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 セシルが創造した赤いバラと白いバラ。そしてかーさまの目の色の紫のバラ。どのバラも匂いが強くオイルが多く抽出できる。アシール神の意向なのか地球の植物を真似ているのに、この世界用に植物が変化している。



 どうしてもエッセンシャルオイルを作りたかった。羊脂と熱々の木灰でできた石けんは臭い。この世界の石けんを使用する度に、かえって汚れる気がした。

 石けんや化粧水を作るためにフローラルウォーターも作りたかった。


 鍋を使い水蒸気蒸留製作したけれど失敗した。お湯を沸かして水蒸気を発生させ、花びらを蒸す。バラの花びらに含まれる芳香成分を水蒸気と一緒に冷却部のパイプを流れてきた液体を集める。


 前世の記憶を元に何度もセスに説明をした。前世のセシルは家庭的な女性で多趣味だった。少しでも顔が整っていたらお一人さま人生と違う人生を歩んでいたのに。


 10歳の時に、「『石けんはいい匂いの物じゃない!』と、体を洗った気分にならないよね」とリンダに話した時に記憶が沸いた。

 もちろん前世のセシルの記憶を思い出す度に、セシルは倒れた。


 リンダとセスはよく倒れるセシルをなにか珍しい病気持ちではないかと心配している。でもセシルが理由を二人に言うことはない。


 バラの花びらは数が少ないから、精油製作実験には使えない。

 代わりに香りの強い植物を使った。セシルは一年水蒸気蒸留製作をしたけれど結局成功しなかった。

 でもセスがラング国の開発機関に究室に持っていった。


 セスがアイデアを提供して一年もたたないうちに、ラング国の研究者たちが水蒸気蒸留器を開発した。

 とーさまはすぐに民間に精油を生産工場を建設した。精油を使用した石けんや化粧品は、ラング国の特産物になり、他国から買い求めにくる者が多い。

 精油生産方法は国が管理をしており、国家秘密だ。今後セイズ王族が管理する予定だ。


 リンダとリリー専用のエッセンシャルオイルもある。二人が植物の花、葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などを好みに混ぜたもので精油を作ってもらった。

 もちろんセシルとかーさまの分もある。二人の分の中にはバラが入っている。


 かーさまが亡くなってからも定期的にバラの香りのエッセンシャルオイルが届く。

 「いつもたくさんの香りを届けて感謝しています。どれも素晴らしい香りで心が癒されています。でも、もうかーさまはいないから、必要ありませんよ」と精油工場長に手紙を書いたのに、「これはルネンさまの香りです。どうぞセシルさまが持っていてください」と返事をもらった。



 定期的に工場長からたくさんの香りのサンプルが届く。その度にリリーとリンダとセシルの感じた評価を添えて工場長にお礼の手紙を送った。閉ざされた箱庭で、リリーたちと植物の匂い当てをして遊んだ。

 香りはセシルたちの孤独な箱庭の楽しみの一つだった。

 数年でたくさん溜まったサンプルは、セイズ王妃の贈り物にしようと思う。

 

 (少しの間、セイズのお城に滞在するからお土産を持っていかないと。)


 バラはラング王城のあちこちで見られる。

 他国の使者たちがラング王城に訪れるさいに、バラを見てに驚嘆する。人によってはラング王城は楽園と言った者もいた。

 可憐で豪華なバラの噂が他国にも伝わるのに時間がかからなかった。


 市場にバラの苗木が販売されているが、育て方を知られておらず庶民にはなかなか浸透しない。

 他国王族たちから庭師たちを派遣された。ラング王の許可で友好国家にだけ育て方を教えた。

 もちろんセイズ王国からも庭師が派遣されたらしい。でもミチル国の派遣は拒否したらしい。


 赤いバラと白いバラが市場に出回っている。でも紫のバラはこの温室にだけ植えている。


 とーさまにあげるバラを促進した後にすべての枝を切り苗木にする。根を麻でくるむ。

 セイズ王に二本献上する予定で、後の二本はセシルが持っていく。


 世間はラング王はめずらしい植物が好きだから、バラの花も遠い海外から取り寄せたものと世間は信じている。


(やさしい紫の花びら。気高い匂い。人を、かーさまを微笑ました高貴な花を咲かせてください。)


 毎年6月になるとバラは花を咲かす。つぼみができるとかーさまは毎日バラの枝に話しかけていた。かーさまは促進の力を使用していたのかもしれない。


 かーさまは紫のバラが咲く度に、ガラスの瓶に飾る。とーさまが部屋に入ると、挨拶もなしにバラの花を見せて微笑む。

 かーさまの笑い顔を見ているとーさまの顔が一番幸せに満ちている顔だった。

 そんな二人を見るのが好きだった。


 バラを三本促進している間に、あの失われた時間を思い出す。

 

 三本のバラを用意していた水の入ったバケツに入れる。後でリンダに一本一本リボンをつけてもらう。セシルの色は水色。リンダの色は黄色でリリーの色はオレンジ色。

 とーさまがセシルたちにお土産をくれる時、いつも色が決まっていた。かーさまは白だった。とーさまにとってかーさまの色は白と決まっていた。


 リンダとリリーはとーさまにあげる最後のプレゼントを、セシル一人であげるといいと言ったけれど、とーさまはリンダとリリーのことも愛していた。


 リンダのことを妹のように、リリーのことをもう一人の娘のように。

 バラの手入れを二人もしている。とーさまとかーさまの特別な紫のバラを二人からもらった方がとーさまも心置きなくかーさまに逢いにいける。


 グリーンハウスから出て、護衛のテルとノブがいた。二人はセシルの顔色を見て心配する。促進して対価を払って気分が優れない。とーさまとかーさまを思い出して涙が出たから目元も赤い。でも、二人はきっとセシルがアリス姫さまのことで泣いていたと思われているかも。

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