『そして少女はミンチになった』
お待たせしました(いや、待っている人がいるかどうかは微妙ですが)。
~前回のあらすじ~
起「ジャングルに捨てられる」
承「ひつじさんを手に入れる」
転「うっかりドジで四面楚歌」
結「ミンチになった」
『また、斬新なのが来たな…』
「前のあらすじ担当(無駄に叫ぶ担当)はリストラですかね」
『世知辛いな…』
「ところで四面楚歌ってどういう意味なんですか?」
~またもや唐突に始まる上司さんの豆知識~
『四面楚歌とは、四方八方敵に囲まれ、ミンチになるという意味だ』
「待って下さい、後半なにか違いませんか」
『訂正、"ミンチになった"』
「そこ!?」
あらすじといい、上司さんといい、
どうしてわたしをミンチにしたがるんです!?
『ミンチになぁ~あれッ☆』
「魔女っ子風に言ってもだめですよ」
『ちっ』(←舌打ち)
「というかさっさと本編はじめましょうよ」
起「お待たせしました」
承「それでは」
転「皆様」
結「ミンチをお楽しみ下さい」
「ミンチを!?本編じゃなくて!?」
ピ~ヒャラ~ ラ~
ズンドコ ズンドコ ズンドコ
ズンドコ ズンドコ ズンドコドッコイ
太鼓と笛の軽快な音が、夜の森に響き渡ります。
中心には巨大な木製の十字架。
その周りを、布面積の低い服を纏った人々が踊っています。
ゆらゆらと揺れる松明は、月の光も届かない深い森に、光をもたらしていました。
その中心の十字架に、人影がありました。
その姿はまるで…
ジャンヌ・ダルク、または磔のイエス。
「びええええええん!!誰かあああああああああああ」
おはようございます、こんにちわ、こんばんわ。
羊の郵便局の郵便配達員、シロヤギは今日も元気に泣き叫んでおります。
変な音楽と変な人たちに囲まれながら。
木製の十字架に磔にされて。
そんなわけで…
「誰か助けてええええええええええええええええ」
えぇー
えー
ぇー
うっかり部族さんの縄張りに踏み込んでしまったわたし。
出迎えてくれたのは、布面積がかなり低い衣服を纏った、異界の住人。
「え、えと…」
じり…
「「「………」」」
手作り感溢れる槍や弓を携えた部族の人々が、わたしに迫ります。
「ちちち違うんですっ、うっかり縄張りに入っちゃっただけで!
故意に進入しようとしたわけじゃないんです~~~!!」
必死に弁明するわたし。
しかし、部族さんたちが武器を下ろしてくれる気配はまったくありません。
すると、奥から1人の女性が姿を現しました。
背の高い、肌が褐色の女性でした。
申し訳程度の布を纏っているのは他と同じですが、
立派な装飾を見る限り、周りの人たちとは身分が違うようです。
女性は他の部族の人と一言二言、言葉を交わすと、
わたしの前までやってきました。
「○☆*~%?」
女性はわたしに何か話しかけているようですが、
なんと言っているのか、まったく分かりません。
「えっと、すみません、英検4級しか持ってないんですけど…」
そもそも英語じゃない気がするんですけど…。
わたしの言葉に、女性は首を傾げます。
どうやら向こうもこちらの言っていることが理解できないようです。
『あほ。異界の住人に言葉が通じるわけないだろ』
上司さんの的確な指摘。
なーるほどー。なっとく。
「じゃあどうやって手紙届けんですか!?」
『努力と根性』
「投げやり過ぎるっっ」
誰かー!ほんやくこ●にゃく持ってきてー!!
焦っていると、いつの間にか隣に来ていたひつじさんが「めぇん」と鳴きました。
その口からなんと、お手紙がでろり。
…取れってことなんでしょうけど、さすがに抵抗がありますね。
「あ、もしかしてこの人が宛先人なんですか?」
「めぇん」
その返事だとイエスかノーか分かりづらいんですが…
この場合はイエスで間違いないと判断。
もし間違ってたときはひつじさんに全責任を押し付けようと心に決めて、
手紙を受け取ります。
あ、濡れてない。
手紙は確かに口の中から出てきたのですが、
どういうわけか、唾液まみれということもなく、乾いたままでした。
ひつじさんの謎、その②…
手紙を受け取ったわたしは、女性に向き直りました。
言葉が通じないのは分かりきっていますが、
わたしはマニュアル通りに手紙を渡します。
「羊の郵便局です。お手紙を届けに参りました」
目の前の女性は、差し出した手紙とわたしの顔を交互に見比べていましたが、
やがて恐る恐る手紙を受け取りました。
わたしもホッと胸を撫で下ろします。
一時はミンチを覚悟しましたが、
なんとか初任務、完了。
『なんだ、つまんねーの』
「外野は黙っててください」
こうして、わたしの初任務は無事成功───
びり
うん?
