表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/16

道具なしでの無人島生活

ヤヤは、万能なんです

「無人島だね?」

 良美の言葉に較が頷く。

「無人島だよ」

 長い沈黙の後、良美が遠くを見る。

「今夜の総合格闘技の決勝戦、楽しみにしてたのにな」

「ビデオで我慢して」

 較がきって捨てる。

 そんな二人を見て、後ろに居た男達が苦笑する。

「こんな状況でテレビの心配とは、やはり甘いな」

 良美が振り返る。

「甘いって何が?」

 男が肩をすくめる。

「無人島を甘く見ていると言う事だ」

 良美は、気楽に言う。

「テレビの企画でよく見るけど、大した事無いじゃん」

 爆笑する男達。

「あんな、やらせと一緒にするな。飲み水の確保すら容易じゃないこんな状況で、荷物も無いお前達に生き残るのも難しいだろうな」

 男達は、バックパックを担いで居た。

「生き残りたかったら、例の物を返せ。そうすれば、お前達を養ってやるよ」

 較が平然と言う。

「好きに言っていて。これは、絶対に返すつもりがないから」

 そういって較は、男達が狙っていた機密情報が入ったメモリスティックを見せ付ける。

 男達は、余裕の笑みを向けて言う。

「時間が経てば経つほど条件は、悪くなるのは、覚悟しておけ」

 海岸から去っていく男達。

「あの飛行機は、直せないよね?」

 良美が海面から折れた翼を見せる飛行機を指差す。

「救助が来るのを待った方が安全だよ」

 較が振り返り、人の踏み入った痕跡が皆無な島を見るのであった。



 何故、こんな状況になったかというと、較と良美は、テロリストが偶然手に入れた大破壊用魔術の回収を行うことになった。

 紆余曲折があって、問題の魔術の情報が入ったメモリスティックを回収して帰還しようとした較と良美だったが、テロリストが飛行機に潜入し、交戦の結果、飛行機が墜落してしまった。

 男達は、こういった状況も想定して、準備をしていた。

「あの娘達、どのくらいで根をあげますかね?」

 ライターで火をつけ、川の水を沸かして、飲み水の確保をしながら、男の一人が言うとリーダー格の男が言う。

「もって一日。さっきみたが、大型肉食獣も居た。明日の朝には、泣きついてくる筈だ」

 そうすると、男達の一人が下品な笑いをあげる。

「その時は、例の物だけじゃなく。やつ等に体も要求してやりましょうぜ!」

 仲間の一人が苦笑する。

「お前、あんなガキを相手して楽しいのか?」

「ガキだからいいんじゃないか! 苦痛に歪む顔が楽しみだぜ!」

 下品の男の言葉にリーダー格の男が告げる。

「好きにしろ。ただし、最優先は、メモリスティックだ。あれがあれば国連軍の隙をついてテロを行うことも出来るんだからな」

「判っていますよ」

 こうして男達は、自分達の優位性を確信していた。



 三日後、男達は、焦っていた。

「やつらは、もしかしてもう死んだんじゃないのか?」

「死体から回収するのか? 肉食獣の腹の中に無いことを祈るしかないな」

 リーダー格の言葉に男達が渋い顔をする中、茂みが揺れ、虎が飛び出てくる。

 慌てる男達だったが、虎は、男達の事等気にせず、通り抜けようとしたが、いきなり地面に倒れた。

「肉だ!」

 良美が駆け寄って来て、虎の死体を担ぎ上げる。

 呆然とする男達に良美が告げる。

「これは、あたし達が獲ったんだから、分けないからね!」

 リーダー格の男が言う。

「生きていたのか?」

「当然!」

 胸を張る良美。

 そこに較が来て、男達を見て言う。

「その顔からして保存食しか食べてないね。その虎を調理するから、食べにきなよ」

「えー、こいつらテロリストだよ!」

 良美が不満そうな顔をするが、較が言う。

「それでも、死んだら目覚めが悪くなるよ。こっちだよ」

 男達が躊躇する中、リーダー格の男が言う。

「相手の住んでる場所を確認するのも大切な事だ」

 そして、較と良美についていった。



「何でこんな所にログハウスが?」

 男の一人の言葉に良美が呆れた顔をして言う。

「ヤヤが作ったに、決まってるじゃん」

 戸惑う男達の一人が手を上げて質問する。

「しかし、道具は?」

 較が、手近の木の幹を素手で切り裂き言う。

「木を正確に切れればログハウスだったら、他に材料が必要ないよ」

 中に入ると、キッチンまであって、何故か水が入った壷があった。

「壷なんてどうやって?」

 男の一人の質問に良美が胸を張る。

「上手だろ。あれは、あたしが作ったんだ。因みに焼きは、ヤヤが撃術でやった」

 そういっている間にも、手刀で虎を解体していくヤヤ。

『フェニックステール』

 鉄板代わりの磨き上げられた石の表面が燃え上がる。

 十分に熱せされた後、虎の肉が置かれて、焼き上げられていく。

 出されたのは、虎の肉だけでなく、魚の燻製などもあった。

「こんな物まで作ったのか?」

 リーダー格の質問に較が頷く。

「こういった保存食は、いざって時に役たつからね」

 男達が驚く中、食事をしながら良美が言う。

「しかし、こんな事までよく身につけたね?」

 較が苦笑する。

「どんな状況でも生き残れる様にってね。ここなんて動物が居る分楽だよ。完全な岩場に取り残されたときは、丸三日、何も口に出来なかったもん」

 ぞっとする男達。

 リーダー格の男が言う。

「どんな化け物なんだ?」

 較が肩をすくめる。

「必要になる事があるからだよ。今回みたいにね」

 結局、男達は、諦めるしか無かった。



 後日談。

「ビデオを撮り逃した!」

 騒ぎまくる良美に較がため息混じりにコネを使って放送映像を入手する事になるのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