かみひとえ
前回のあらすじ
『───で、スープレックスを決めてやったんだ』
ダンッ(コップを置く音)
こくん。
『そしたらあのくそじじい、訴えてやるっつってよお…』
ざくざくざくざく(大根を箸で差す音)
…こくん。
「…あの」
『あのくそ上司…滅べばいいのに…。あ、私のことじゃないぞ』
ごくん。
『滅べ!!!空に煌く星になれッ!!!
そして永遠に帰ってくるなアアア───────ッ!!!!!』
がしゃーん
「上司さん?」
『あの上司滅べ!!!』
「上司さん!!!」
『ああ?』
「なに前回に引き続き飲んだくれてんですか
あらすじの時間ですよ!」
『うるへー好きに飲まへろ!!
誰が稼いでやってると思ってんら!!』
「上司さんひとり暮らしじゃないですか。
旦那さんと別れたから」
『古傷をえぐるなあああああああ!!!!』
わーわーぎゃーぎゃー
どんがらがっしゃーん
とりあえず本編をどうぞ(byあらすじ担当)
どんちゃん どんちゃん
ちゃかぽこ ちゃかぽこ
火刑は一変、気がつくと宴になっていました。
陽気な太鼓の音が響き、それに合わせてみんなが歌を歌っています。
さっきまで私が磔にされていた十字架のまわりを踊っている人たちもいます。
煌々と燃える炎がとても神秘的で綺麗でした。
そしてわたしはというと、
十字架から降ろされた後、
なぜか胴上げをされ、
煌びやかな衣装に着替えさせられ、
「ささ、どうぞ遠慮せず」
「これもどうぞ」
目の前にご馳走が次から次へと運ばれてきます。
…ごくり。
思わず生唾を飲み込みました。
…なんじゃこりゃあ。
なんだこのVIP待遇。
しかも美人でナイスバディなお姉さんまで両脇について
うちわ(のような葉っぱ)で仰いでくれています。
「………」
ちらっ
>シロヤギは左のナイスバディを見た!
「…………」
ちらっ
>シロヤギは右のナイスバディを見た!
べ、別に羨ましくなんてないんだからあ!
あと10年経てばお前らなんか敵じゃないやい!!
「カーッ、ぺッ!」(汚い)
…それにしても
「紙を届けに来ただけでこんなに歓迎してもらえるとは。
そんなに大事な手紙だったんですかねぇ」
でもそんな大事な手紙、破り捨てませんよねぇ。
そんなことをぼんやりと考えていると、
「隣、ええですか?」
赤ら顔をした族長がやってきました。
その目に先程までの敵意は一切ありません。
むしろとても穏やかに微笑しています。
初めの印象といい、殺されかけたことといい、
正直怖かったのですが、根はそんなに悪い人ではないのかもしれません。
「どうです?宴は。楽しんでいただけてます?」
「あ、えと、はい!楽しんでます!
けど、こんなに歓迎して貰っていいんでしょうか」
ふふ、と笑いながら族長さんが答えます。
「神の遣いが来て下さったんやから、当然ですよ」
紙の遣い?まあ、あながち間違ってもないですけど…。
「ところで、神は今どちらに?」
族長さんはそわそわと何かを期待するような目で尋ねてきました。
紙?
手紙のことでしょうか。
「ああ、紙だったらそこにありますよ」
と、わたしは未だ吊るされたままのひつじさんを指差して言いました。
ジャングルに再び絶叫に近い歓声が響き渡りました。
「おお神よ!」
「ああ、なんて神々しい……」
「ご無礼を働いたこと、堪忍して下さい…」
何故か崇め奉られまくるひつじさん。
あ、もしかしてひつじ見たことないんですかね。
「めぇ…」
ぽ、とほほを染め、まんざらでもなさそうなひつじさん。
吊るされたままなのは良いんですかね。
なにわともあれ。
わたしの任務はもう終了しています。
食べてしまったとはいえ、手紙を届けた後に食べたわけですから、
任務自体は成功したといえるでしょう(たぶん)。
さあ、帰りましょう。
わたしたちの世界へ。
────ご馳走を食べてから!!!
