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ラング城は石作りで壁にタペストリーがかけられている。歴史のあるタペストリーを眺めるだけで何時間も過ごせる。
廊下を歩く度にたくさんの人垣できていた。セシルを見ると敬礼をしてくるからついセシルも返した。その度に護衛の人たちに注意をされる。
セシルはいままでこの国を、また父王を支えてくれたお礼を伝えた。
涙を流す者たちがたくさんいた。とーさまがみんなに愛されていたことを知り胸が熱くなる。
廊下を歩いていたら、よい匂いがしたので食堂へ行った。料理長はすぐにセシルたちに気づいて、席をすすめた。
セシルたちは料理長とも文通している。ラングの料理を教えてもらったり、またセシルも新種の食材の料理の仕方を教えた。
セシルが物心がついた3歳の時に植物に触れるとその生体が頭に入ることをリンダに伝えた。セスからセシルもかーさまと同じで『緑の民』と教えてくれた。
セシルが5歳の時に、冬の長いラングでは餓死する人もいると聞いた。だからこの世界の創造主、神様『アシール』に祈った。
(ジャガイモを作りたい。丈夫なおいしいジャガイモ。日本で食べていたメークイン。)
祈りを捧げる時に、ジャガイモを創造した。さらに畑に植えていたジャガイモの姿を思い出した。
どれほど祈っていたのか分からない。
ふと意識をした時にセシルの手にジャガイモの実があった。実の中にたくさんの種子がある。
セシルはジャガイモを創った。メークインに似たジャガイモは前世日常よく手にする食材だったから簡単に種ができた。
種を植えて育てた。ジャガイモはセシルがはじめて創造した植物だった。
日本で食したジャガイモと同じだった。もちろん涼しい場所に置いておくと長く保存のきく食材で、ラングの冬季の餓死者が減った。
もちろん芽が生えた部分は毒になると、農民の苗を配る時に伝達した。最初の栽培は国が全部援助し、その年はジャガイモ栽培をしている農民の免税で一年もしないうちにジャガイモが広まった。
ジャガイモは芽からも種子からも育つから広まりやすかった。
セシルは料理長にジャガイモ料理を教えた。粉ふき芋をはじめ、フライドポテト、マッシュポテト、コロッケもちろん他の野菜と組み合わせたスープ。
芽が出たり、少し柔らかくなってしまったりした時に、捨てずに片栗粉を作ることも教えた。
器に水を入れ摩り下ろしたジャガイモを水の中で、揉み洗いする。洗ったら漉し布をしっかり絞り、ジャガイモを洗った水はでんぷんを沈殿させるためそのまま置く。その作業を何度かして乾燥する。
片栗粉の作り方を料理長に教えた時に手紙の交換を何度もした。
片栗粉を使った料理を伝える時も悪戦苦闘した。ハチミツや牛乳に混ぜて食したり、肉の揚げ物のころもに使う料理の仕方などを教えた。
うどんなど作るほどの量は確保できなかった。うどんは小麦粉を使い作った。
ラング国では小麦粉はセイズ国から輸入されるから高い。
片栗粉は保存がきくので広められた。片栗粉は国民には広まらなかったが、料理人には広まった。片栗粉を使用してとろみのあるスープなどを作っている。
ジャガイモが上手にできて調子にのり、セシルはニンジンとカボチャを創った。
二つを創った後に、倒れて二日間眠りつづけた。起きた時はリンダたちが大泣きをした。
その夜、とーさまが箱庭に来て、セシルの頭を何度も撫でてくれた。
セスから、「新しい植物を創った対価で倒れたんだよ」と教えてくれた。その年は他に何も創作できなかった。
もちろん植物の育成促進もできなかった。