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かいめい.5

「完敗ね。脱帽だわ」


 景山部長が僕に言った。

 部室には他にナツキとマユが残っていた。榮倉先輩は外に出ている。


「これで、行くわ。貴方が書くのよ。少しずつでいいから、今からまとめておきなさい」

「いえ、実は“まだ残っている”んです」


 思わず顔をしかめた景山部長が、僕には新鮮に映った。

 部長のこんな無防備な表情を、これほど間近で眺めたことはない。


「まさか、まだ納得してないとか」

「はあ。納得と言われれば……してません。その件について、“残っている仕事”があるんです。呉介が指摘した、彼女が放課後の学校を歩き回る“理由”。僕は、決着を付けなければならない」

「決着? 誰と?」



「“あの人”は限りなくクロです。僕たちの大先輩ですよ。先輩がやってしまったことを、正すのはやはり僕たちだ」


 時計を確認する。


「その口ぶりから想像すると、かなり面倒な人とやり合うみたいだけど、その人を相手に自信はあるの?」

「分かりません。分かりませんが、最後までやり通します。はまる当てのなかった最後のピースも、ついさっき見つけましたし。あの呉介も少しは役に立つんです。つきましては部長、それをお願いしていいですか?」



 簡素な壁掛け時計が示すのは、午後四時を少し過ぎたところ。



 この世ならざる魑魅魍魎が実体を成し始める、逢魔時の只中だ――



「柴崎君」


 はっとして戸口で振り返る。

 おそらくマヌケな顔をしていたに違いない。

 部長は僕を見やると、出しかかった言葉を喉の辺りで止め、

 ふっと照れたように笑いかけた。


「とてもじゃないけど、これから戦いに行く男の顔じゃないわ」


 クスクスと、後ろで小さな笑い声がこぼれる。ナツキだろう。


「……どんな顔したっていいんです。主役はいつも僕じゃありませんからね。先に会場に乗り付けて、せいぜい盛り上げてきますよ」

「うん、楽しみにしてる。その時は〈ヨット高新聞部〉を上げて、取材に詰めかけましょう」


 そう言って彼女は、戦場へと僕を送り出す。


「最高のライブにしてきなさい。ラヴィーニャのために」




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