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9/9

疎開先での日々 ③

 疎開先での生活は、目が回るほど忙しい。

 村の主要産業は林業農業畜産業。必要なのは一に筋力二に腕力。三、四に筋力五に体力、といわれる……とにかく体力勝負です、ハイ。


 一方僕ら疎開っ子は伸びしろしかない育ち盛り。だって最年長の僕とアシュレー殿下でさえ十二歳。

 殿下は騎士団で活躍できるくらいのチート持ちだけど僕を含めた他の五人は普通の少年だからね?中には器用な子もいるけれど、年相応なレベルだし。とてもじゃないが、徴兵された大人達の代わりなんて務まらないよ。


 まぁ本当のところ、周囲の誰も僕らに期待なんてしていないんだろう。期待されても困るし。


 でもちょっと待って欲しい。

 僕は人形使い(ドールマスター)、まだ見習いだけど。


 人形使い(ドールマスター)は、ゲームの中では使()()()が悪い不人気な職業(ジョブ)だった。

 このゲームは、職業(ジョブ)ごとに覚えられる魔法の種類や系統が決められている。もちろんレベルが上がるほど魔力は増えるし魔法の威力は強くなる。種類だって増える。

 だけど人形使い(ドールマスター)はどれだけレベルを上げても(ちなみにキャラクターのレベルMaxは999だ)魔力があっても、戦闘職──魔法騎士とか魔法剣士や、魔法使いや魔導師、魔術師召喚士等の魔法使い系職業(ジョブ)とは違い、補助魔法しか使えないからね。主に作った人形(ゴーレム)に色々な能力を付与するための魔法だ。


 で、ゲーム上での補助魔法がまた、使えねーったら。RPGとかやったことある人なら分かってくれると思うけどさ。

 たいていの場合、戦闘時には自分と敵とが交互に行動する。自分の番になることを自分のターンになる、とか言うね。

 自分のターンになると、敵を攻撃したり、傷つい仲間や自分を回復したり、時には逃げると言う選択をすることもある。


 ただどんな行動も、魔法かけるのに当然1ターン使ってしまうし。

 (自分や仲間の)強化魔法はそれほどの効果を感じられないし?

 特に物理攻撃力や魔法攻撃力の高い、いわゆるボスとの戦いで呑気に強化~なんてやってると、あっ!ちゅうまに全滅……も珍しくない。

 特定の属性(聖魔法に弱いとか、火魔法でしかダメージ与えられないとか)攻撃をかけたい時くらいにしかありがたみを感じられないんだよね。それだって中盤以降は敵がドロップする武器に属性付きのが増えるから、わざわざ使うこともない。


 でもね?

 それは全部、ゲーム内での話。

 ゲーム世界が現実になると、この補助魔法は、とっても、とおっても!使い勝手が良かったんです。

 人形(ゴーレム)だけじゃなく人間にも効果があるっていう点で。


 だってさ、仮に二時間ていう時間制限があったとして、体力腕力筋力速力が倍になってみ?

 日常生活が楽になるよ~。

 しかも魔法をかけられた側には副作用は一切無し。まあたまに僕が魔力切れを起こして引っくり返ったりするくらいかな。


「ジャミルって、もう少し慎重というか頭脳派というか……計画性のあるタイプだと思っていたんだけど」

 三度目か四度目に魔力切れを起こして、丸一日ベッドで過ごす僕を見舞ったアシュレー殿下は、頭を軽く左右に振りながらため息をついた。


「……それって暗に僕を馬鹿だと言ってるの?」

「馬鹿とまでは言わないけれど、あまりに行き当たりばったりだから」

「細かく計画を立てるとさ、それだけで()()()()()()()になっちゃうんだよね。夏休みの宿題とかさ。それで実行できずに最終日とか二学期始まって慌てて宿題をに取り掛かるんだよ、両親とかの手も借りてさ」

「??何を言っているのかよくわからないけれども、ジャミルの意外な一面を知れて良かったと思うことにするよ」

「その可哀想な子を見るような目はやめてよね~」

 僕が口を尖らせて抗議すると、アシュレー殿下は苦笑しながら頭を撫でてくれた。

「子供扱いもやめてよ~」

 僕がアシュレー殿下の手を掴もうとしても、殿下は簡単に僕の手を避けて撫で続ける。


 疎開して以来僕は身長は伸びていないけれど、アシュレー殿下はすくすく伸びているようで、泣き言を言わない殿下が時々、眠れないとこぼすことがあった。成長痛だろうか?


 うやらましい、間違えた。うらやましい。いや、今は身長よりも魔力量の伸びを優先するべき時期なのだ、きっと。うん。

 身長に関してはたぶん、きっと、僕は大器晩成型……のはず。


 でも身長の伸びを犠牲にしたそのお陰で、僕の魔力量も、ここに来た当初より三割程増えた。

 短期間での効率の良い魔力量増のためには、魔力切れを起こす直前くらいまで使いきるといいって、王都に居た頃聞いたことがあったんだけど、これほど効果的とは思わなかったな。

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