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自由な呼吸を求めて

作者: 綾崎暁都

 俺は七時に目が覚めた。目覚ましのアラーム音にイライラしながら、ベッドから起き上がる。

 今日は月曜日だ。学校に行かなきゃいけない。嫌だなあ。でも、仕方ない。制服に着替えて、歯を磨いて、髪を整えて、朝飯の準備をした。朝飯が出来上がったタイミングで、母親と父親がダイニングにやってくる。俺は彼らに挨拶した。

「おはよう、母さん、父さん」

 すると、ふたりは俺の顔を見て、驚いたような表情をした。いや、表情というか、なんというか。彼らの顔はのっぺらぼうだった。目も鼻も口もない。ただ、平らな肌があるだけだ。

 俺は思わず目をこすった。夢かなんかか? でも、目を開けても、彼らの顔は何も変わらなかった。俺は恐怖に震えた。

「か、母さん、父さん、どうしたの? 顔が、顔が……」

 俺は言葉に詰まった。彼らは俺のことをおかしな目で見ているように思えた。いや、目がないのに、どうやって見ているんだ?

 俺は混乱した。彼らは何か言おうとしたのか、のっぺらぼうの顔がぴくりと動いた。でも、音は出なかった。俺は耳を澄ませた。彼らは何か言っているのか? でも、何も聞こえなかった。俺はパニックになる。

「なんで話さないの⁉︎ なんで聞こえないの⁉︎ なんで顔がないの⁉︎」

 俺は叫んだ。彼らは俺の声に驚いたのか、のっぺらぼうの顔がひくりとした。俺は彼らに近づこうとした。でも、彼らは俺から遠ざかる。俺はさらに混乱して、そして悲しくなる。

 彼らは俺のことを嫌っているのか? 俺は何か悪いことをしたのか? 思わず涙が出そうになる。

 俺は朝飯も食わず、彼らに背を向けて、玄関に向かった。鞄を持って、靴を履いて、そしてドアを開けて外に出る。

 しかし、外に出てみると、のっぺらぼうの顔がたくさんある光景を目撃する。隣の家のおばさんも、通りを歩く人たちも、車を運転する人も含めて、みんな顔がなかった。

 俺は信じられなかった。これは一体なんなんだ? 俺はただの夢を見ているんじゃないのか? 試しに自分の頬をつねってみた。痛い。夢じゃない、これは現実だ。あまりの非現実的な光景に呼吸が乱れる。

 俺は走り出した。学校に行かなきゃいけない。学校に行けば、何かわかるかもしれない。学校に行けば、友達がいるかもしれない。友達なら、俺のことを理解してくれるかもしれない。友達なら、俺のことを助けてくれるかもしれない。俺は必死に走った。学校に向かって走った。

 でも、学校に着いても、状況は変わらない。先生や他の生徒も、みんな顔がなかった。俺は教室に入った。そして、自分の席へと座る。

 俺は周りを見た。今まで仲良かった友達も、みんなのっぺらぼうになっている。俺は彼らに話しかけた。

「おはよう、みんな」

 すると、彼らは俺の顔を見て、驚いたような表情をした。いや、表情というか、なんというか。今朝両親を見たとき同様、彼らは俺のことをおかしな目で見ているように思えた。いや、目がないのに、どうやって見てるんだ?

 俺は混乱してしまう。彼らは何か言おうとしたのか、のっぺらぼうの顔がぴくりと動いた。でも、音は出ない。俺は耳を澄ませた。彼らは何を言っているんだ? でも、聞こえなかった。俺はパニックになる。

「なんで話さないの⁉︎ なんで聞こえないの⁉︎ なんで顔がないの⁉︎」

 俺は叫んだ。彼らは俺の声に驚いたのか、のっぺらぼうの顔がひくりとした。俺は彼らに近づこうとする。でも、彼らは俺から遠ざかった。そして、俺は悲しくなる。

 彼らは俺のことを嫌っているのか? 俺は何か悪いことをしたのか? 俺は思わず涙が出そうになる。息も苦しくなってきた。でも、泣いても仕方ない。

 俺は彼らに背を向けて教室を出た。校門に向かった。鞄を持って、靴を履いて、校門を抜け学校の外に出た。

 どこもかしこも、のっぺらぼうの顔でいっぱいだった。通りを歩く人たちも、車を運転する人たちも、みんな顔がない。

 俺はどうしても信じられない。これはなんなんだ? ただの夢を見てるだけだろ、きっと。確かめるため自分の頬をつねってみる。痛い。夢じゃない。現実だ。

 俺は息を切らしながら走り出した。そうだ、家に帰ろう。家に帰れば、何かわかるかもしれない。家に帰れば、両親がいるかもしれない。両親なら、俺のことを理解してくれるかもしれない。両親なら、俺のことを助けてくれるかもしれない。今朝は驚いて飛び出したが、きっと大丈夫。だって、俺の親だぞ。

