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小学生通学路の防犯

口裂け女の正体は?

 白風家での夕食の席、小較が言う。

「ねえ、口裂け女って何?」

 それに対して、良美が答える。

「よくある都市伝説だな。あれって実在するのか?」

 差し出された茶碗にご飯をよそりながら較が答える。

「都市伝説の半分以上は、見間違いや勝手な解釈。本物の奴もあるけど、昔からの妖怪の別解釈が多いよ。因みに口裂け女は、狐憑きって説が有力だったりするね」

 小較が尋ねる。

「狐憑きって言えば、動物霊といわれているけど、実際は、魔獣化の一種って話だよね?」

 較が頷く。

「そう、魔獣って言うのは、簡単に言えば、神々の作った常識への反発力が集まり、その際、動物の形が形成された物だけど、人の体を素対してそうなる事もある」

 おかずに箸を伸ばしながら良美が言う。

「でもいきなり、そんな事を言うんだ?」

 小較が言う。

「うちの小学校の近くに出るって噂なの?」

 それを聞いて較が手を横に振る。

「それは、ない。竜夢区は、八刃のテリトリーだからね、そんな物が出たら即座に退治されるよ」

「だよね? でも、クラスメイトの中じゃ、けっこう見てる子が多いんだよ」

 小較の言葉に、顔を見合わせる良美と較であった。



 その夜、電話連絡を終えた較がリビングに戻ってくる。

「どうだった?」

 結果を確認する良美に較が首を横に振る。

「予想通り、そっちの反応は、ないよ。もしかしたら単純な変質者なのかも」

 良美が頬をかきながら呟く。

「それは、それで問題な気がするぞ」

「小較自身は、大丈夫だと思うけど、少し調べてみますか」

 較がそういって調査を開始した。



「解ったよ」

 翌日の夕方には、結果が出た。

「相変わらず早いね、情緒もないけど、まあ良いか」

 良美に促されて較が言う。

「何処にでも居る、失恋女で、相手の男がロリコンだった為、小学生の女の子に恨みを抱いてる。そのうち傷害事件を起こすかも」

 それを聞いて良美が半眼になる。

「なにそれ? 警察に通報したら?」

 較は、手を横に振る。

「無理だって、まだ何もしてないから」

「してからじゃ、遅いよ」

 良美の指摘に較が頷く。

「まあね、だからちょっと、大事にしてみようかと思う?」

 それを聞いて良美が真直ぐ較を見て言う。

「ちょっとねー」

 較が笑顔で答える。

「ちょっとだよ」



 翌日の小学校の下校路、問題の女は、憎々しげに小学生の女子を睨んでいた。

「お前達、ガキのクセに色気ついたあばずれが居るから、あの人があたしから離れていったのよ!」

 手には、カッターが握られていた。

 そんな時、問題の女の前にその女性にそっくりな大きなマスクをした女性が現れ、少女達に近づいていく。

「おじょうちゃん達、あたしは、綺麗?」

 その言葉に少女たちが怖がる。

「これってまさか?」

 抱き合う少女の一人が防犯ブザーを鳴らす。

 するとすぐさま、近所の住人が現れて言う。

「貴様、何をするつもりだ!」

 それに対して、マスクの女が笑顔で言う。

「貴方でもいいわ、あたしは、綺麗?」

「マスクをしたままで解るかよ!」

 近所の住人の言葉に少女たちが怯える。

「それを言っちゃ駄目!」

 しかし、もう遅かった、マスクの女は、マスクをとって言う。

「ほら、よく見て!」

「口裂け女だ!」

 小学生たちが悲鳴を上げる。

「……化け物!」

 近所の住人も冷や汗を垂らすなか、口裂け女は、ナイフを取り出すと叫ぶ。

「あたしだって好きで、こんな顔じゃない!」

 そのまま近所の住人の口を切り裂く。

「誰か助けて!」

 小学生の少女たちが逃げていく。

 口裂け女は、追いかけようとしたが、そんな中、振り返り問題の女を見る。

「見たわね!」

