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 セイズへの帰国が後2日後に迫っており、片付けないといけないことが多い。ルークは寝不足な頭で朝から書類を睨めつけている。

 ここまで仕事が増えたのは、すべてタイラ叔父上のせいだ。いや、セシル付きの侍女リンダのせいだ。


 まさかあの堅物な叔父上が恋に狂うと誰が想像したのだろうか? 叔父上はリンダにつきまとって仕事を全部ルークに押しつけた。


 叔父上付きの側近たちも、彼がバカなことをしないかと、叔父上を抑える方が優先事項になり常時の仕事をほったらかしている。


 いや、リンダや叔父上のせいでもあるが、すべてセシルのせいだ!


 昨日一日で、セシルのせいで起きた問題が山積みだ。ただでさえ、国の合併などという大義で仕事が多いのに。

 ルークはセイズ国へ戻る前に過労で死ぬのでは、と心配する。


 ラング王の告別式でのセシルを見た者たちが、彼女を「ラングの女神だ」と噂した。もうすでに庶民の間に彼女のことが広まっている。


 もともとルネンさまに似て「傾国」と呼ばれていたが、今度は「慈愛に埋もれた女神」と人々に言われた。アシール女神の化身で、使いの者たちを連れてラングへ舞い降りた。と噂されている。

 もちろん使いの者たちは、あの姉妹としかみれないリンダとリリー。


 セシルたちが演奏した曲を知りたいという嘆願書も届いた。

 

 

 国民の間で、「ラング王はミチル国から女神を守ろうとした」「セイズが女神を奪おうとしてミチルとラングに圧力をかけた」など憶測が飛び交っている。


 それに輪をかけて、ラング国騎士たちがセシルさまの護衛として、一緒にセイズへ行くと請願してきた。

 その願いを却下した途端、「セイズ王はセシルさまを手に入れるためにラング国を潰そうとした。元にセシルさま付きの女神の使者を、セイズ王族に汚されようとしている」と噂されている。


 タイラ叔父上の一目惚れがいつの間にか、色ボケたセイズ王族になってしまった。


 まあ、タイラ叔父上のあれは、そう思われても仕方ないかもしれない。


 告別式の後リンダに一目惚れした叔父上をやっとのことで、セシルたちと離れさせて仕事をさせたのだが……。叔父上はセシルたちの護衛から、常時リンダの報告を命令した。


 セシルが神殿長との面会を終えて箱庭に戻った時。セシル付きの護衛たちは、神殿の入り口で待っていた。


 セシルに新たな神殿騎士が付いたことを知った。箱庭に入ることをルークの許可が必要と言ったら、セシルたちは、「もしディランが入れなかったら、宿の泊まるわ」と言った。

 だから、仕方なく神殿騎士の護衛を許した。と、今朝テルの報告書に書いていた。


 ディランという神殿騎士は箱庭に滞在して、セシル付きの護衛としてセイズへ行くと書かれている。

 ラング神殿騎士までもセシルの護衛をするのか!?

 名前からして男性なのだが……報告書によると違うかもしれない。


『ラング神殿騎士が美人でヤバいです。こちらの護衛対象が増えた気がするのは気のせいだといいです。


 セシルさまたちは告別式で疲れていたようで、夕食とお風呂の後にすぐ休みました。

 晩ご飯は鶏肉ポットパイとリンゴパイでした。セシルさまたちは天国のご飯をかねてより毎日食べています。セイズのご飯がまずいというかもしれません。


 三人が入浴している時に、美人の護衛が私たちを威嚇していました。時折セシルさまが『リンダのおっぱいがプルンって浮かんでいる~』という言葉が、ひっそりとした箱庭に響きます。

 妻の恋しい私たちには、さらにつらい夜となりました。


 さらに今朝はチーズ入りオムレツにケッチャップをかけて食べました。朝から極楽へいきました。一生セシルさま付きの護衛でもいいとみんな思っています。

 私たちを帰国してもセシルさま付きの護衛にしてください。


 この報告書と同じ内容を、タイラ閣下へ報告しました。』


(頭いてーー!! 報告書で希望書いてくるな!!)


 今朝一番に届いたテルの報告書を読んだ途端、机にそれを投げ出す。レイがその報告書を読んで眼鏡をはずして爆笑している。


(誰が食べた物をいちいち報告しろといったか!!?? 鶏肉ポットパイってなんだ? リンゴパイってなんだ? ケチャップってなんだ?)


 確かにラング王宮で食べる食事はいままで食したことのない物ばかりで美味だ。とくにあのパン。テルが褒めるだけあり、信じられないパンだ。


 セイズをはじめラング国意外のパンは固い物だから平たく焼く。パンはスープなどに浸して食べないと固い。それがラングのパンはそのまま食べてもおいしい。

 さっそくラングのパンの作り方を、何人かの軍の料理兵たちに習得するように命令した。

 

 以前ラング国においしいパンがある、と聞いていた。しかしセイズ国は大国でプライドの高い国民性だ。

 小国から学ぶ物などない。という貴族が多くセイズ王都まで広がっていない。ラング国近くの国境には少しづつ製法が広まっている。


 貴族という者たちは勝手な生き物だ。ラング国を小国とバカにしているが、宝石やエッセンシャルオイルなどを買い求めている。


 今回ラング国が吸収することにより、エッセンシャルオイルの製法や宝石加工技術の特権を手に入れようと、貴族たちがすでに水面下で動いている。


 これは父王が決めることで、出発前に幾人かの貴族たちがルークに根回ししてきたが無視した。


 それにしても、美人の護衛をどうしようかと悩む。美しい女性を四人も連れて旅行をすることを考えると頭が痛くなる。

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