 俺は必死に走った。家に向かって走った。家に着くと玄関からそのまま中へと入る。リビングに向かうと、そこには母さんと父さんの姿が。俺は早速話しかけた。

「母さん、父さん、おれはどうしたらいいの? みんな、みんな顔がないんだ。そして、なんかおれだけが違うんだ。なんでこんなことになったの?」

 すると、両親は俺の顔を見て、悲しそうな表情をした。いや、表情というか、なんというか。彼らは俺のことを心配しているように思えた。いや、顔がないのに、どうやって心配してるってわかるんだ?

 混乱している俺の様子から、彼らは何か言おうとしたのか、のっぺらぼうの顔がぴくりと動いた。でも、音は出ない。俺は耳を澄ませた。彼らは何か言っているのか?でも、何も聞こえない。そして、俺はパニックになる。

「なんで話さないの⁉︎ なんで聞こえないの⁉︎ なんで顔がないの⁉︎」

 俺は叫んだ。彼らは俺の声に驚いたのか、のっぺらぼうの顔がひくりとした。

 俺は彼らに近づこうとする。でも、彼らは俺から遠ざかった。本当に悲しくなる。

 彼らは俺のことを嫌っているのか? 俺は何か悪いことをしたのか? それとも、俺のことを恐れているのだろうか? 俺は涙を流す。でも、泣いても仕方ない。

 俺は彼らに別れを告げて家を出た。そうだ。どこかに行かなきゃいけない。どこかに行けば、何かわかるかもしれない。どこかに行けば、顔がある人がいるかもしれない。顔がある人なら、俺のことを理解してくれるかもしれない。顔がある人なら、俺のことを助けてくれるかもしれない。いや、そもそも、一体どこに行けばいいんだ?

 俺は必死に走った。息を切らしながら、どこかに向かって必死に走った。

 でも、どこに行っても、まったく状況は変わらない。駅に行っても、バスに乗っても、電車に乗っても、みんな顔がない。そして、みんなが俺のことを変な目で見る。見ているように、のっぺらぼうの顔をこちらに向けてくる。顔を向けられるたびに、俺はどんどん息が苦しくなっていく。

 なんで、こんなことになったのだろう? なんで、みんな顔がなくなってしまったのだろう? でも、確か今朝、鏡を見たとき、俺にはちゃんと顔があったはずだ。確か、そうだ。いや、そもそも、顔とは一体なんなのだ?

 俺は遠くに行った。そして、どんどん孤独になる。そして、どんどん絶望的になってくる。

 この世界に自分の居場所はないのではないだろうか。そんな絶望を胸に抱えながら、重たい足をなんとか前に動かす。

 絶えず感じるこの息苦しさ。それがますます強くなる。なんて言えばいいだろうか。それはまるで、顔全体が何かで覆われているような感覚だ。この状況をなんとか脱しなければ。少なくとも、自分の好きなように、自由な呼吸ができるところまで回復しないと。

 俺は長く続く息苦しさに気分が悪くなり、公園のトイレに駆け込む。吐いたあと、しばらく身体がぐったりとしていたが、なんとか四つん這いの姿勢から立ち上がり、洗面所まで行くと口をゆすぎ、顔を洗った。そして、顔を洗い終わると、目の前にある鏡を見た。

 しかし、そこには顔のない、のっぺらぼうの顔になっている、俺の姿が映し出されていた。今朝まではあったはずの顔が、なくなってる。

 俺は顔のない自分の姿を見たのと同時に、今自分が呼吸できないことに気がついた。そして、段々と意識が薄らいでいく。薄らいでいく意識のなか、鏡に映る顔のない俺が悶え苦しむ姿が、最後まで脳裏に焼きついて離れなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 突如、周囲の人間がのっぺらぼうに見える状況の時点で恐ろしいのに、『俺』が息苦しくなる理由が最後に明かされたときには多大な衝撃を受けました。 そしてどうしてだかのっぺらぼうのはずの人物の感情…
[良い点] 反復表現の中でも変化が感じられ、またリズミカルでサクサク読み進められました。
[一言] 文体のリズムが良く愉しく読むことが出来ました。
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