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京都における過激な防犯方法

京都を騒がす傷害事件の正体とは?

「京都って、本当にお寺が多いね?」

 良美の疲れた言葉に較が苦笑する。

「都だった場所だからどうしてもね……」

「次に急ぐぞ」

 不機嫌そうなよれたスーツ姿の男性に良美が言う。

「この現場巡りって、嫌がらせでしょ?」

「良く解ったな? 因みに俺は、捜査で独断専行した、罰で付き合わされている」

 淡々と答える男性、京都府警の刑事、嵐山アラシヤマ俊夫トシオに噛みつこうとする良美を制し、較が言う。

「因みに事情は、何処まで聞いてますか?」

 俊夫が肩をすくめる。

「何も聞いていない。ただ毎年同じ日に起こる事故現場の案内をしろと言われた。こんな事に何の意味があるんだか? 俺は、連続殺傷事件を追いたいのによ!」

 苛立つ俊夫に較が淡々と告げる。

「その事件は、絶対に真犯人は、捕まりませんよ」

 睨む俊夫。

「警察を舐めてるのか!」

 較が肩をすくめる。

「実行犯を捕まえても無意味、あれは儀式の副作用ですから」

「意味不明な事を言うな!」

 怒鳴る俊夫に、較が地図を見せる。

「今回まわってる事故現場を結んだ交差点に注目」

 俊夫が言われるままに見て驚く。

「殺傷事件の犯行現場じゃないか!」

 較が頷き説明する。

「どこの馬鹿が考えたか知らないけど、犯罪抑制の術式を実行した。事故も嘘、犯罪者を生け贄にしたの。コントロールされた為、収束された邪気が犯罪を起こさせてる。こっちを対処しない限り、事件は、なくならないよ」

「そんなオカルトを信じろって言うのか?」

 怒気を込めた俊夫の問い掛けに較が肩をすくめる。

「ご自由。ただね、実際に犯罪が激減しているだろ。聞いた話じゃ、犯罪を減らせるんだったら、犯行場所が絞れる事件を容認してもいいって意見が警察の上層部にもあるって」

「ふざけるな! 警察が犯罪を容認するわけないだろう!」

 怒鳴る俊夫に較が気にもせず言う。

「又聞きだから、信憑性は、知らないよ。貴方は、言われたとおり、罰当番の嫌味を続けて」

 歯軋りをする俊夫であった。



 較と良美が京都の名店で食事をしている間に俊夫は、同僚に連絡し較から聞いた話をする。

『あながち嘘では、無いな。何人か捕まえた犯人が全員、錯乱状態だった。麻薬の線で探ってたら、上から圧力が掛かった。単なるストレスによる錯乱と発表しろってな』

 俊夫が信じたくない気持ちを込めて反論する。

「上が意味の解らない事件を適当に終らせようするのは何時も事じゃないか?」

『俺も最初は、そう思って適当な理由をつけて捜査を続行しようとしたが、ストップが掛かった』

 同僚の回答に俊夫が携帯を強く握る。

「何処からの圧力か調べてくれ」

 同僚があきれた声を出す。

『またか? 今、ガキのお守りしてる原因を忘れたのか?』

「忘れるかよ! だがな、犯罪を目の前にして止まってられるか!」

 俊夫の答えに同僚が苦笑する。

『お前は、死ぬまでそうなんだろうな。解った、調べておく』

 携帯を切った俊夫は、食事を終えた較に言う。

「今回の事件の真犯人を教えろ!」

 較が頬をかく。

「自分の立場を悪くする事だって自覚ある?」

 俊夫が真っ直ぐ見返し告げる。

「だからどうした!」

 良美がニヤリと笑う。

「いいじゃんか、元々因果関係を確認するだけなんて、中途半端な仕事嫌だったんだから」

 較がため息を吐く。

「了解、ただしどうなっても責任とらないよ」

「ガキにケツを預けるほど堕ちて無いぜ」



 数時間後、京都駅近くのビルの前に俊夫が車を止める。

「ここでいいんだな?」

 較が頷く。

「術式の確認も終わっている。術者は、元華族の家柄で、陰陽師にも繋がりが強い、大企業の会長、綾小路アヤノコウジ寄与麿キヨマロ。府知事とも強いパイプがある上、防犯に強い執念を燃やしてる」

 俊夫が頭をかきながら言う。

「こっちの調査でもその線がでた。それじゃ乗り込むか」

 車から降りる俊夫に較が確認する。

「どうやって会うつもりですか?」

「正面から入っていけば良いだろう」

 俊夫の単純な答えに良美ものる。

「何を当然の事を言ってるの?」

 較が前に出て言う。

「どうせ、こうなると思ってましたから、アポとっといたよ」



 そして、会長室。

「初めまして、知事より伝言は、受けています、あの術式の確認に東京の田舎から来たみたいですが、この方法は、歴史ある京都だから可能だったのですよ。あない田舎では、到底無理ですわ」

