『焼き加減はミディアムで』
大変長らくお待たせしました。
前回のあらす「あらすじはいいからとっとと本編始めてくださいっっ!!!」
『そういうわけにもいかんだろ。
とりあえず簡単にお前から説明したらどうだ?』
「ジャングルにやってきたのはいいが現地人の縄張りにうっかり踏み込んでしまい
ジャンヌダルク宜しく火あぶりにされかけているところであつううい」
『んじゃ、本編をどぞー』
………。(←出番が無かった今回のあらすじ担当)
「いやああああああこんがり焼かれるううううう」
めらめらと燃える炎が、
まるで生き物のようにうねりながら迫ってきます。
「っていうかあれだけミンチネタで引っ張っておきながら
結局丸焼きなんですかああああああ!!!???」
『丸焦げにした後、ミンチのように細かく刻んで
みんなで仲良く分け合って食べるんだと』
「わあ、みんな仲良し☆って、言ってる場合熱うううううううううう」
っていうか、あれ…?
「上司さん、あの人たちの言ってること分かるんですか?」
『うん』
「どうして分かるんですか?」
『マイひつじさんの翻訳機能使ってるから』
「早く言ええええええええええーーーー!!!!!」
どんだけ便利なのひつじさーーーん
「そんな機能があるならさっさと言って下さいよ!」
『いやあ、盛り上がってるとこに水差すのもアレかなって……』
「だからどうして要らん空気ばっか読むんですか…。
とにかく!どうしたらその翻訳機能は使えるんですか!?」
そう聞くと上司さんはひとつ咳払いをし、
『こう叫ぶんだ。
マジカル☆ひつじ、ヴォイス・コンピレーション☆』
どこの魔女っこだ。
普段ならそうツッコむところですが、
今はそんなことをしている場合ではありm熱いっちゅーねん!!!(マジギレ)
「マジカル☆ひつじ、ヴォイス・コンピレーション☆」
きゃぴーん。
……。
…………。
『──というのは冗談で』
「TPO考えろおおおおおおお」
こんなことしてる間に炎は目前に迫ってもうつま先焦げてるぅ
「ひつじさん、翻訳機能オン!!」
「めええ」
カッ!
……
………
5秒経過。
あら?
発光したのはいいですけど何も反応がありませんよ?
「あれれ?今のでほんとにオンになったんですかね?ひつじさーん」
不安になり、ひつじさんに呼び掛けます。
すると、
「なんでやねん!」
…ん?
なんでやねん…?
「ひつじさんがしゃべった!!」
驚愕のわたし。
『いや、違うだろ』
上司さんが冷静にツッコミます。
「しかも関西弁!!!」
『だから違うって』
と、なると可能性はひとつ……
まさか……
「高林君……!?」
『誰だ』
まあ冗談はさておき。
視線を下に向けると、
「今日はご馳走やなあ」
「こんな子どもがホンマに族長食べてしもうたん?」
「あ、パンツ見えた」
松明を持ったの方々が関西弁でベラベラとしゃべっています。
そうか…
ジャングルに住んでると関西弁になるのか…
そしてパンツ見たやつ覚えてろ。
「とか言ってる場合じゃないんですよ!!
上司さん、わたしの言葉も通じるんですよね!?」
『イエス、オフコース』
わたしは大きく息を吸って──
「皆さん!!!」
できる限り大きな声で叫びました。
アマゾネンの住人たちの視線が集まります。
言葉が通じさえすればこっちのもの。
バイト(ピザ屋)で培ったコミュニケーション能力を発動するとき!!
わたしはもう一度息を吸い込んで言います。
「先程は大変失礼しました!
故意に傷つけようとしたわけではないのです!!
わたしは──」
しかし煙を吸い込んでしまい、咳き込みます。
煙が目にしみて視界がぼやけてきました。
「わ…わたしはっ、敵ではありません!!
あなたたちの敵ではありません」
その言葉に再び周囲がザワつきます。
「敵やない?」
「そうです!」
わたしはただ、手紙を届けに来ただけなんです。
と言おうとしましたが、煙の吸い過ぎで頭がぼんやりとして
言葉になりません。
アマゾネンの住人たちは互いに顔を見合わせ、
「敵やないゆうとるで」
「いや、さっき族長の手ぇ食べてたやん」
「あんなガキに族長が殺られるわけないやろ」
「ただの命乞いちゃう?」
「よく見るとタイプかもしれん…」
と議論し始めました。約一名ロリコンが混じっているようですが。
そうこうしている間にわたしの意識がぼやけてああ眠たくなってきた…
「静まらんかいっっ!!!!」
突然怒号が響きました。
言うまでもなく族長(手を唾液まみれにされた人)の声です。
どこかへ旅立とうとしていた意識が引き戻されます。
おっとよだれ。
よだれをごしごし拭きながら族長に目を向けます。
族長は静かになった周りを見渡して
ふん、と鼻を鳴らすとわたしの正面に立ちました。
「あんた何者や。変わった格好しとるけど〈ポポイ〉の仲間か?」
〈ポポイ〉?
聞いたこともない単語でした。
翻訳されてないということは固有名詞でしょうかね。
それはおいといて、わたしは答えます。
わたしが何者かを。
『なあ、みんな私のこと忘れてないか』
「ちょっと水ささないでくれませんか上司さん」
改めてわたしは答えます。
わたしが何者かを。
「わたしは───」
そこで私は気がつきました。
ジャングルに郵便局ってあるんでしょうか。
そもそも手紙とか存在するんでしょうか。
ジャングルに郵便局がある光景を想像します。
鬱蒼と茂った森、どこからともなく聞こえる獣たちの声───
その奥に佇むコンクリートで出来た長方形の建物───
……。
…ものっそいシュール…。
もし、ありのままを伝えたとして…
「わたしは郵便配達員です!」
「ユービンハイターツイン?なんやそれ?死刑!!」
「ギャース!!」
~BADEND~
………。
いやいや、言い方を変えればきっと…
「お手紙を届けにきた者です!」
「オテガミ?」
「そうです、昨日渡して───」
…渡して?
破られて?
わたしが食べた、お手紙。
「貴様が食うた…あれか?」
「……」
「届け物を食う輩がどこにおるんや!死刑!!」
「ごちそうさまでしたーーーーーッ!!!」
~BADEND~
……………。
そうこうしている内に、なかなか答えない私に痺れを切らした族長が
「答えられへんのか…ならば」
松明を持ってこちらに近づいてきます。
なにか…
なにか簡潔に手紙を届けにきたことを伝える言葉は…
敵意がないことを伝えるには…
考えろ、考えるんだシロヤギ────!
『あ、焼き加減はミディアムでお願いしまーす』
「シャラップ!!」
そのとき、わたしは閃きました。
そうだ、これなら!
「わたしは───」
「わたしは、紙を届けにきた者です!!!!」
その言葉に、空気が凍りつきました。
みな、石化したように動きません。
…ん?なにか変なこといいましたかね?
族長が、
「神を届ける…だと…ッ!?」
声を震わせながら尋ねてきました。
「そうです!!!」
もちろん力一杯肯定します。
次の瞬間、悲鳴にも似た歓声が湧き上がりました。
『…ま、紙なんてジャングルに存在してるわけねーよなー』
歓声の中で、上司さんがぽつりと呟きました。
「…あれ?今回オチは?」
『ない!!!』
「な、なんだってー(棒読み)」
ぐすん…また次回…(←可哀想なのでちょっとだけ出番をもらった今回のあらすじ担当)
『…まあそう落ち込むな。次回があるさ』
…こくん。
『私も後半空気だったしな。今日は一緒に飲むか』
……こくん。