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「セシル殿下!」


 タオルを首に巻いき元は白かったエプロンをつけた大柄な体つきの油の乗った40代の人が近づいてきた。

 護衛のミックがセシルの前にとっさに出た。


「私です。城の料理長のヤーリです」


 想像していた人相と違って驚く。もっとデブを想像していたが、筋肉が引き締まっていて軍人と紹介された方が納得できる。


「まあ。ヤーリ。わたくしのことは手紙の時と同じに愛称で呼んでください」


 にっこり微笑むと、ヤーリの頬が赤くなる。


 ヤーリと挨拶をして、今日のランチメニューを食べた。護衛たちは一緒に食事をすることを最初は拒んだが、命令でやっと席に座ってくれた。

 今日のメニューはカボチャと大豆の煮込みとオートミールのパンだ。ラング国には燕麦があった。ラングは小麦より燕麦が育ちやすい。


 オートミールも昔からこの国の保存食として大事な主食だ。セシルが教えた酵母のフワフワパンによって、さらに食文化が増えた。酵母菌を作っている時に、リンダたちが変な顔をしていた。


 酵母菌はリンゴからしか作ったことがなかったので、セシルが7才の時にリンゴを創造した。

 リンゴの種を創造した時は一日寝込んだ。リンゴを食べたくて毎日促進した。促進をして10目に倒れて3日寝込んでしまった。起きた時にまたセスとリンダにすごく叱られた。


 セシルの促進力によって、二年後にリンゴの実ができた。父王の命によって、ラング国全土にリンゴの木が植えられた。

 城内にもリンゴの木が植えている。春時のいまは、りんごの花の甘い香りが漂う。

 木にリンゴが実った時の国民の反応は凄かったとセスから聞いた。もちろん料理長ヤーリにアップルパイをはじめ、ジャムやりんご酢の作り方を教えた。

 人の手によって、りんごの果実酒も発達されている。酒の作り方が分からず、酒には手をださなかったけれど。酒作り文化は自然に進化している。

 寒い土地だから、体の温まる酒は人が興味があるようで発達している。

 ジャガイモでも酒を製造しようと試みる民がいるらしい。近いうちにアクアビットが飲める時がくるのかな。とセシルは今後広がるラングの食文化を楽しみにしている。

 

 お酒の話をセスとした時に、ぶどうを創造した。巨峰をイメージしながら神に祈った。何日も何日も創造したけれどできなかった。

 次の年の「パンドケーキの中にレーズンを入れればもっとおいしくなるのに」と、前世で作ったレーズン入りパンドケーキを思い浮かべた時に、手のひらに種があった。

 庭に植えた時に黒いぶどうができた。ぶどうの柵を立ててもらい、何度も花整や摘房、摘粒を繰り替えして二年目においしいぶどうができた。

ぶどうでワインを作ろうと試む者がいた。

 一年前にワインがとーさまに献上された。ワインを樽で熟成するとおいしくなると教えた。ワインは上流階級で少しづつ広まっている。

 レーズンはすぐに国民に広まった。ヤーリとレーズンレシピ交換した。レーズンパンはリリーの大好物。


 セスはセシルがする植物の手入れの仕方に興味を持った。この世界の人たちは植物は植えたままで手入れをしない。でもラングでの農業の仕方が少しづつ変化して、いままで農業国家のセイズからの輸入で食料を補っていたが、自給自足が国でできるようになっていた。


 国民に酵母菌を教えて、パンの作り方を教えた。

 リンゴやカボチャやニンジンによって、ラングの人たちの偏った栄養失調が改善された。

 もちろん国民はこの野菜や果物の栄養素など知らない。

 セスに言われて創作した植物についての記録をしている。しかし、その書記は秘密だ。

 緑の民が自分の創った植物の記録書は神殿に保管されている。でも大概の緑の民が一生涯で創造した植物は、一つか二つだ。


 セシルとかーさまは異常だと。セシルが言った。かーさまは薬草を6つ創作した。

 いろいろな食事の知識を知っているセシルを、料理長は神童だと思っている。


 セスととーさまは国の重臣たちに、セシルは神童で書物から珍しい植物を調べ、とーさまとセスに進言してくると伝えている。

 神殿長から多くの書物を寄贈されていることを大臣たちは知っているから、セシルが神童で植物に詳しいと思っている。

 セシルとかーさまが緑の民と言うことを知っている者は、リンダ、リリー、とーさま、セスとラング神殿長だった。


 城の食堂でヤーリと会話中に何人もの騎士たちが、話しかけてきた。多くの者たちが、セシルの護衛をして一緒にセイズに同行したいと嘆願する。


 もちろんセイズ騎士のテルに拒否された。その時の自国の騎士たちの顔が怖くてリンダがふるえた。


 セシルは「守ってくれるとおっしゃってください、ありがとうございます。でも、もうわたくしは王族でなくなるから護衛はいりませんよ」と微笑んで言った。

 騎士たちが呆気に取られた顔をした後に、片膝を床につき、剣を差し出した。


「セシルさま。もうそろそろ告別式の準備をしないといけません。それではみなの者、われわれはここで失礼する」


 テルがセシルの腕に手をそえて立たせて廊下へ急き立てた。


「ちっと待ってください! セシル殿下、わたくしたちの忠義を受け取ってください」

 

 廊下を出た時にひざまづいた騎士たちの声が聞こえた。

 とーさまをなくして、今後仕える主がいなくて不安なんだろう。でもセシルは庶民になるから騎士たちの護衛はいらないし、給料を払えない。


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