 寄与麿の先攻に良美が較にたずねる。

「なんかムカつくから殴ったら駄目?」

「駄目。用があるのは、こちらの刑事さん」

 較が紹介する前に前に出る俊夫。

「連続殺傷事件の真犯人は、お前だな?」

 それを聞いて寄与麿が苦笑する。

「警察とは、話は、ついていると思いましたが? 上司の人には、許可は?」

 俊夫が即答する。

「とってないがそんなの関係無い。お前が犯罪を起こしてるなら止めるだけだ」

 寄与麿が首を振る。

「それは、誤解だ。私がやっているのは、防犯だ。例の殺傷事件は、その副作用でしかない」

 俊夫が壁を叩く。

「死人も出ているんだぞ! 副作用何かで済まされるか!」

 寄与麿は、自信に満ちた顔で告げる。

「殺傷事件の何十倍もの事件を未然に防ぎ、何百倍の人間を救っている」

 苛立つ俊夫。

「そういう問題じゃないだろうが!」

 何処か悲しげな顔で寄与麿が語る。

「そういう問題なのだよ。副作用の問題は、早い段階で判明した。いくら犯罪を抑制しても一般市民に被害が出ては意味が無い。しかし、淀んだ気は、どうしても溜まる。試行錯誤した結果、特定の場所に収束させる事に成功した。京都には、相応しくない快楽街、被害者も売春をする如何わしい女や酔っ払い自業自得なのだよ」

 俊夫が掴み掛かる。

「犯罪にあっていい人間を決めるなんて、何様のつもりだ!」

「娘の様な何の罪も無い人間が被害に会うより何倍もましだ!」

 大声をあげる寄与麿に眉をひそめる俊夫。

「どういう意味だ?」

 答えない寄与麿に代わりに較が答える。

「その人の娘さんが通り魔にあって未だに植物人間状態なんだよ」

 俊夫が驚いた顔をするなか、寄与麿が言う。

「娘の様な何の罪も無い人間が傷つく事態だけは避けなければいけないのだ」

 俊夫が一度深呼吸をしてから言う。

「娘さんの事は、同情する。だがな、快楽街に居るからって、犯罪に巻き込んで良いって通りは、ない。最初の事件の被害者は、確かに風俗に勤めて居たが、たった一人の母親の治療費を稼ぐ為だった。その被疑者は、娘の誕生日プレゼントを買う為に慣れない快楽街に来ていたんだよ。それなのに事件に巻き込まれた。それが正しい事か?」

「どんな事情が有ろうと快楽街に居た時点で本人の責任だ」

 切って捨てる寄与麿に俊夫が怒鳴る。

「俺は、認めない! どんな事情が有ろうと、犯罪を容認するなんて事は!」

 正面からとう寄与麿。

「だったら、無秩序な犯罪を許すのか?」

 俊夫が揺るがない瞳で返す。

「俺が、俺達が犯人を捕まえ、犯罪を防ぎ、京都から犯罪を無くす!」

「その言葉に根拠があるのか?」

 寄与麿の返しに俊夫が胸をはって答える。

「それが俺達、警察の仕事だ!」

 呆れた顔をする寄与麿。

「信用に価しないな」

 しかし、今まで黙って居た良美が大爆笑する。

「良い! おっさん最高!」

 その横でメールをしていた較が言う。

「寄与麿さん、これから最初の被害者の親友で、容疑者が小学校の担任だった人が呼びますけど、納得させられますか?」

 寄与麿が頷く。

「誰が来ても関係無い、私の信念は揺るがない」

 較が指を鳴らすと空中から八刃の一つ、霧流の長の妻、八子と入院服の大学生くらいの女性が現れた。

「父様、父様が連続殺傷事件を引き起こして居るって本当なのですか?」

 困惑する寄与麿。

「どうしてお前が?」

 俊夫が戻って来る。

「植物人間になって居たんじゃ無かったのか?」

 較が平然と答える。

「交渉に使えると思って治療して貰っておいた」

「簡単に言いやがって!」

 睨む俊夫に較が笑顔を向ける。

「父様!」

 娘に責められた何も言えない寄与麿に較が悪魔の囁きをする。

「被害者達の治療は、お金さえ払えばこっちでするよ、幸い死人は、独り身のヤクザだけでしたから、後は、術を解除し、もみ消せば元通り」

 娘の泣き顔を見てしまった寄与麿は、頷くしかなかった。



 帰り道、俊夫が言う。

「どうやって娘の交友関係を知ったんだ?」

「最初の事件の被害者が小学校時代の生徒だったから、生徒のリストにあの人の名前があったから気付いたの。警察の細かい捜査の結果かな」

 較の答えに俊夫が苦々しい顔で言う。

「大きな口を叩いたが、実際に俺達、警察に出来る事は、少ない。それでも俺達は、犯罪を無くせると信じ、犯罪と戦い続ける」

 良美がのんきに返す。

「頑張ってよ、おっさん」

 俊夫が振り返り怒鳴る。

「俺は、おっさんじゃない!」

 こうして京都の犯罪発生件数は、元に戻ってしまったが、俊夫達、警察が犯罪と戦い続けるのであった。

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