でんでんむし
ひらがなばかりで大変読みにくいです。
どうぞご了承ください。
ぱしゃ、ぱしゃ、おとがする。
ふりかえるとでっかいいぬがのしのしあるいてた。
しゃがむおれをみおろして、どうどうと、さっそうと、あるいてく。
おねえさんはふしぎそうにおれをみて、ぱしゃ、ぱしゃ、とおとをたてていってしまった。
おれをめをもどして、はっぱをみる。
おんなみたいっていわれたあかいカサにぽつぽつあめがあたる。
ながぐつのしたで、じゃり、とこいしがなった。
「カズ、なにしてんの」
りょうくんだ。
あおいカサをさしてたっていた。
「おつかい」
「おつかい?」
「うん。かたつむり」
「は?なに、カタツムリ買うの?」
「ちがう、かうのはたまねぎとぎゅうにゅう!かたつむりはこっち」
ぱしゃ、ぱしゃ。
りょうくんはしゃがまないで、たったままはっぱをのぞきこんだ。
「あのさ、あのさ、さいしょさ、ここにいたんだ。そんでやっとここまできたんだ。すごいだろ」
おれはとくいになっておしえてあげたのに、りょうくんはきょうみなさそうで、ふーんっていった。
「あのさ、りょうくんはしらないだろうけどさ、かたつむりってすごいんだぜ。ものすっごいのろいのに、でもあめはへっちゃらなんだ。このカラがさ、すごいんだよ」
「ふーん」
「りょうくん、きいてない?」
「うん」
ほっぺたをふくらませたおれのてを、りょうくんは、いくよってひっぱった。
おれはつっかえながらたちあがる。
「お前までカタツムリになることないだろ」
あかいカサはちょっとでかくて、すぐかたむくから、おれはひっしにカサをつかむ。
「タマネギと牛乳だっけ」
「あのさ、あのさ、きょう、ハンバーグだって」
「じゃあ早く買って帰ろう。母さん待ってるよ」
「とうさんもたのしみだって」
きいろのながぐつが、みずたまりをける。
ながぐつじゃないりょうくんは、やめろよっていった。
ながぐつはかないりょうくんがわるいんだぜ。ながぐつはすごいのに。
「なぁなぁ、りょうくんもハンバーグたのしみ?」
おれをみおろして、りょうくんはわらった。
「当たり前だろ」
おれがつくるんじゃないけど、かあさんがつくるんだけど、おれがかってくるんだ。
たまねぎとぎゅうにゅうがないとハンバーグはつくれないって、かあさん、いってた。
じゅうだいにんむだぞって、とうさんもいってた。
おれがかっていかないと、みんながっかりする。
そうだ、おれはかたつむりになってるばあいじゃないんだ。
ぐらぐらするカサを、りょうくんみたいにまっすぐにしながら、おれはにんまりとわらった。