ヨット高校新聞部!!
半径二十キロ圏内は、緑色に困らない。
近隣に民家はない。
娯楽施設は勿論ない。
『青春』には必須イベントとも言うべきの
学校帰りの買い食いさえも、容易にさせてはくれない。
最寄りのコンビニまで足を延ばそうものなら
アップダウンが交互に訪れる、
急こう配の山道を必死の思いで征服しなければならない。
不満を挙げたらキリがない絶望的な立地であるが、
それでも健やかな少年・少女のための
健全な活動には事欠かない。
学校の前には清々しい【森林公園】が四季を通して広がっているし
そこからもう少し歩けば、テニスコートや野球場
天然芝のサッカーグラウンドや
陸上の八百メートルトラックが敷設された
真新しい【多目的運動場】がある。
恋愛やら友情やら
そこではテレビドラマに勝るとも劣らぬ
たくさんの甘酸っぱい青春物語がきっと展開されることだろう。
僕たちが通う【四戸高等学校】は、
そんな素晴らしい(?)環境下に存在する。
「締め切りが迫っている」
その部屋に入るなり、
景山部長の冷ややかで侮蔑のこもった視線と
相手の心に確実に突き刺さる鋭い言葉を浴びせられて
僕は意識が飛びかけた。
「今回の貴方の担当、ここ全部だから」
「ちょ、ちょっと待ってください、先に紹介させてくださいよ!」
「……紹介ってなに? イミフ発言やめてくれない?」
「部長の世界とは“別に”進行している世界の話ですから、まったく気にしないでください。それどころかサッパリ忘れてください」
「並行世界ってヤツね。ファンタジーは私も好きよ。そこにツッコむと“こっちの時間”が止まるから、そっちで勝手にやってちょうだい」
了解です部長。サクッと終わらせます。
ちなみに僕の目の前の
ありとあらゆるすべてに置いて
とにかくステータス値が“チート的”に高過ぎるこの女性は
景山真理先輩だ。
彼女を紹介するなら、僕はたったの一言で終わらせる。
“こっちの世界”のラストボス――
たぶん間違ってない。ってか正解。
部長のプレッシャーが増したので次へ移る。
我が愛すべき【四戸高等学校】
(以降、通称の【ヨット高】とする)の校風は
『文武両道・清く健全な学校生活』である。
本人の意思の有無に関わらず
六時限目の授業が終われば誰もが部活動に励まなくてはならず
その高校生活を左右しかねない部活動の希望届を提出した結果、
なんと僕に割り当てられたのは、まったく予想だにしない第三希望――
この〈ヨット高新聞部〉だったのである。
それなりに充実した高校生活と共に、
校内新聞の制作活動も二年目を迎え、
編集作業も次第に板についてきた。
毎月一号をメドに僕たち〈ヨット高新聞部〉は、
学校周辺で発生した“何かしらの事件”を見付けて
無理やり記事にしなくてはならない。
そう――
ここまで、さりげなく登場している僕は……
「終わった?」
「ここから僕のことを語ります」
「この“凡人”は二年の柴崎司、以上おわり」
「そ……それだけ……?」
「たっぷり凝縮されてると思うけど。“凡人”ってトコに」
「“そこ”ッ!」
「柴崎君のステータス値は“そっちの世界”で勝手に振ってちょうだい。どうせ上限は決まってるから。締め切りが迫ってるの。“こっちの時間”、進めていい?」




