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シャンドラはどこへ?

セーシェ達はルティウスの元へと駆けつけた。ルティウスはグロンギウス棟の2階テラスで茶を嗜んでいたようだった。セーシェは机をバンと叩きつけ、その拍子に机の上のティーポットが軽く浮き上がった。


「なんだなんだ、放課後の憩いを楽しんでいる僕に何か用か!?」


「ルティウス、いいから早くっ!また行方不明者が出たのよっ!」


セーシェの言葉にルティウスは立ち上がった。顔色を変え、慌てた様子で尋ねる。


「もしかして…行方知らずになったのはシャンドラ君か?」


「どっ、どうしてそれを…。」


レイラの問いに、ルティウスはテラス席の柵越しに指を伸ばした。


「あそこを見てくれ。」


「あれは…王家の間?ここから王家の間を見下ろすことができたのか。」


レオナルドが柵から身を乗り出し、王家の間の入り口の重圧籠った扉をじっくりと見た。


「そういうことです。僕はまず放課後に六首円卓会議に呼ばれ…その後にこの場所へ来た。すると、シャンドラ君が王家の間へと入っていくのを見て——。」

「それ以降、彼女が王家の間から出てくるのを見ていない。その随分長い時間が空いて殿下、ウィンザール、そしてセーシェが王家の間へと入るのを見たのさ。」


「王家の間の辺りで怪しい人物を見かけなかった?」


セーシェはルティウスに顔をぐっと近づけて言った。ルティウスはその威勢に気を呑まれ、両手のひらで距離をとりながら早急に思考を張り巡らせた。


「…そうだな、シャンドラ君が王家の間に入ってすぐに黒いローブの人影が見えたんだ。

「だけど、その人影はすぐに引き返したんだ。王家の間には立ち入っていないし…何より誰かも分からない。」


レイラはレオナルドの方を向き、首を傾げながら申し訳なさそうに、しかし訝しげに聞いた。


「殿下にこんな事を申し上げるのは大変失礼だとは思いますが、本当に王家の間にはシャンドラはいなかったんでしょうか?」


「もちろん、俺は部屋中を虫一匹逃さぬように徹底して探したんだ。女生徒1人を取り逃がすわけないだろう。」


「その言い方は変な誤解を招きそうだけれど…。でも、私も同感。あの部屋には人一人が隠れることが出来るスペースなんてどこにもないわよ。」


セーシェはレオナルドを小突きながらしかめっ面で言った。ルティウスは笑いを堪えつつ、疑問を呈した。


「あの部屋に隠し通路なんてモノが無いとすれば…シャンドラ君はどうやって消えたんだろうね。」


「…もしかして、魔法?人や物を移動させる魔法かしら!」


レイラは顔を上げ、閃いたように呟いた。その言葉にレオナルドが苦虫を噛み潰したような顔を見せた。セーシェはレオナルドの顔を横目で眺めながら言った。


「移動魔法…。所持しているのは…なるほどね…。」


「セーシェ、アイツに限ってそんな事しないことは分かっているだろう?」


レオナルドが首を横にブンブンを振りながら、顔に皺を浮かべた。セーシェの目を深く見つめる。ルティウスが割って入って制止するように両手を入れた。


「まぁまぁ。俺も同感だよ、殿下。ウィンザールが悪事を働くなんて俺には考えもつかないさ。」


レイラはえぇっと声を上げて口を覆いながら一歩後退りした。


「ウィンザール様が…?この事件の…容疑者ということですか!」


セーシェはふぅと息をついて、三人の周りをくるくると歩き始めた。レオナルドの鋭い目線が向けられるのでそっと目を逸らす。


「そう。でもあくまで可能性の話…。私だって、ウィンザールの犯行だと思わない。彼が犯人だとすると不自然な点がいくつかあるのよ。」

「まず、彼には存在不在証明(アリバイ)がある。六首円卓会議が終了した後、ルティウスとレオナルドを除いた四人で図書室にしばらくいたの。」


ルティウスがあからさまに悲しい表情を浮かべてテラス席の小石をこつんと蹴った。


「僕抜きで図書室に行くなんて…っ!あんまりだよセーシェ!」


「あなたがさっさとここへ来ちゃったんだから…全く。話を続けるけれど…図書室の窓際の席からは王家の間へと向かう道が見えるの。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