──朝。
アマゾネンの住人たちは地べたに転がって、気持ち良さげに熟睡しています。
奏でられるいびきはまるでオーケストラのようです。
そしてわたしはというと。
「おろーん」
・・・・・・二日酔いです。
頭の中でガンガン、太鼓が鳴っています・・・・・・。
今朝気がつくと地べたに転がっていました。
食べまくって飲みまくった挙句、どうやらそのまま寝てしまったようです。
・・・もう飲まない。絶対に。
飲むの度にそう言っていた父。
一体どこで何をしているのやら。
「大丈夫ですか?」
と優しく声を掛けてくれたのは族長さんです。
「ちょっと…スッキリしました」
川の水で口を洗いながら私は答えました。
正直まだ気持ち悪いですが、マシになったほうです。
「そんなら良かった」
族長さんははにかんで笑うと
「朝食…って言うほどでもないですけど、スープがありますよ」
あなたが女神か。
「うう…ありがたくいただきます…」
ということで朝食タイム。
ほかの人たちも集まり、みんなで賑やかな朝食です。
…ちょっと実家を思い出すのです。
どうぞ、と差し出された温かいスープを受け取ります。
ジャングルなので寒いというよりむしろ暑いくらいですが、
二日酔いの体にスープのあったかさが染み渡ります。
「ふう…」
一息ついてほっこりしていると、
「めぇん」
背後から聞きなれた鳴き声。
「あ、ひつじさん。おはようござぶほおッ」
わたしは思わず、飲んでいたスープを噴き出しました。
噴き出したスープがひつじさんに直撃します。
原因は、ひつじさんの格好。
部族さんの特殊メイクに、首にぶら下がっているのは木製の首飾り。
腰(どこからどこまでが腰なのかわかりませんが)に巻かれた個性溢れる柄の布。
極めつけは頭と背中についている孔雀の羽!!
宝塚かッッ!!
磔にされるのは勘弁なので、そんなことは口に出しませんが。
ひつじさんにかかったスープ拭きます。
でも改めて考えてみると、本当にいい人たちばかりです。
無礼を働いたわたしを許してくれて、さらに宴まで開いてもらって…。
本当に感謝してもしきれません。
…なにか恩返しのひとつでもするべきなんでしょうが…
任務が終わった以上、わたしは帰らなければなりません。
わたしの居た世界へ。
居るべき世界へ。
「めぇ」
そんなわたしの心情を察したのか、ひつじさんがすり寄ってきました。
「……」
わたしは無言でもこもことした毛を撫でます。
柔らかな手触りに心が癒されます。
なでなで。もこもこ。すりすり。
…あの、スープなすり付けてるわけじゃないですよね?
とにかく悩んでいても仕方ありません。
目の前のことを片付けましょう。
…とりあえずこのスープから!!
気を取り直して朝ごはんをもりもり食べていると、
「みんな、ちょっと聞いてや」
族長さんがその場に立って言いました。
なんでしょうね、改まって もぐもぐ。
みなが注目する中、族長さんが話し始めます。
あ、もしかしてお別れの挨拶とかですかね。照れるなあ ごくごく。
「集まってもらったのは他でもない、〈ポポイ〉のことや」
〈ポポイ〉?どこかで聞いたような…ごっくん。
「ウチらは奴等に散々苦しめられてきた…でももうそんな生活は終いや」
…………もぎゅ…。
「我々は〈ポポイ〉と全面抗争を宣言する」
族長はどこからか槍を取り出し、
「この神の使い様と共にッ!!!」
高らかに宣言しながら槍を掲げました。
「「「「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」
「ぶーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!」
噴き出したスープが、ひつじさんの顔面に直撃しました。
その時のひつじさんの顔。
(´・ω・`)
つづく。