10
「佐藤さんそれだけで足りるの?」
「ええ、ありがとう隼人君」
今日は家事をする日ではないから家でゆっくりしていたらみんなが来てくれた。
ご飯も隼人が作ってくれたからのんびり食べるだけでいいことが大きい。
「ま、お客さんとして来ているんだから普通の対応でしょ、慎治は知らないけど」
「僕だってお客さんなんだから優しくしてもらいたいなあ」
「知らない、陽治にだったら考えてもいいけどね」
あ、そう、関係が変わったことを話してからはずっとこんな感じだ。
前だったら「あの人と仲良くするぐらいなら慎治と仲良くした方がいい」みたいに言っていたのにこの変化には嬉しくなる。
まあ、慎治さんにも結局は付き合ってしまう子だから差というのはそこまでできていないんだけどね。
「陽治だけでも気に入ってくれたのなら嬉しいよ、だけどどうして急に変わったの?」
「それは姉ちゃんをちゃんと見てくれる人だからだよ、慎治はその点で言うと駄目だから」
「僕も貰ってもらったから陽治とあんまり変わらないと思うけどなあ、僕がいなくてもお店はなんとかなるからまた唯に集中できるよ」
「いや集中されても浮気みたいになるから駄目でしょ」
「いやいや、僕からすれば隼人君みたいな男の子といちゃいちゃされる方が浮気に該当するけどね」
はは、弟相手になにを言っているのか。
でも、私に安定して一緒にいられる男の子の友達なんかがいたら陽治さんが弱々しくなりそうだからいなくて安心できたはずだ。
「ファン二号だったのにあっという間に変わってしまったわよね」
「なんかすみません」
「謝らなくていいわよ、私は白坂先生のファンなだけで本当に好きなのは……」
「友達のお姉さんでしょ? 姉ちゃんから聞いたよ」
「間違えたわ、それでもまだ気になっている状態だから」
どんな人なのだろう、今度会ってみたい。
あの友達さんのお姉さんだから元気な感じなのだろうか、なんて妄想をしていると「すまんっ、遅れた!」と陽治がやって来た。
「寧ろ陽治はこのタイミングで来てナイスだよ、座って」
「お、おう」
「母さんが帰ってくる前に来てくれて助かったよ」
これは最近母から隼人に対する愛情が限界突破してしまっているからだった。
そういうのもあって彼がいるところなら同じようにはできないと考えて歓迎しているのだろう。
「ただいまー」
「うげ……っと、いけないいけない、母さんお帰り」
「ただいま隼人君!」
「陽治とかがいても結局変わらないのかよ!」
母は強い、他に誰かがいたって自分のやりたいようにやる。
食べ終えた後も私と彼以外の人で盛り上がっていたからリビングから連れ出した。
「みんなで集まれたときの賑やかな感じも好きだ」
「楽しいですよね」
一ヵ月に一回ぐらいはこうしてみんなで集まりたいところだ。
無理なら無理でもいいからみんなにはいつまでも元気でいてもらいたい。
「でも、いまは唯と二人で過ごせる時間がもっとほしい……かな」
「好きですか?」
「そ、そりゃ……好きに決まっている」
「私も陽治さんとゆっくりできる時間が好きです」
こういう話がしたくて出たわけではなくてただ一緒にいたかっただけだけどこんなことになった。
「俺は……?」
「好きです」
「はは、大好きとまで言われたらしい弟君にはまだ勝てないな。頑張るよ俺」
「頑張らなくていいので一緒にいてください」
「おう、約束だ」
いい顔をしている。
急にくっつきたくなって動こうとしたところで「やらしい時間は終わりだよ」と慎治さんに止められてしまった。
二人で笑ってからみんなのところに戻ったのだった。




