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 王さまは翌日王都へミチルの王女を連れて戻った。

 ルネンさまの捜索は、本格的にされた。人々は王さまが考えた恋愛話をすんなり信じた。それはもちろんルネンさまの美貌が破格的だったからだ。


 孤児院でもなにか些細な情報がないかと一人一人騎士に詰問された。

 ルネンさまが消えた3日後に、孤児にいる15歳の女の子が、ルネンさまが外に出るという情報をある者に教えたとわかった。


 彼女は泣いて謝罪したが、もう誰も彼女を受け入れることはないだろう。彼女は美しいルネンさまに嫉妬していた。ルネンさまがやさしくて明るくて人に好かれる様子を毎日見ていた。日々に嫉妬が蓄積されてとうとう爆発した。


 好きだった男の子がルネンさまを好きと知って魔がさした。以前孤児院の外に出た時に、身なりのいい貴族がルネンさまのことを聞いてきた。

 ルネンさまが外に出る時、知らせてくれたらお金をあげるといわれた。

 お金でかわいい服を買ったら、少しは好きな男の子が自分を見てくれるかもしれないと思った。

 貴族の男もただルネンさまにお話をしたいだけ、と言った。


 その男はミチル国のなまりがあったらしい。


 ルネンさまはミチルの貴族のところにいる、とそれが最後の手がかりになった。


 セスさまが血眼になって探したが、ルネンさまを見つけることはなかった……。



 ルネンさまが失踪して5年後。彼女は17歳になっているころだろう。



 ミチル国の国境の街の娼婦館に、『傾国の美女』がいると噂が流れてきた。まっすぐ腰まで流れる銀髪に、アメジストの大きな宝石の目をしている美女。


 すべての男性が彼女を一目見たいと思い、娼婦館は毎晩人で混乱している。だが彼女と一晩過ごした者は、彼女に精魂をとられて破産する。


 彼女は『傾国の化身』とも呼ばれている。


 そんな噂を確認しに行ったセスさまが戻ってきた。「確かにルネンさまでした」と言ってけれど、顔が悲嘆していた。

 すぐに王へ連絡がいった。一週間もしないうちに、王さまが自ら出向いた。


「奪われた恋人を取り戻す」という名目で、王さまはラングの軍を動かした。ミチル国境軍は手出しもできないくらい、ラング王の威圧に押された。


 もちろん神官長も王さまのお供をした。ルネンさまに会う時に、顔見知りが多い方がいいと王さまが命令した。


 ルネンさまの働いている娼婦館は、最近羽振りがよくなったことがわかる建物だった。館自体古ぼけていて、入り口だけ最近改造した真新しい木の匂いがする。


 ルネンさまの拉致の罪で娼婦館主に尋問したが、ルネンさまが娼婦館にきたのは半年前だった。


 半年前に身なりのよい使用人の男がきて、「この女をつかえ」といって置いていった。その時にお金の請求などなく彼女を置いて消えた。


 娼婦館主は美しいルネンさまをただでくれることに、なにか罠があるのでは、と警戒した。なにか病気持ちなのかなど疑った。


 医者にルネンさまを見せた。ルネンさまの背には、鞭やろうそくで虐待された後がいくつかあった。なによりルネンさまは、精神が壊れていた。


「お願い。抱いて、抱いて。だからぶたないで」


 ルネンさまに会った時に彼女がつぶやいた言葉。神殿長はずっとこの言葉に縛られて生きることになった。


 最初に数人の騎士たちがルネンさまの部屋に入った。その後にセスさまと神殿長が入り、最後に王さまがきた。


 ルネンさまは心あらずに窓辺を見ている。入ってきた者たちを見ることがなかった。ただ時折シーツを握る手がふるえて、「ぶたないで」と呟く。

 


「ルネン」


 神殿長が彼女を呼んだ時に、彼女がこっちを向いた。娼婦館主はルネンさまの名前を知らない。ルネンさまのことを『傾国の美女』と呼んでいる。

 娼婦舘主はルネンさまがラング王の攫われた側室さまと知った時、腰を抜かして地べたに這いずりながら謝罪を懇願していた。

 王さまはそんな娼婦館主を無視した。


「だ~あれ?」


 こてって首をよこに折る。手のふるえは収まっている。


「院長先生だよ。みんな待っているよ。おうちに帰ろう? ほら薬師さまのセスさまも迎えにきたよ」


「いんちょ~せんせ~? セスさま~?」


 今度は怯えた目つきで、こっちを見た。成長したルネンさまから色気が漂う。気だるい態度で、薄いケバい赤色の下着姿のルネンさまを目の前にして、普通だったら正気を失って彼女を襲う。


 でも、いまは傷ついた女性を目の前に、胸が締め付けられる。


「ルネン。セスです。覚えていますか? 王都で薬師の勉強しにいくと約束したでしょう? そして王さまに挨拶しようって言ったでしょう? ほらラング王がこうしてルネンを迎えに来たよ。

 ルネンが、将来かっこいい王子さまが迎えにきて、結婚して自分の本当の家族を作るって言っていたでしょう?」


 ルネンさまが王さまを見上げた。正気のない目に、光が少し戻った。


「いやーーーー!!」


 ルネンさまがベットのシーツを頭からかぶり大声で叫び泣き出した。

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