 問題の女は、必死に首を横に振る。

「見てない! あたしは、何も見てない!」

 そういって、逃げ出していく問題の女。



 翌日の朝、問題の女は、起き上がり呟く。

「昨日の事は、何かの間違いよね?」

 問題の女がテレビをつける。

『昨日の夕方、周囲で噂になった口裂け女が現れ、近隣住人の口を切り裂いたそうです』

 顔を引き攣らせながら問題の女は、新聞を開く。

『口裂け女、現る!』

 震える問題の女。

 そんな時、玄関のドアが叩かれる。

「誰かしら?」

 そして、出るとそこには、刑事が居た。

「あの、少し宜しいでしょうか?」

「なんですか?」

 戸惑いながら答える問題の女に刑事が言う。

「口裂け女の件ですが、実は、目撃者の証言から、貴女にそっくりだという話を聞いたのです。それでなんですが、昨日の夕方、何処にいらしていましたか?」

「違います! ほら、口も裂けていないでしょ!」

 必死に自分の無実を主張する問題の女。

 刑事は、苦笑しながら言う。

「そんな、都市伝説を警察は、信じませんよ。信じるのは、確かな証言だけ。それで、何処にいたのですか?」

 脂汗を垂らす問題の女に刑事が言う。

「署まで御同行、お願いできませんか?」

「あたしは、やっていないわよ!」

 ドアを閉じて、閉じこもる問題の女。



 問題の女は、布団に包まり震えながら一週間が経過した。

 その間も口裂け女の事件は、続く。

 問題の女の部屋の前には、刑事が張り込みをしているのだが、不思議と、夕方になると刑事たちが消えるのだ。

 そして、事件は、とんでもない方向に進む。

 口裂け女の被害者の中から暴走族のメンバーが出たのだ。

 それからというもの、問題の女の部屋の前では、暴走族がたむろし、警官と衝突続ける。

 近所の住人に後ろ指を差される毎日。

 食料も尽きて、問題の女が買出しに出た時、黒塗りのベンツが前を通った。

 そこにあの口裂け女が現れた。

「あたし、綺麗?」

 ヤクザに聞くが、ヤクザがはき捨てるように言う。

「うるせいんだよブス!」

「なんですって!」

 口裂け女は、あばれまくった。

 そしてヤクザが半死半生で倒れる中残ったのは、通りすがりの問題の女と口裂け女だけだった。

「これってどうなるの?」

 顔面蒼白にする問題の女を見て口裂け女が言う。

「あたし、綺麗?」

 問題の女は、慌てて叫ぶ。

「綺麗よ! 綺麗だから、何もしないで!」

 その一言で笑みを浮かべて消えていく口裂け女。

「助かった」

 安堵の息を吐く問題の女。

 しかし、騒ぎを聞きつけた警官がやって来ていう。

「これは、やはりお前が口裂け女だったんだな!」

「違う、これは、本物の口裂け女がやったのよ! あたしじゃない!」

 問題の女がひっしに訴えたが、聞き入れられる事は、無かった。

 そして、最悪の事に、ヤクザの仲間にもその事実が伝わり、問題の女は、一生心安らぐ事が無かったという。



「こんな終わり方で良いの? もう少し救いとか、教訓とかがあって良いと思うんだけど」

 良美の突っ込みに較が胸を張っていう。

「口裂け女は、あちきが作った式神で、襲撃にあった小学生は、八刃の関係者だし、襲われた近所の住人は、周りでは、良い大人を装いながら少女に手を出す変態、暴走族は、ひき逃げ犯、ヤクザにいたっては、麻薬をばら撒いてるやつ。治安は、少しはよくなったんじゃない?」

 良美が頬をかきながら言う。

「問題の人を改心させるとか無いわけ?」

 較が遠い目をして言う。

「あちきは、そんな他人を改心させられるなんて立派な人間じゃないよ。ここは、自力で立ち直ってもらうとして、周囲に害を及ぼさないようにしただけだよ」

「世の中、悪いことを考えるのでさえ、危険なんだな」

 良美がしみじみというのであった。

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