メイドエンジェルって、何処のアニメ?
ミカエル登場です
「天使って実在するの?」
良美の質問に較が眉を寄せる。
「それって凄く難しい質問だよ。神の使い、使徒を天使と呼ぶ事があるけど、普通に想像する天使とは、似ても似つかない。竜魔玉の最後に出てきた奴は、天使っぽいけど、元使徒の手駒でしかないしね」
良美が不思議そうな顔をする。
「それじゃどうして天使があんな姿なの?」
「天の使いって雰囲気あるでしょ? でも世界共通って訳でもないよ。お稲荷さんの使いは、狐だし、天狗や狛犬なんてのもいるしね」
較が解説をすると良美が今向かっている教団のパンフレットを指す。
「それじゃあ、この天使は、何者?」
パンフレットの表紙に写された白い翼を持った存在を見ながら較が肩をすくめる。
「それを調べるのが今回のお仕事だよ」
問題の教団の施設を歩きながら較が報告書の内容を諳じる。
「ここは、キリスト教の一派にあたり、地元の善意で続いていた、零細教団だった。それがミカエルと名乗る聖女の登場と共に幾つもの奇跡を起こし信者を急激に増加させている」
良美が眉を寄せる。
「あからさまにペテンだね。八刃が何でそんなのの調査をやるの?」
較が頭をかきながら答える。
「報告役の虫の予感としか言えないみたい。でも八刃ってその手の予感は、鋭いからね」
信者達が集まる聖堂に入る較達。
すし詰め状態の信者に較達が紛れ待っていると大きなマントを羽織った女性が信者の前に姿を現す。
較がそれを見て呟く。
「メイドエンジェルがまだ残っていたんだ」
「何、そのアニメで出てきそうな奴?」
良美の質問に較が答える。
「竜魔玉の奴は、戦闘向きの手駒なんだけど、こっちのは、完全な雑用の手駒。昔の神殿で時たま見付かっては、当時の権力者への貢ぎ物になってた。雑用の為に多少の奇跡を起こせるから、信者集めには、丁度良いかも」
メイドエンジェルは、空中に浮かび輝く。
「因みにあれって単なる照明機能」
較がそう解説した能力を信者は、ありがたそうに拝む。
「つまらないオチだったね」
良美が肩をすくめる。
帰ろうとした時、一人の少女が叫ぶ。
「この偽者! 貴女達を信じたお父さんから何もかもを奪って、あたしは、絶対に許さない! 訴えるからね!」
するとメイドエンジェルが少女を睨む。
『神に反意を持つ、悪魔にみいられた者に死を』
メイドエンジェルの指先から炎が放たれる。
『カーバンクルカーテン』
較が炎を弾く。
「料理用の炎で人殺しをするつもり?」
『汝も堕落者か!』
光の弾丸が較を放たれる。
「今のも家事用?」
良美の問い掛けに較は、光の弾丸を避けながら答える。
「うんにゃ、これは、防犯用」
こうしている間もメイドエンジェルは、光の弾丸を放ち続けるが、較には、掠りもしない。
『何故?』
淡々と問い掛けてくるメイドエンジェルに較が答える。
「所詮は、防犯用で実戦向きでは、ないよ。『ヘルコンドル』」
較が生み出したカマイタチがメイドエンジェルの力の象徴である翼を切り裂き、墜落させる。
「雑用の為の使徒の手駒じゃこれが限界だね」
良美の言葉に信者が動揺する。
余裕綽々の顔をしていた較だったが、飛び退き、良美をガードする。
「どうしたの?」
較が冷や汗を垂らしながら言う。
「神の高位使徒が居る……」
較の視線の先に、金髪の絶世の美女がいた。
『神に逆らう者に生きる資格無し』
炎が炸裂した。
神殿の中は、阿鼻叫喚の状態になっていた。
「信者まで巻き添えにして、何を考えてるのよ!」
較にガードし、無傷な良美の言葉に絶世の美女が告げる。
『ここに居たもの達は、神を疑った。それは、信者としてあっては、ならない事』
「だからって……」
なおも文句を言おうとした良美を押し止め、緊張した面持ちで較が問う。
「もしかして、赤酒杯様の高位使徒、御火得様では、ありませんか?」
絶世の美女、御火得が頷く。
『その通り、私こそが、赤酒杯様の一番の僕、御火得』
頭を押さえ較が呟く。
「最悪だよ……」
良美が小声で確認する。
「悪い神様なの?」
較が首を横に振る。
「赤酒杯様は、今でもこの世界に関わる神様の一人で、御火得様も間違いなくその高位使徒。この世界への干渉を禁じられた異邪とは、違い、その力を完全に使えるの」
「強いって事?」
良美の確認に較が複雑な顔をする。
「強いって言うよりも、面倒なの」
咳払いをし、気分を変えてから較が問う。
「御火得様、今回の件は、赤酒杯様の指示での行動ですか?」
御火得が一点の曇りが無い目で答える。
『指示は、無い。しかし赤酒杯様は、かつての世界を望んで居られる筈!』
較が大きなため息を吐く。
「やっぱり……」
「どういう事?」
良美が尋ねると較が答える。
「八刃に伝わってるんだけど、御火得様は、赤酒杯様の意志だと勝手に行動するの。計画された行動だから、かなりいい加減なんだよ」
良美が手を叩く。
「なるほど、よく居る自分の考えを勝手に他人へ押し付け、自分の行動を正当化する奴な訳だ」
『勝手な思い込みじゃない! 赤酒杯様もかつては、こんな緩い対策をお認めにならなかった!』
御火得が怒鳴る。
「実際のところどうなの?」
良美の問い掛けに較が小声で答える。
「神様にも色々あって、主権争いで負けて考え方を変えるしか無かったって話だよ」
『赤酒杯様が負けたのでは無い! 他の神々が八百刃の強さに恐れをなし、赤酒杯様も苦汁をのまざるえなかったのだ!』
激怒し、周囲を灼熱地獄に変える御火得。
「ヤヤ、何かやばく無い?」
良美も顔をひきつらせ、較が同意する。
「この状態で、炎を解放されたら、この都市が消滅するね。あれやるよ」
良美が頷くと較は、右手を御火得に向ける。
『ホワイトファング』
白い光が御火得に直撃する。
「やった?」
激痛に顔を歪める良美の確認に較が首を横に振る。
「多分、無理だと思う……」
土煙が消えると御火得が無傷で立っていた。
『白牙に浸食されしものだと? ここは、引くしかない……』
悔しそうに姿を消す御火得。
「勝てないと思って逃げた?」
一息吐いたって顔で聞くが肩をすくめる。
「まさか、あちきを通じて、自分のしている事が白牙様に発覚するのを恐れだけだよ」
「このままじゃ終らないよね?」
終わらすつもりなど全く無い良美の言葉に較が疲れた顔をする。
「それが出来たら楽なんだけどね……」
これが較と良美の高位使徒相手の騒動の始まりであった。