2*織姫って何ですか?
「おはよう、瑠璃。よく眠れたかい?」
「お、おはようございます。えーと……彦星様」
気まずさに耐えきれず聖那に助けを求めようと振り返るが、すでに彼女の姿はどこにもなかった。
呉羽にそっと促されるまま、瑠璃は席につく。
卓上には、朝の静けさにふさわしい品々が整然と並んでいた。
湯気を立てる白粥、翠のように透き通る塩漬け野菜。
蒸し鶏の細切りは、生姜の香りがふわりと寄り添い、黄金色の小さな饅頭は竹籠の中でほかほかと温かい。
隣には甘い香りを漂わせる棗の菓子。最後に注がれた琥珀色の花茶が、静かに湯気を揺らしていた。
「うわぁ……美味しそう」
先ほどまでの緊張がどこかへ吹き飛び、瑠璃は目の前の食卓に思わず息をのむ。
「冷めないうちに、召し上がるといい」
促されるまま口に運ぶ。
白粥の優しい温かさが胸の奥まで染み渡り、塩漬け野菜の爽やかな酸味が後を引く。
蒸し鶏の上品な旨味は驚くほど軽やかに舌でほどけ、饅頭をかじればほのかな甘みが広がる。
花茶の香りと混ざり合い、思わず息がほどけた。
「美味しすぎる~!」
「ふふ、そんなに喜んでもらえるとは」
呉羽の穏やかな表情に、瑠璃は思わず顔を赤らめた。
食い意地が張ったと思われたかもしれない──そんな不安をごまかすように、昨日から抱えていた疑問を口にする。
「ねぇ、彦星様。“織姫”って何なの? どうして私が呼ばれたの?」
「……そうだね。説明しないといけないね」
呉羽は静かに言葉を紡ぐ。
「織姫とは、代々受け継がれてきた階級のようなものだ。先代の織姫が使命を終えると、次の流星群の夜に新しい織姫が誕生する。……正確に言えば、別の者が“織姫として”天河界に召喚されるんだ」
「召喚……。あ、だから今朝、聖那が“代々”って言ってたのね。……私で何代目なの?」
「十四代目だよ」
「そ、そんなに!? じゃあ……彦星様は、これまで一人か二人くらいは織姫を見てきたのかしら?」
ふ、と呉羽の視線がわずかに下を向く。
一瞬だけ、言葉にしがたい影がその瞳をよぎった。
しかしすぐに、いつもの柔らかな表情に戻る。
「十四人だ。瑠璃で十四人目になる」
「へ……? え、彦星様は何歳なの?」
思わず素が漏れた。
十四人分って、どれだけの年月なの──?
「ふふ、驚くのも無理はない。……けれど、長く生きすぎるとね。年齢なんて、もう忘れてしまうものだよ」
その言葉には、どこか意味深な響きがあった。
瑠璃には、それ以上問い詰めることはできなかった。
「さて。疑問には答えられたかな? 今日は侍女頭に案内を頼んである。気になることがあれば彼女に聞くといい。彼女は代々の織姫を見守ってきたからね」
呉羽は、先ほどの影を隠すように明るい声で言った。




