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謎の湖の主を追え

ヤヤの新シリーズ、今度は、超常現象等と戦います

 北海道の自然に恵まれた田舎町、摩白マシロ町。

 そこに二人の少女がやって来た。

「ここが摩白町だよね?」

 ショートカットの元気で、引き締まったスタイルをした女子高生、大門ダイモン良美ヨシミの言葉に、良美と同じ年なのに、下手をすると小学生に見える童顔のポニーテールの少女、白風シラカゼクラベが言う。

「そうだよ。取り敢えず、民宿を予約してあるから、そっちに行くよ」

 こうして、二人は、人より牛が多い田舎道を歩いていくのであった。



「町長、これは、天罰です!」

 そう宣言する、摩白町の若い職人、森本五郎に気弱な町長が言う。

「しかし、だからといってどうしたら良いというのだ?」

 五郎は、背中に広がる重機を指差して言う。

「あんな物で開発するのを止めて、直にもとの自然な状況に戻すのです!」

「それは、出来ませんね」

 そういって現れたのは、スーツの男、木下次郎であった。

「なんだ、この町を売った裏切り者!」

 五郎が睨むと次郎は、肩をすくめて言う。

「止めてください。私もこの町の事を思って開発を行っています。そうでしょうが、このままでは、若い連中は、みんな都会にでてしまう。このレジャー施設の誘致で、産業が生まれ、この町が復活するのです」

「そんな馬鹿な考えの結果があれだろ!」

 五郎が指差した所には、倒壊した建物の瓦礫があった。

「あれは、事故です。事故原因も直に判明します」

 慌てて弁明する次郎に五郎が詰め寄り言う。

「原因なんて解っている、湖の主のお怒りだ!」

「そんな非科学的な!」

 次郎が反発する。

「実際どうなの?」

 いつの間にかに来ていた良美の質問に較が言う。

「事前調査だと、湖の底に封印された魔獣が復活しただけ。それ退治して終わりだよ」

 いきなり現れた二人の少女に戸惑う町の住人に較が一枚の書類を取り出して言う。

「あちき達は、非合法組織のメンバーで、極秘のうちに今回の事件を解決するのが目的。その間の被害については、ここに書かれていた場所に請求してください。そして、秘密が護られた場合、それなりのお礼を予定しています」

