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 セシル姫が持ち出したい物は彼女の物。しかし、その後はセイズ国の限られたものたちで管理をする。ますます理解できない。ただセシル姫に関して、父王の関心が高い。だから叔父上を脅してまで彼女の身の安全を騎士たちに命令したのだ。


 彼女たちの安全を万全にしなくては……。


 だが! あの女! 護衛はいらない!?

その前に、ルークたちがセシル姫をちびデブはげにあげると勘違いするし。ベトベト油顔もだった……。幽閉、戦利品、一体セシル姫の中で、セイズ王族はどれだけ非道なんだ? 


 イラッとしてそれはないと否定したが、なぜか無理な結婚もないと……。戸惑う自分の気持ちに驚く。


 セシル姫が結婚と言う言葉をつぶやいたときに、セシル姫と結婚……。

それもいいな……。という気持ちが沸いた。自分の気持ちに戸惑う。絶対、同じ王族として、身分を失う王女への庇護欲だ。


きっと、そうだ。絶対そうだ。


 セシル姫に自分の名前を呼んで欲しいと思う自分にも、そう彼女に言った自分にも戸惑う。

 幼い頃から自分の側近になるために育ったレイは、いつもと違うルークをニヤニヤして見ている。


 そういうレイも、伯爵家の次男でやさしそうな見た目の彼は、令嬢たちに人気だ。彼がリリーを自分から抱き上げた時には目を疑った。自分の興味のあること以外は、無駄なことをしない男だぞ? 


 腹黒いレイに目をつけられた男嫌いなリリーを可哀想に思う……。

 ……セシル姫にラング王の葬儀の予定を伝えた途端、彼女のアメジストの目から涙がこぼれた。とっさに彼女のしなやかな頬に流れ落ちた涙を拭いた。


 自分の行動に驚く。時間がなくて彼女から離れないといけない自分の身分を恨む。もっと彼女と一緒にいたかった。


 なのに! 護衛たちの報告を読んでイライラさせられる。


 王女が晩ご飯を作ったり、畑仕事をしたりそうじ洗濯などの家事をして。侍女たちと一緒に眠る。まあそれは仕方ないが……。


多分、護衛の男たちが近くにいて、侍女たちが不安になり、セシルが一緒に寝るように言ったのだろう。あの侍女たちは使用人じゃなくて、セシルの家族だ。


 だが護衛たちはなにをしているんだ!! 一緒に晩ご飯食べて朝食食べて!! 


『生まれて始めて食した物で絶品だった。噂で聞いた黄金の櫁、ハチミツをふっくらしたラング特有なパンにつけて食べた時は死んでもいいと思った。』


 というテルの報告!!


『最後にお風呂をリンダさまが沸かして、三人一緒に入った時に、「きゃっきゃ、おっぱいプルンプルン」というセシル姫やリリーさまの会話はいくら既婚者の護衛としても、遠征で10日以上妻と離れている身には辛いものがあります。


 セシル姫様が我々護衛にも三人の入浴の後に風呂をすすめられました。甘い匂いの漂う浴室で甘い石けんでした。』


……と……。



(甘い石けん?)


 ルークは報告書を読んで頭が痛くなった。セシル姫たちを王都へ護衛する道中を考え、さらに頭が痛くなる。ましては、アリス姫がそれに加わる。


『トントン』


「失礼します。テルです」


 この頭の痛い報告をした護衛だ。今朝の彼の報告を読み終えたところだった。セシル姫の報告書を先に読んだレイがにやけながらルークに渡した理由が分かって頭が痛い。

「入れ」

 セシル姫の護衛には全員既婚者を選んだ。神殿騎士も既婚者だ。テルは子供受けのいい穏やかな性格で優秀だ。既婚者を護衛に選んでよかった。


「はっ。あの……」


「どうした? セシル姫になにかあったのか?」


 まだ式までには時間がある。


「はあ……。今朝朝食の後に、報告書を送った後になりますが。セシル姫が式のはじまる前に、城内を見学しながら父と母がお世話になった人たちに挨拶をすると言って……」


「はっ? セシル姫は一度もあそこから出たことがないんだぞ!? いきなり城を歩いていたら、みんな混乱するじゃないか!?」


(なにをやっているんだ! あのバカ!?)


「は、はい。俺もそう思って止めたが、いままで幽閉されていて可哀想になって少しだけと思いまして……」


 ……ルークもテルの言い分が分かるから、それ以上咎めることをやめた。


「それでどうなった?」


「は、はい。最初、後宮取り締まりの女官と女官長に会いました。城内を散策された後に食堂に行かれました……。料理長と会話して食堂で昼をとりましたが、その噂を聞きつけた人たちが食堂に押し寄せてしまい……。


 その後、おとなしく後宮に戻ろうとした時にアリス姫さまと出会いまして……」


 テルが息を飲み続きを話す。


「その……アリス姫様が、セシル姫様の母上、ルアン妃様が娼婦だ……とおっしゃられました。

 セシル姫様はいまは屋敷で告別式の準備をしておりますが、セシル姫様がしばらく一人にしてくださいと言って、温室というガラスで作られた部屋へ入っていかれました」


「くっそ! セシルは大丈夫なのか!」


 『セシル』と口に出す。『セシル姫』と呼ぶより彼女を近くに感じる。


「あちゃあ」


 一緒に報告を聞いていたレイも顔を歪ます。


 アリス姫がセシルのことを嫌っていることをルークは知っている。セシルは母親が娼婦と知らなかった。ルーク自身詳しくは知らないが、そんな噂を聞いたことがあった。ルアン妃自身の情報はほとんどないから、世間は好き勝手に想像して噂をしていると思っていたが。


 いままで世間から悪意から守られ生きてきたセシルが傷ついているはずだ。彼女を慰めなくては……。


「ルークさま。いまは始末をする書類がありおます。式まで終われせてください」


 レイはあくまでも優秀な融通のきかない側近だ。


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