さわり.4
七不思議なので、最低 “七”回やらないとダメですよね♪
「……七不思議を検証しようかな、と」
ナツキの表情がパーッと明るくなる。
「いい! うん、ゼンゼンいいじゃん! 〈ヨット高七不思議〉の真相ねッ」
それは僕たちの学校にも当然のように存在する。
何かの拍子でふと耳にする、最も身近な怪談話――
彼女の無邪気な反応にホッとする一方で、
やはりどうしても拭えない不安を、僕は再認識することになった。
「何か……問題があるの?」
「突っ込んだ記事になるかは分からない。でもたぶん、最後に行き着く先は、“つまらないもの”になる気がするんだ。だから先輩たちは手を出さないんだと思う」
「どうして? 〈ヨット高七不思議〉なんて聞いただけで、私とってもワクワクするよ!」
「途中まではね。でも噂は、やっぱり噂なんだ。そこに確かなものなんて存在しない。真相を究明すればするほどワクワク感はないよ。それにないことだってあり得る」
不思議そうに小首をかしげる彼女に、
「結論がないかもしれない」と僕は言った。
景山部長と榮倉先輩は、プロ顔負けのしっかりとした記事を作る。
現在、彼女ら(主に榮倉先輩)が粉骨砕身・猪突猛進の、
極端な前のめり姿勢で取り組んでいるのは
女子が着用する体操着の改革だ。
ブルマ、とまではいかないが
体育の授業で着用を義務付けられている女子の短パンの丈は、
確かに目のやり場に困るほど極端に短い気がする。
それについて昨年の夏から問題提起を始め
それまで見向きもされなかった〈ヨット高新聞〉で世論
(女子生徒。一方の男子生徒は密かに改革の阻止を試みているとか、
いないとか)を味方につけ、
そしてつい先日、一向に取り合わなかった教師らとの会談の場を
設けることに成功している。
そこで話し合われた第一回目の会談の内容は
来月号の〈ヨット高新聞〉に掲載されることだろう。
政治の面は足りている。
だから僕らに残されているのは芸能面とスポーツ面だ。
いかがわしいピンク面でもいい。そっちは呉介の専門だ。
「――だから、保険を掛けておきたい。記事が完成しても、部長のゴーサインが出ないと水の泡だ。紙面に穴を空けるワケにはいかないから、加賀さんは、僕とは別に動いてほしい。バレー部でも野球部でも、それとは別に記事を作るつもりで」
「えーっ、そんなあ……絶対に大丈夫だと思うけどな。だって何を聞けばいいの? 取材って言っても、一人で大丈夫かな……」
「新学期が始まって、新戦力とか中心になる選手が交代するから特集企画ってことでさ。たぶん、それでなんとかなると思うけど」
「あ、あのさ……私、野球部とか、ちょーっと無理かも……」
そう言って、ナツキは苦笑する。
「でもでもッ! バレー部とか女子バスケット部だったら、知ってる子が居るから大丈夫! やるんだったら、そっちがいいな……ッていうか絶対そっち! 野球部ムリ、それだけは絶対ムリだから! ムリったらムリムリ!」
「ウチの読者は、ほとんどが女子だから問題ないと思うよ」
顔を何故か真っ赤にさせたまま、
ごにゃごにゃとまだ話し足りない彼女に「じゃあそれで」と
適当に言って、すっかり暗くなった階段を僕は下りた。