それが何の音か、
一瞬、理解できませんでした。
びりびりびりぃ
「え、ええええええええ」
女性は、たった今受け取った手紙を
封も切らずに破り始めたのです!!!
「あ、あああ……」
びびび
神が。
いや、紙が。
びびびびびび
もう、見てられない。
わたしは、
「捨てるくらいならわたしにくださいよ、もったいないっっ!!!!」
ばりばりむしゃむしゃ! ごっくん。
手紙を食べてしまいました。
しかも、女性の手ごと。
…あ、鉄の味。
回想終了。
このあと、必死の命乞いも虚しく、ロープでぐるぐる巻きにされ、気が付くとこんな状態に。
「だって、ご馳走が目の前で捨てられていくんですよ!?」
このわたしが、黙って見ていられるとでも!??
ちなみに手はちょっと歯が当たって傷がついただけで
食べちゃったわけではありませんよ。
唾液まみれにはなりましたが。
「それにしても、これからどうしましょうかねー」
わたしは足をぶらぶらと揺らしながらひとりごちます。
先程から縄を解こうと必死にもがいてはみた(5分程)のですが、
縄が緩む気配は一向にありません。
ああ疲れた…
「こんな時、少年漫画とか少女漫画だったら
ヒーローが颯爽と救いだしてくれんるんでしょうけどねー」
何気なく呟いた、そのとき、
「めぇん」
「この声は…ひつじさん!」
ヒーロー、いや……
救世主
ドンドコドンドコ
太鼓の荘厳な音と共に姿を現したひつじさんは───
「めぇぇ」
狩られた獲物のように棒に手足を括り付けられ、逆さ吊りにされていました。
「って、ようにじゃなくってまんま狩られた獲物じゃないですか!!!」
「めぇ…」
ぽ。とひつじさんの頬が赤く染まります。
「なに照れてんですか。褒めてないですよ」
コンマ1ミリも。
こうなったら──
「うわああああん!上司さーん!!聞こえてますよね!?
じょおしさあああああああああああああん」
『……』
「すり潰されておいしく頂かれちゃいます~~~!!!」
『…………』
「とっとと返事しろ、くそばばぁ…(ぼそっ)」
『…………………減俸』
「嘘です。ホントすんませんでした」
『分かれば宜しい。で?わたしに?』
「助けて下さい」
『助っ人料、諭吉×3』
「外道!?」
『時給制。三食昼寝付き』
「ハロー●ークの求人情報じゃないですからね」
っていうかわたし、破産しますからね。
『わがままだな』
「どっちが!?」
この上司、マイペース過ぎやしませんか!?
『お前に言われたくないけどな。
…それよりいいのか?』
「?」
『始まってるぞ』
「なにがですか?」
『処刑』
え。
辺りを見回すと、今まで踊っていた方々が
いつの間にやら松明を装備。
わたしを取り囲んでいました。
「え、ちょ、まさかあれですか。
ジャンヌ・ダルク的なあれですか」
わたしが狼狽していると、
しゃらん、と綺麗な金属の音が響きました。
途端、太鼓や笛の音は止み、辺りが静まり返ります。
部族の人々は無言で道を空け、跪きました。
やって来たのは、そもそもの元凶、
先程手紙を破り捨てた女性でした。
祭りごとの衣装なのか、とても煌びやかな衣装に
着替えていました。
彼女はどうやら、この部族の長だったようです。
長が松明を天高く掲げ、森中に響き渡るような声で叫びました。
「YAAAAAAAAaーーーーーーーーーッッ!!!!」
と、同時に着火。
「O・YA・KU・SO・KUーーーーー!!!」
『絶体絶命の主人公。
果たしてどんなミンチになるのか!?』
「楽しそうに実況しないで下さい!!!」
あとそろそろミンチから離れろ!!!!
『次回へ続く!!!』
「熱っ!あっつぅううう!!
わたしずっとこの状態なんですか足の裏が焼ける!!」
『最初は弱火。それが基本だろ?』
「最初は強火ですつま先熱い」
お肉の焼き方のことを言っているのなら。
『え…はじめチョロチョロ中パッパッじゃないの?』
「それお米の炊き方ですよ踵マジぱない」
『ところではじめチョロチョロ中パッパッて、現代っ子に通じると思うか?』
「知りませんよ!!!
とにかく終わり!それではまた来週ふくらはぎがチリチリするぅ」