 そういって、較は、ジュラルミンケースを取り出して、あけてみせる。

「これがそのそれなりのお礼です」

 町長は、戸惑う。

「もしかして、犯罪組織だったりしますか?」

 較が笑顔で言う。

「法律には、引っかからなければ犯罪になりません」

 言外にそういう事をしているといっている。

「結局、お前達は、何をしたいんだ!」

 五郎が叫ぶと良美が言う。

「簡単に言えば、貴方達の言う所の湖の主って奴を倒すだけだ」

 次郎が驚く。

「冗談でしょう? そんな非科学的な存在が居るわけが無いですよ」

 それに対して較が笑顔で答える。

「そういう風に思っていてくだされば助かります」

 そういって、ジュラルミンケースを置いてその場を離れようとする較達の前に五郎が立ちふさがる。

「ふざけるな! 湖の主には、手を出させないぞ! やるんだったら俺を倒してからいけ!」

 拳を突きつける五郎に良美が構えて言う。

「その挑戦受けた! 行くぞ!」

 強烈な回し蹴りが五郎にクリーンヒットして吹き飛ばす。

「五郎!」

 次郎が駆け寄り、町長が慌てて言う。

「お願いです、町民には、手を出さないで下さい!」

 較が言う。

「ヨシが言ったように、こっちの狙いは、湖の主だけ、邪魔しなければ平気ですよ」

 町長が頷く。

「解りました。ですからどうか、お願いします」

 頭を下げる町長を残し、較達が歩いていく。



 湖の畔に来た良美が言う。

「深い霧だね」

 較が、困った顔をして言う。

「そうだね、それより問題なのは、魔獣の気配がしないって事なんだけどな」

「湖の底に隠れているんじゃないの?」

 良美の言葉に較が首を横に振る。

「湖全体に気を放って確認したけど、居ないよ」

 その時、湖の脇の森からお化けが出てくる。

「湖に近づくな! 近づく者には、不幸が訪れるぞ!」

 較が無造作に近くの木に手刀を振り下ろす。

『オーディーン』

 倒れる木にお化けが驚く。

「嘘だろ……」

 良美は、お化けのシーツを剥ぎ取る。

「もう少し捻った方法は、思いつかなかったの?」

 シーツの下には、較達と同じ年頃の男子だった。

「うるせい! よそ者がこの湖に近づくんじゃねえ!」

 そこに一人の女子がやってくる。

「亮くん、もう止めて!」

 亮と呼ばれた男子が言う。

蓮美レンミ、どうして来たんだ!」

 蓮美と呼ばれた女子が言う。

「亮くんが危険な事をしているって聞いたから止めに来たの。だって、もしも亮くんにもしもの事があったら……」

 その言葉に顔を赤くする亮と蓮美を見て、良美が言う。

「正直、やってらんない気になってくるんだけど、事情くらい説明してくれるよね?」

「よそ者には、関係ねえ!」

 強がる亮の腹に良美の手加減抜きの肘が決まり、亮は、蹲る。

「亮くん、大丈夫! 貴女達何をするのですか!」

 睨む蓮美に良美が言う。

「意地を張るんだ、喧嘩する覚悟あるんだろう。さあ、きやがれ!」

 構える良美に亮が立ち上がる。

「上等だ!」

「止めて!」

 必死に止めようとする蓮美を較が制止する。

「取り敢えず、飽きるまでやらせておいた方が良いよ」



「やるじゃねえか」

「あんたこそ」

 微笑み合う亮と良美を見て蓮美が目を点にしている。

「これなんでしょうか?」

 較が言う。

「いわゆる、拳で解り合うって奴じゃない? あちきには、正直理解しきれない文化だけど、一部では、まだ生きてるらしいよ」

「話してよ」

 良美の言葉に亮が言う。

「この湖は、元々、地元の人間が大切にしていたんだ。馬鹿な大人が観光スポットにしようとしてるんだ。その所為で、蓮美の家だって……」

 蓮美が辛そうに言う。

「うちの家は、この湖で漁をしていますが、今回の工事で、魚も減り、稼ぎが減って……」

 良美が笑みを浮かべる。

「彼女の為に、開発業者を追い出そうなんて根性あるね」

「違う! 俺は、ただこの湖を護りたかっただけだ!」

 亮の言葉に較が淡々と言う。

「残念だけど手遅れだよ。だって、工事が原因で、魚の育つ環境は、殆ど壊れている。もう元には、戻らない」

 それを聞いて、悲しそう顔をする蓮美。

「畜生! 皆、湖の主にやられちまえ!」

 亮が叫んだ時、湖が波打ち、巨大な蛙が姿を現す。

「本当に居たのかよ……」

 呆然と湖の主をみる亮。

「ヤヤ、あれって問題の湖の主? 居たみたいだよ」

 較が眉を顰める。

「おかしいな、さっき確認した時は、何も居なかったんだけど?」

「そんな事を言っている場合じゃありません! 逃げましょう!」

 慌てる蓮美。

 そんな較達に向かってジャンプしてくる湖の主。

「キャー!」

 蓮美が叫び、亮が慌てて庇う。

「止めろ!」

 その瞬間、湖の主が動きを止めた。

「なるほどね、仕掛けがわかったよ」

 そう言いながら、湖の主に向かって駆け寄り、飛び上がる較。

『トール』

 雷撃の回転踵落しが湖の主に決まり、消滅させる。

 霧散する湖の主を見て良美が言う。

「これで無事終了だな?」

 較が肩をすくめて言う。

「残念だけど、湖の主の謎は、もっと深いみたいだよ」

 驚天動地の事態にも平然としている二人を見て亮が言う。

「お前達、何者だ?」

 良美が少し考えていう。

「そうだね、取り敢えず、イフクラッシャーとでも呼んでおいて」

「「イフクラッシャー?」」

 繰り返す亮と蓮美であった。

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