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レッドデータアニマルの保護方法

レッドデータアニマルに関する話

「レッドデータアニマルって何?」

 移動の飛行機の中、暇だったのか、資料を斜め読みしていた良美の質問に、ぬいぐるみのデザインを考えてた較が答える。

「絶滅危惧種の動物の事。簡単に言えば、何にもしなければ数年で地球上から消滅するだろう動物。赤字とか、危ない数値の時に赤い数値を使われるからこう呼ばれてる」

「それが何万も居るんだ?」

 良美が驚いているが較が苦笑する。

「それって正式に調査した数値だから実際は、その十倍は、居るんじゃない?」

「嘘! どうしてそんなに居るの?」

 大声をあげて周りから白い目で見られる良美をたしなめながら較が説明する。

「人間による環境変化が原因だって一般的には、言われてるよ」

 良美が眉をひそめる。

「本当?」

 較が頬を掻きながら言う。

「あくまで一般論。あちきは、自然の流れだと思ってる」

「自然の流れ?」

 困惑気味の良美に較が頷く。

「生物は、進化する。その中で環境にあった進化が出来なかった生物が絶滅し、適応出来た生物だけが生き残る。そうやって地球は、自分の上に住む生物の数を抑制しているんじやないのかな? だからあちきは、レッドデータアニマルを保護しようとするのは、他の生物の進化を無視した完全な人間のエゴだと考えてる。環境改善だって地球の為でなく、自分たちが長くこの地球上で生きていくためだって考えるべきだね」

 良美が複雑な顔をする。

「ヤヤは、時々、人類と自分たちを切り離して考えてる所があるよ」

 言われて較がはっとした顔になる。

「今のは、上から目線だったね。確かにあちきもそんな人類の一人だもん、責任は、あるか。ヨシのそういった指摘、助かる」

「どういたしまして」

 良美がそう返した時、飛行機が着陸体制に入る。



 飛行機で那覇空港に降りた後、船に乗り換えて数時間、一つの無人島に到着する。

「ここで絶滅した筈の動物やレッドデータアニマルが目撃されているんだよね?」

 良美の言葉に較が頷く。

「それも一種や二種でなく、何十何百種類もね」

「偶然とか、偶々環境と適応したからって話は、無いの?」

 良美の問い掛けに資料を見ながら較が答える。

「明らかに寒冷地の生き物も居るから可能性は、かなり低いね」

 較達は、島の森の中に入っていく。

「あの狼、見たことある」

 良美が狼を指差し言うと較がため息混じりに言う。

「あれは、日本狼って言う絶滅した生き物」

「でも、八子さんの所で見たよ?」

 良美が首を傾げると較がため息混じりに言う。

「時空を自由に行き来する八子さんのペットに一般常識は、通じないよ」

 その後も二人は、絶滅または、絶滅の危険性がある動物と遭遇しながら奥に進む。

 すると一つのログハウスを見付ける。

「無人島だったよね?」

 良美の問い掛けに較が頷く。

「この現象の元凶だね」

 無造作に近付くとノックする良美。

「誰か居ますか!」

「一瞬も躊躇わなかったね?」

 較の指摘に良美が頷く。

「敵だって決まってないのに余計な警戒は、相手に余計な警猜疑心を与えるからね」

「貴女達は、何者なの?」

 出てきた眼鏡の女性の問い掛けに較が頭を下げる。

「失礼します。あちきの名前は、白風較。こちらは、大門良美と言います。この島で多くの絶滅危惧種が目撃されたって報告があり調査に来ました」

「貴女達の様な子供が?」

 女性が胡散臭そうな顔をする。

「胡散臭いはなしでしたから」

 較がストレートに返すと女性が言う。

「言ってくれるわね、あたしがやってるわ。別に悪いことは、していない。悪いことをしているのは、世間全般よ! 貴女達みたいな子供に何が出来るのかしら?」

「開き直り? 他人の土地で好き勝手にやってれば犯罪だろ。やりたかったら、自分の土地でやったら?」

 良美が突っ込んだ。

「そんな土地があるわけ無いじゃない!」

 女性の反論に較が言う。

「犯罪を犯して善行しても続かないし、何も変わらない。貴女が死んだ所で全てが無に帰るよ」

「だからと言って滅び行く動物をほっておけと言うの!」

 感情的な反論を較は淡々と切り返す。

「話を切り換えないで下さい。あちき達が問題にしてるのは、貴女が犯罪を犯して居ること。動物達を見捨てるとか全て貴女の都合でしょう?」

「動物達が絶滅するかは、全人類の問題よ!」

 女性が大声を出す。

「因みにアフリカ難民が飢え死にするのは、全人類の問題ですか?」

 較の問い掛けに言葉に詰まる女性。

「はっきり言っておくね、あちきは、どちらも他人事。だってあちきは、自分や自分の周りの人間の事で精一杯だから。貴女が理想を批難する資格もないかもしれないけど、犯罪と言う、他人の権利を侵害する人間がどんな正論を言っても世間では認められないし、逆に真面目に活動してる人まで悪く見られるよ」

