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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ヒロインと浮気してしまいました……わたしが。

作者: 夏雲の影

隣にはスゥスゥと可愛らしい寝息を立てている美少女。

綺麗なデコルテと仰向けでも分かる大きな美乳がまるっと出ていたので、そっと肩まで布団を引き上げてやる。

一方の自分も全裸なのでブルッと身体を震わせる。今更だとしても彼女と同じ布団に潜り込むのは憚られ、床に散乱した下着や服を拾う。幸いといって良いのか分からないが、どうやら事に及ぶ前に景気よく脱ぎ散らかしたようで、汚れてはいなさそうだ。とは言え、液体が乾いたときの不快感が身体を覆っていることはどうにも逃避できずに風呂場へ向かう。


とりあえず頭から熱いシャワーを浴びる。

いつもはブラッシングしてから髪の毛を濡らすし、もう少し温いお湯を使うが、そんな気力が湧かない。シャンプーもろくに泡立てずにガシガシと洗い、ボディソープでこれまたガシガシと全身を洗う。


「痛ッたぁ!?」


背中を……正確には肩甲骨あたりに差し掛かったとき、ボディソープが死ぬほど染みて悲鳴を上げる。

強引に目を背けていた現実に、強制的に向き合わされた気分である。考えなくても分かる。隣で寝ていた彼女が引っ掻いてできた傷に違いない。昨晩の可愛くて甘い声まで蘇ってくる。


「痛ッてぇ……あー……なに。何だっけこれ……昨日、昨日は……お酒いっぱい飲んで、酔って、それから……それから……? ……アッ」


口説いたわ……この子口説いたわぁ……


いつもわたしがお忍びで通っている下町の酒場。治安はあんまり良くないが、安酒と料理が美味しく常連客も多い繁盛した店だ。普段はむさ苦しい男共しかいないのに、珍しく女の子がいるうえにとびきりの美少女だったもんだから、男たちに絡まれていたのだ。そこに関しては男たちも悪くないというか、そりゃ絡むだろうって美貌だった。しかし手荒な真似をし始めたので見かねて口を挟んだのだ。

当然男たちは横槍を入れてきたわたしが気にくわなかったようで、直ぐさま殴りかかってきたのだが、まぁ普通にやり返したよね。体力はあまり使いたくないので、全員一撃で気絶させて、ついでに店から少し離れた場所に捨ててきた。店主と常連の皆に感謝された。

飲み直そうと店に戻ってくると、お礼を言うために店に残っていたという彼女に散々感謝されて、別に大したことはしてないと言うわたしに、何かお返しがしたいと頻りに言うもんだから、こっちが折れて、じゃあ一緒に飲もうって流れになり……あとは……うん。


お持ち帰りしちゃったね。


だぁってぇ! あんなドストライク放っておく方が無理じゃない!? つーか据え膳だろ!? 相性も最高だったしぃ、気持ち良すぎて全然止まんなかったしぃ、自分でもビックリするくらい萎えなかったしぃ。……いま昼? 結構過ぎてるギリ昼だな。明るくなってもやってた気ィするもん。


バスタオルで身体の水滴を拭いながら出てくると、美少女はまだスヤスヤと眠っている。

背中の傷のおかげで現実に向き合わされた今、せめて彼女の身体を拭いてやろうと布団をめくる。

さっきは目を逸らしてたから気がつかなかったけど、彼女の身体の鬱血痕がヤバイ。嘘でしょこれ全部わたしがつけたん? やばない? えぐ……ドン引き……自分にドン引きですわ。弁明の余地が無い。魔法で消しておこう。うんうん。証拠隠滅。


そうっとガラス細工を扱うように、彼女の柔肌をホットタオルで拭いてやる。魔法で出来なくもないけど、使わなくても良いものはなるべく使わない。魔力が多いわけでもないし。てか肌綺麗すぎん? 昼間の明るさで昨晩より良く分かる。きめ細かいわ。ファンデーションいらず。

よほど疲れているのか、優しく触っているとは言え起きる気配が無い。タオルの温度が心地良いのか、気持ちよさそうに口元をもにょりと動かしてわたしの手に擦り寄ってくる。くそ可愛いが止めて欲しいかな。どことは言わないが元気になってしまうので。自分の元気さにもドン引きである。


さ、全身隈無く綺麗にしたら、彼女が着ていた下着とワンピースをサクッと水魔法と風魔法で洗濯しちゃいましょう。まぁ便利! もう綺麗な服の出来上がり! 魔法のコントロールには自信があるので、一切布は傷んでいない。はい、これを着せておきましょうね~。あら何てこと……寝てるのに身体が軽い上に柔らかいから着せるのが楽だわ。そういや色んな体位したけど全部……ゲホゴホごほん。


いやー起きないねぇ。よっぽど疲れてるんですよね、分かります。起きたてはやっちまったと混乱したし、昨晩の自分を思い出して申し訳ない気持ちになるけど、後悔はしていない。あ、いやまぁ、女の子には手を出さないように気をつけてたのに、そこだけちょっとアレだけど。ミスった。えへっ。あまりにも好みでした。


スヤスヤと眠る彼女は、改めて見ても超美少女だ。あんな酒場にいたら当然絡まれる。放っておいたら彼女がどうなるか明白で胸くそ悪いので割って入ったが、彼女も彼女である。危機管理がお粗末。平民が買える程度の素材でできたワンピースを着ているが、本当の平民ならここらの治安が良くないことは周知なので、お忍びで来た貴族のお嬢さんってとこか。ワンピースを平民仕様にする程度の対策はしたようだが、女の子、しかもこれだけの美少女となれば治安の良い城下町だって目立つ。


ボーッと考えながら彼女を見ていると、「うぅ~ん」と寝返りを打ってまたスヤスヤ。声まで可愛いんだよね。昨日だって気持ち良いって泣いちゃって鳴いちゃって……おっと、思い出したら駄目だわ。

あーあ、顔も身体もついでに声もどちゃくそタイプだが、お貴族様となれば面倒事の方が多い。

ここはあの酒場の近くじゃ無くて城下町に近い上等な宿屋。酔っちゃいたけどわたしは支払いを昨日のうちに済ませてある。優秀。ってことは、選択肢なんて一択だよね。


「ごちそうさまでした。さようなら」


餞別代わりにチュッと彼女に口づけて、一夜を明かした宿を後にした。



ーーそういや……彼女の顔どっかで見たことあるような気がするんだけど、どこだっけな……?



これは、実は前世ド嵌まりしていた乙女ゲームに転生していた、魔法で男にも女にもなれるそこはかとなくクズな主人公が、ヒロイン及びヒーローに悉く惚れられて修羅場になる物語である!

誰か続きを書いてくださ~い。

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