セシルはリリーが失神していてよかったと思った。もし意識があったら、彼女の心臓は止まっていたかもしれない。


 リンダがセシルと同席を拒否したけれど、王子に座れと言われたので横に座っている。

 リリーが目を覚ました時に、セシルたちが近くにいた方がいいと言うとセシルが言うとリンダは納得した。


「いや。お前たちに罪を問うつもりはない。だがラング王国は我が国に合併される」

「えっ?」


(うそ!? えっ? それって、殺されない? で、庶民になるの?)


 自分たちが裁かれないと知って安堵しながら、今後の未来設計図が頭の中で駆け巡る。国がなくなることは予想していたことだった。でも、まさか、生きていることができるなんて……。涙が頬にこぼれる。手の甲で目をこすり、確認した。


「ではわたくしは、もう王族じゃないのですね……」


 安堵か今後庶民になれるという喜びか分からないが声が震える。


「……ああ……」


 ふるえる体を止めようとしてもできない。ルーク殿下がすまなそうにセシルを見ている。セシルは王女としてここにいる必要がなくなったことで喜びふるえた。


 隣にいるリンダもセシル同様に喜びふるえている。ふるえるセシルたちを見ていたルーク王子と騎士たちが、心を痛めていたことをセシルたちは気づかなかった。

 セシルはルークの顔を見ないようにして、今後することを頭の中で考えた。


「リンダ。母上の宝石と父の隠していた財宝を持ってきて」

「はい」


 リンダが急いで立ち上がり、部屋の隅に置いてあった箱を持ってくる。

 セイズ王国が父を撃ちにくると言う噂を聞いてから準備をした。何度もここから出ようと思い脱出方法を模索したけれど無理だったから、立つ鳥の後始末をした。


 宝石箱の中にはこの国の特産物のアンバーをはじめ、この世界では宝石と認められなかった石の宝石がたくさんある。

 最初はメープルシロップのような幹の密を甘味にしたらいいと思いセスに尋ねた。

 セスが幹の密について調べてくれた。メープルシロップにそっくりの木があった。セシルはシロップの採集の仕方と熱して密を濃厚にする方法を教えた。

 セシルの前世は北国の農家出身だった。だからここ北国に育つ野菜などすぐに創造することができた。南でしか成長しないミカンの種を創造したけれど、やっぱりこの土地には馴染まなかった。いつか南で栽培したいと言う夢がある。

 セスと神官長と宰相からいろいろな植物の資料をもらって、屋敷には植物博士になれるくらいの図書館がある。


 セスが幹の密が固まっているアンバーの樹脂をおみやげで持ってきてくれた時は、うれしくて叫んだ。

 リリーとリンダは確かに綺麗な石だけれど、セシルが叫ぶ理由が分からず困惑していた。

 セシルはアンバーを加工して装飾品をつくるようにセスに頼んだ。石自体はルビー、サファイア、エメラルドやダイヤモンドのように価値がないけれど。加工する技術ですばらしい値打ちのある宝石にあると説明した。


 その他の綺麗な石も探してきてと頼んだ。

 誤算だったけれど、ラングにはたくさんの鉱山があった。でもただの石として、ターコイドなどの石に目を向けられていなかった。


 セシルは宝石の定義というこの世界の考えを変えるように、父王をはじめ、他の重臣たちに主に美しく希少性があり耐久性がある石でできたカフスなどをつけるように進めた。

 北国のラングは冬が長いから農業をする期間が短い。長い冬に石を加工することで人々の生活が豊になった。

 セシルは国で宝石加工技術者を保護して、孤児院をはじめとした子供たちに教えた。

 セシルが6歳の時にセスに宝石の話をしてから10年。ラングの産業物として、高価だけれど手軽に一般市民も手にする宝石装飾品はラング国の一番の貿易品だ。


 一人前になった孤児院出身の技術者が、かーさまに多くの宝石装飾品を献上した。この宝石はラングの今後の発展に使われるといい。


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