 較の正論に女性が切れるた。

「どんな正論を言っても、今彼らを救わなければ、滅び、二度と戻って来ないのよ」

「それに抗うのは、彼等がする事。人間だからって、種の存亡に関与出来ると思うなんてエゴ以外の何物でもないよ」

 女性がむきになる。

「人が彼等を滅ぼした事実は、いくらもあるは!」

「恐竜が支配していた時に滅びた種は、もっと莫大だよ。それが自然の怖さだよ」

 較が正面から打ち返す。

 そのまま平行線のまま話が進むかと思われた時、較が後ろを向き告げる。

「やっぱり、貴女は、動物を見下していたみたい」

「何を根拠にそんなことを言うのかしら?」

 較は、前を向いて確認する。

「繁殖に最適な環境を作ったでしょ?」

 女性が頷く。

「当然、彼等には、多くの子孫を残して貰わなければいけないからね」

「異常繁殖によるレミングが始まったよ」

 較の答えに驚く女性。

「そんな馬鹿な、それは、単なる伝説よ!」

 較がほほをかく中、良美が手を上げる。

「レミングって何?」

 女性が較を睨みながら説明する。

「ネズミの一種と考えて良いわ。大量発生の際に海に身を投じて集団自殺すると言う伝説があった。しかし、それは、誤解で、ただの集団移動でしかないって証明されているわ」

 較が頷く。

「そうだね、でも魔法の業界じゃ結構ある現象なんだよ、自然発生じゃない環境変化による動物の異常繁殖と自滅行動。あちき達は、この現象を伝説になぞらえてそう呼んでる。宗教系の研究者に言わせれば神の審判だってよ」

「あたしは、出来るだけ自然な環境に戻しただけよ!」

 必死に主張する女性に較が冷たく言う。

「それが間違いなんだよ。自然を人間の手で再現できるなんて驕りでしかない。例え表面的な数値が近づけられても本質は、別の物。その結果があれだね」

 動物達の悲痛な鳴き声が響き続ける。

「そんな、あたしは、ただ動物たちを守りたかっただけなのに……」

 しゃがみこむ女性に良美が近づき言う。

「それであんたは、どうするの? あたし達は、ここにあった事を報告して終わりだよ。あんたには、こうなった責任を取る義務がある」

「どうするって、一度手を離れた動物達をどうする事も出来ない。その子の言う通りよ! 所詮、人間の手で自然を動物をどうこうする事なんて出来なかったのよ!」

 女性が泣き崩れる。

「だったら、この島をヤヤが消滅させてお終いだね。ヤヤやっちゃえ!」

 頬をかく較。

「あのね、そんな事をして後始末が大変だとか考えないの?」

「山一つ消した人間が何を言っているの? どうせ、このまま放置しても大事になるんでしょ? だったら、後腐れが無いように派手にやっちゃいなよ」

 良美の指摘にため息に混じりに較が右手を騒ぎの方向に向ける。

「確かに、ここの動物達の事がばれたら大騒ぎになるしね。適当に壊して、自然現象に偽装しますか」

「待って!」

 女性が止める。

「どうしたの? おばさんは、もう諦めたんでしょ? だったら、黙っててよ」

 良美が強く主張する。

「諦めたくないのよ! 自分が無力だって解ってる。それでも、彼らを助けたいの。だから殺さないで!」

 女性の言葉に良美が笑みを浮かべる。

「ヤヤ、どうにかならない?」

 較が眉をひそめる。

「最初から、その人にその一言を言わせたかったんでしょ?」

「そうだよ。何か問題あり?」

 良美に素直に聞き返されてヤヤが肩を落とす。

「苦労するあちきの苦労も考えて欲しいな」

「散々いろんな人に迷惑をかけてるんだから、偶には、人に役にたたないとね」

 良美の言葉に携帯を取り出す較。

「八子さん、ちょっと管理して欲しい島があるんだけど。費用は、あちきが出すから、お願いできる。OKだったら、こっちに来てね」

「どこに電話しているの?」

 女性の問いに良美が答える。

「ペット好きなおばさんの所」

 空中から八子が表れて言う。

「費用は、そっちもちって本当よね? またペットが増えて、困っていたから調度良いわ」

 較が疲れた表情で言う。

「はいはい、だからあそこで暴走している動物をどうにかして」

 八子が頷く。

「任せておいて!」

 八子が指を鳴らすと騒ぎが収まっていく。

「何をしたの?」

 女性が不思議そうな顔をすると較が苦笑する。

「八子さんは、無節操にペット拾ってくるから、ここ以上に環境なんて滅茶苦茶にしてるからね。それでも大丈夫な様に過去にその動物たちが生きていた空間をコピーするなんて反則技を身につけてるんだよ」

 長い沈黙の後、女性が言う。

「……どこの神様?」

 八子がにこやかに謙遜する。

「そんな、ただの時空神新名の巫女ですわ」

「ちなみに、その時空神は、六極神の一柱で、巫女として欠片でも使えるのは、とんでも無い事なんだよね」

 較の説明に良美が言う。

「そういえば、八子さんって別世界の人間だっけ?」

 とんでも展開に言葉をなくす女性であった。



 結局、問題の島は、八子の管轄になり、女性は、管理人として、動物達の世話をする中、絶滅危惧種の動物を八子に伝えて、保護動物を増やしていく道を選ぶのであった。

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