——図書室にいた時。窓の向こうのレオナルドを見てディミトリアが微笑んだ。


「あら、殿下じゃありませんか。急ぎ足でどこへ向かうのでしょう?」


「殿下は行方不明事件を一所懸命に追っているのよ。さぁ、早く地下墓場についての文献を調べて殿下にお伝えするのよ。」


セーシェが席に座り直しながら、文献を捲る速度を速め始めた。すると、ウィンザールが途端に立ち上がって言った。


「僕は殿下を追いかけるよ。君達は調べていて。」


その場にいた誰に文句を言わせる間もなく、ウィンザールは瞬間移動の魔法で姿を消した。ロデリックが貧乏ゆすりをしながら愚痴をこぼした。


「チッ…アイツはいっつもそうだ。面倒くさがりで人任せ…。おかしいと思わないか?」


「ふふ、その通り。あなたが短気さと同じくらい可笑しいわ。」


「うっせぇ!」


セーシェの言葉にロデリックは再び文献を読み始めた。そうして、30分ほどが経過した。図書室の扉が勢いよく開き、息を切らしたレイラが図書室へと飛び込んできた。セーシェを両手を握り、泣き縋るように近づいた。


「…シャンドラ…どこにもいないの。もしかしたら…行方不明…かも。」


セーシェはその言葉に目を見張った。それはロデリックやディミトリアも同じようだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…そうして、私は王家の間へと向かったというわけ。ルティウスの見た黒いローブの人影が犯人だとすると…私たちとずっと一緒にいたウィンザールに犯行は不可能よ。」


セーシェの言葉に、レオナルドが豪快に笑いながら続けた。


「ははは!感情に囚われず、論理的なのがお前のいい所だな。俺は長年連れ添う友としてウィンザールを信頼している。」


「でも、レイラ君の言う通りウィンザールでなくても…移動魔法を扱える生徒・教師が犯人だと言う線は大いに考えられる。いい着眼点だ。移動魔法は特異性が強く、初級ですら習得が難しいからね。」


ルティウスが顎に手を当てながら言った。レイラも嬉しそうに頷く。


「なら、学長に掛け合って生徒・教師の習得魔法一覧書類を明示してもらおう。そこから容疑者を洗い出せば、進展が見れるかもしれない。」

「俺は学長室へと向かう。お前達は王家の間に移動魔法の痕跡が無いかもう一度確認してくれないか?」


レオナルドは服についた汚れをサッと払うとセーシェに向かって言った。セーシェは黙って頷き、レオナルドは悠々と靡く王家のマントを揺らしながら、その場を後にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


——学長室にて。レオナルドは扉をノックし、ゆっくりと扉を開いた。


「失礼します。レオナルド=フォン=ラドナークです。…今日は急用があって伺いました、アードロック学長。


アードロックと呼ばれた学長は、まじまじとレオナルドを見つめた後、潤沢に蓄えた顎ひげを撫でながら笑った。


「もう日も沈んだ頃でしょう、殿下。急用とは何でしょうかな?」


「最近起こる連続失踪事件は、存じ上げているでしょう?あの事件の解決のためにも、生徒・教師の習得魔法一覧書類を共有していただきたいのです。」


その言葉に、アードロックは困ったような顔つきで答えた。


「殿下らに協力したいのは山々ですが…既に王国聖騎士団に調査依頼を出しているのです。明日の朝から調査が開始されるでしょう。」


レオナルドは気を落ち着かせながらもアードロックに一歩近づいた。


「ですが…っ!それでは遅すぎるかもしれない、俺は一人でも多くの生徒を助けたいのです!」


アードロックはレオナルドの覚悟を理解したかのように頭を縦に振り、書類を取り出した。


「ホッホッホ、殿下の猪突猛進さは幼い頃から変わりませんね。いいでしょう、大いに活用してください。ただし…万が一危険な目に遭いそうならすぐに私に通達すること。そして、期限は日を跨ぐまで…あと5時間程度とします。いいですね?」


レオナルドは自信満々に頷き、はい!と口にした後に、金色の髪を揺らしながら学長室を後にした。


「本当に…目的に真っ直ぐな人間だ。」


アードロックはレオナルドの背中を眺めながら、静かに呟いたのだった。








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