うわさ.4
これは、そのための集まりだったのだ。
壁掛け時計を覗くと休み時間が既に終わりそうだ。
「ああ、ハイハイ……えッとね、バスケット部の一年生――あ、もうその人は希望届を出す前に入部が“内定”しちゃってるのね。だから、それくらいすッごい人が、新入生に居るんだ。バスケット部の佐々木加奈子さん!」
それから彼女の言葉を僕と呉介はしばらく待ってみたものの、
それきり補足情報が語られることはなかった。
「あれ? どうしたの?」
予想するに彼女は文字通り、話を聞いただけなのだろう。
しかし、それでは佐々木加奈子の何がスゴイのかさっぱり分からない。
「あと、そうだ。柴崎君って、サッカー部に知り合いとか居たりする?」
コロコロ表情を変えるナツキは、気まぐれなネコにどこか似ていた。
「えっと畑中……川中、うーん、なあんか違うような。えーと誰だったかな、ふたつ目に『中』が付く二年生。確かこのクラスの人じゃなかったッけ。2―Bって聞いたから、たぶん間違いないと思うけど」
「真中敬吾かな。左サイドバックの」
「ああそれそれッ、なんとかバック! うん、それだよきっと! 柴崎君、その人と知り合い?」
すると僕は、窓辺でたむろする黒い一団を指差した。
「何、そいつがどうかした?」
呉介の声は聞こえていないと言った風に、
ナツキはちらちらと男子生徒が固まる窓際へ熱い視線を送り、
どの男子学生なのかを興奮気味に尋ねてくる。
「呼ぶ?」
「ああううん、ダメダメッ! 分かればいいの、分かれば。ああ違う――私じゃなくッて、友達ね友達! ッて私じゃないし! ッてゼンゼン違うし!」
「なーに赤くなってんだナツキ」
「だから“私”じゃないんだッて!」
語るに落ちる人がここにも居る。
もう一度、(ナツキの友達が想いを寄せる相手らしい)サッカー部で
ポジションは左サイドバックの真中敬吾君を示そうと腕を挙げると、
そこで休み時間終了の鐘が鳴った。
なんのための報告会だったのか。新聞部の二年生が集合すると、
必ずと言っていいほど話が飛んでしまう。
「ところで“君”はどうして来たの?」
そもそもの疑問を、僕はようやく席を立つ呉介にぶつけた。
「おお忘れてた。……お前さ、今日時間ある?」
「あるワケないじゃないか。やることがたくさんで、何から手を付けていいのか分からないほどだ」
「いや、“こっち”の方が遥かに重大だぞ。そうだ、“こっち”を記事にしろ。そんなよく分からんユーレイじゃなくて、商店街の人同士の、ハートフルな触れ合い。どうだ、こっちの方が絶対うける。しかも無報酬の部活なんかと違って――」
休み時間を終え、戻って来た僕の前の席の女子が、
ツンツン頭の呉介を訝しげに見る。
その視線に気付いた呉介はこちらへ静かに顔を近付けると、
「バイト代が出る」と囁いて去った。




