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 とまあ。

 出陣の場面で前世の記憶を取り戻した僕だけれど、僕自身が今すぐ戦場に向かう訳ではない。


 僕の職業(ジョブ)人形使い(ドールマスター)()()()()()()

 人形使い(ドールマスター)とは自らの魔力を用いて造り上げた魔人形を意のままに操り、敵を斃し、味方を援護する支援職だ。魔術師と違い、(あいだ)に魔人形を介することで魔力を発動できるようになる。事前に原料に魔力を込めて魔人形には魔法回路を描いておくことで同時に複数の魔人形を運用できるのだ。

 とは言っても裏方縁の下の力持ち的支援職なので軍での評価はとおっても低い。

 世間の評価も同じく低い。つまりお給料は安く社会的地位も低い。

 同じ術師系職種でも強力な攻撃魔法を持つ魔術師や、貴重で稀少な回復魔法の使い手である聖職者、異世界から強大な魔力を持つ召喚獣を呼び寄せる召喚師なんかは貴族に準ずる扱いを受けるにもかかわらず、だ。

 同じ魔法職なら攻撃系の魔法騎士とか魔法剣士とか魔術師が格好いいし。


 僕も前世、このゲームで遊んでいたときには確かに人形使い(ドールマスター)なんて使ったことなかったもんね。

 理由は色々あったけど、やっぱり一番はビジュアルだ。ゲームでの人形使い(ドールマスター)は、真ん中分けにした長髪(ストレートヘア)を項でひと括りにして長ーいローブをずるりと引き摺ったしかめっ面の、まあ若いのかな?って男だった。

 それに魔人形(ゴーレム)のビジュアルも酷かった。魔人形(ゴーレム)には他に石魔人形(ストーンゴーレム)鋼魔人形(アイアンゴーレム)種類(バリエーション)があるのにゲーム上でのビジュアルはワンパターンだけ。

 制作側も人気の無さを予想していたんだな。


 しかも人形使い(ドールマスター)には上位(ジョブ)が無い。

 (ジョブ)ってのはこのゲーム内の人間(ヒューマン)の職業で、経験値を貯めてレベルアップすることで上位職に就ける。(ジョブ)によっては条件が厳しかったり、レアアイテムを入手する必要があったりするが、人形使い(ドールマスター)は男キャラの基本職、戦士(ファイター)()()()()()()()()というそこそこレアなアイテムを使用することでなれるのだが、その上位職が無い。


 上位職にならない限りどれだけレベルアップを繰り返しても、能力値も攻撃力も劇的に伸びることはないのだ。

 ゲームだと詰む。

 だって、戦略シミュレーションゲーム部分で自軍として使用できるユニット数は、難易度とか進行度にもよるんだけれど、最大三十六ユニット。

 一ユニットに最大四体のキャラクターがセット出来るんだけど、人形使い(ドールマスター)魔人形(ゴーレム)と常にセットで使うようになる。

 だって物理攻撃オンリー(しかも単体攻撃)の魔人形(ゴーレム)はユニット内に人形使い(ドールマスター)が居れば物理攻撃、対象は全体、しかもスタンとか混乱とかの状態異常効果とか、クリティカルヒットで与えるダメージが二~五倍にアップする。

 一方人形使い(ドールマスター)の方は魔人形(ゴーレム)への支援魔法しか使わない、というかそもそも支援魔法以外のスキルが無いんだよね、ゲームの中の世界だと。

 支援魔法ってのは身体強化とか、武器防具への属性付与が主で、あ、属性付与ってのはただの剣に火属性を付与して炎の剣(ファイヤーソード)、鎧に氷属性を付与して氷の鎧(アイスメイル)、とかってヤツね。あとは敵ユニットに防御ダウンとか素早さダウンとかの弱体化の魔法もあるけど、こっちは自分と敵との魔力差とか運とかいろんなモノに左右されて成功率が低くて使いモンにならない、とWebでも酷評されていたっけ。


 もちろん現実にはそんな馬鹿な制約なんか無い。

 この世界、人間をはじめ動物植物鉱物ありとあらゆる存在が魔力を持っている。その属性や量は種族や個人によって差があるんだけどね。

 でもやっぱり、魔術師や魔法騎士、魔法剣士、召喚師といった攻撃魔法の使い手達は総じて魔力量が多い。直接魔法を使わない重装騎士や軽騎士、弓兵といった戦闘職も魔力は多めらしい。

 魔力が多ければかけられた魔法の効果が大きい。

 回復系の魔法も効き目がいいし、属性付与された武器防具の使用効果も高いという。

 軍としては出来るだけ魔力量の多い兵士を揃えたい思惑があってか、魔力の高い子供の元には身分にかかわらず──貴族の子弟か平民、孤児遺児浮浪児問わず平等に、まあ親の無い子供は問答無用で──軍関係者がリクルートに来るのはそんな理由からだそう。


 僕?

 人形使い(ドールマスター)()()()って名乗ってる時点で察してほしい。

 軍がリクルートに来ることはなかった。一般的な平均値よりほんのちょっぴり多いくらい。ただ一度に使える量が全体量の四分の一以下なので(それを超えると魔力欠乏症という症状を引き起こす。場合によっては命にかかわる危険な状態である)戦場でリアルタイムに魔力を消耗する戦闘職よりは後方支援の方に適性があるだろう、と五歳の時受けた魔力鑑定で言われた。僕は覚えていないけれど。

 ナニこのそこはかと無くぷんぷん漂う残念な雑魚臭は?

 異世界転生と言えば前世の知識と転生特典チートてんこ盛りで人生楽勝イージーモードってのがお約束なのでは?なんか解せぬ。

 解せぬがまあ、それでも幼い僕は養父でもあった師匠に弟子入り、現在に至るというわけだ。

 今んとこ僕に作れる魔人形(ゴーレム)のサイズは三十センチ。一度に同時に動かすことができるのは三体。()()ではないよ、()()()だけ。しかも三体同じ動きしかできない。

 今だって、右足上げて下ろして、はい、次左足上げて下ろし、アレなんで進まないかなぁ、これじゃ足踏みだよ?僕は縦列行進って命令してるのにぃ!

 何でだろう、どこが悪いのかな?教えて、ねぇししょおー!


 このレベルではさすがに徴兵対象にならない。まぁまだ十二歳だからね?ちなみにこの世界、十五歳が成人年齢だ。


 ただ──ただ。

 子供だから徴兵されないから戦闘職ではないから。この身が安全かというとそうでもない。

 ゲームスタート時に強制的に参戦する戦いの結果次第では、この国がトンデモナイ事態に陥るからなんだ。

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