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プロローグ

 「本当にすみませんでしたっ!」

広く周りの景色がぼんやりとした空間の中、場に似合わないはっきりとした声が響いた。

 

 目の前のいかにも美女という感じの女神みたいな衣装をまとった女性が俺の眼前で土下座している。

「うん、なんでこうなった!?」と言いたかったが真面目な謝罪をしている?人の前でするのも憚られたので心の中で叫ぶことにする。


 「わたしのせいでぇっ」

女神様みたいなひとの綺麗なお顔が涙やら鼻水やらで残念なことになっている。


 一部の界隈からするとこの顔に癖を感じる人もいるのかもしれないがそんな癖を感じる余裕も開花させる余裕もなくこの俺、遠江叶(とうとうみかなえ)は少し前の出来事に思いを馳せることにした。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 俺は生まれてからというものの女性関係の問題に巻き込まれることが多かった。


 母親からは父親がいるにも関わらず結婚迫られたり、小中学校時代はショタ好きのお姉さん方にさらわれそうになったり、今通っている高校では学校の女子たちから集団で襲われたそうになったり(詳細はきかないでくれ、、、)と他にも数えたらキリのないほどだ。


 こう言うと世の男たちから反感をいただくが、どうやら俺は女性から好かれやすい?らしい。


 事実クラスの男子からはそう見えるらしく常に俺への風当たりは強かった。


 今までは嫌がらせの範疇で済んでいた。今日までは。


 「おいちょっと面かせよ」とどこの二次元だよと言いたくなるような売り文句が教室に響いた。


 誰だろうか、そんなテンプレ売り文句を言われてるやつは。

「おい聞いてんのかよ!」

再度同じやつの声が響く。

ほら、名前をちゃんと呼んでやらないと誰に言ってるのか伝わってないんじゃないか?

たとえそいつが俺の顔を覗き込んでいても名前を呼んでないから俺じゃないかもしれない。


 「お前だよ!くそとうみ!」

我慢の限界かそいつは俺の胸ぐらを掴んでくる。

、、、あぁたしかこの人はモブAさん、俺の数少ない男子のクラスメイトの情報から引っ張り出してくる。

もちろんモブAなんて名前ではない、、、はず。

男子からの風当たりが強い俺はクラス男子の情報などほとんどないに等しい。


 「なんでしょうか?」

俺は心からの笑顔をモブAにむける。自分でもわかるほど引き攣っているけど。

口調には出てないが流石に面倒事に巻き込まれたという心情は顔に出てしまっていたようだ。


 そんなことはつゆ知らずモブAは続ける。

「俺の彼女をたぶらかすとはどういうつもりだ?」


 (しらねぇよぉ〜)

流石に口にはできないが内心はそんな気持ちでいっぱいだ。

そう思いつつも記憶を探ってみる。


 (そういえばモブAとつきあってるやつにこの前告白されたっけ?)

確かにモブAと付き合ってるやつから告白されたが俺は断じてたぶらかしてなどいない!

俺にNTRの趣味はない!


 「確かに告白されたけどたぶらかしたりはしてないよ。」

俺は真実を語ることにする。


 「嘘つけ!あいつが俺を見捨てるわけないだろ!」

と言っているがこちらからしたら見捨てられてるから俺に告白してるのではと思うがそんなことを言葉にするわけにもいかず口をつぐんでしまう。


 それをたぶらかしたという事実に言い訳ができないでいると捉えたのかモブAはおもいっきり後ろへと押し飛ばした。


 俺はいきなりの出来事に足を踏ん張ることもできずそのままうしろに()()()


 景色が一転、どんよりと暗い雲が視界に広がった。

(今の心情みたいだな)と状況がいまだに理解できず現実逃避じみた考えをする。


 直後頭部に衝撃がはしった、、、気がした。

どうやら学校の4階から落ちたみたいだ。


 直後クラスから悲鳴が聞こえてくる。

走馬灯などは流れて来ず、ただただ自分の身体から温度が失われていくのを感じる。


 ひどい人生だったと思いつつ目を閉じる。


 こうして遠江叶は死んだ、、、はずだった。





 「、、、、、、、、、」

「、、、、、、、、、」

「、、、、あのぉ。」

「、、、、、、、、、」

「、、、あの、すみません、、、」

「、、、、、、、、、」

「、、あのっ!すみません!」

「んっ?うーん?」

誰かから声をかけられた?

確か俺死んだんじゃなかったか、、、


 身体がかったるい気がする。背中に当たる感触は、、、なんかの植物か?足にも同じような感覚があることから靴を履いていないことがわかる。頭に当たる感触は、、、柔らかい。


 そんなことを考えながら目を開ける。


 そこにあったのは、、、心配そうな表情を浮かべた美女だった。俺はどうやらこの美女に膝枕をされているようだ。


 水色と紫のグラデーションがかかったような瞳、白から中程で青空のような綺麗な青が先に向かってうっすらと浮かぶ髪。人だったらありえない容姿に

「綺麗だ、、、」


 そう呟いていた。

「、、、、えっ!?」

一拍たって言葉の意味を理解したのか、驚いたような声をあげ頬を朱に染める。

そしてすごい勢いで立ち上がった。


 ゴンッと聞こえてきそうな勢いで俺の頭は地面に叩きつけられた。


 「痛っつ!」

頭にはしった唐突な衝撃に夢うつつとした気分から一気に現実へと引き上げられる。


 俺は頭をさすりながら周りを見渡す。

霧がかかった草原のような場所、だが割に暗くはない。(不思議な場所だな。)

そう思いながら先の人物へと目を向けた。


 「そんなぁ〜、綺麗だなんて、えへヘヘぇ〜」

俺の頭の痛みなどつゆ知らず、思いっきり顔を緩ませ、股をモジモジさせて両手で頰を覆っていやんいやんしている。

先程の美しさなどは微塵も感じずもはや別人だと思ってしまうレベルだ、、、


 こいつ二重人格なのでは、と心の中で思っていると、彼女と目があった。


 ビシッと固まり瞳からハイライトが消える。どうやらとんでもなく引いて冷たい目を向けていたようで顔を先程とはちがう赤で染めると、コホンとひとつ。


 「はじめまして、私は女神のマリアーヌです。マリアとお呼びください。」


 いやいや、流石に無理があるって、羞恥で顔が真っ赤だもん。てかサラッと女神とかいった?いや確かに綺麗なのは認めるけど自分で女神とか言っちゃう?

(最近の美女はみんなこうなのだろうか?)

「違います!本当に女神なんです!」

「こいつ俺の心を読んできやがった!?」

なんとこの美女はエスパーだったらしい!


 「とりあえずそのことは置いといて、この状況の説明を願いたいのだが。」

「置いておかないでください!いやまぁ置いておいた方がこの場合いいのですが、貴方に指揮をとられるのはなんだか不服です。」

女神が何かブツブツいっている。

俺のジト目がとんだ。

女神がビクッとした。


 「、、、わかりました、説明しますからその目を私に向けないでください。」

はぁーとため息混じりの息をついて女神が話し出した。


 「最初に一つあなたは死にました。」

おそらくそうだと思っていたがこうもストレートにいわれると逆に実感がなくなるな、、、


 「そして。申し訳ありませんでしたー!」 

女神が思いっきり土下座した。

女神なのに土下座って、その勢いで頭をぶつけてプルプルしているのって、、、神の威厳はもう息をしていない。

説明してくれるんじゃないの?死にました宣言からの土下座、それは説明というのだろうか、、、

またジトればいいのだろうか。


 「あの、説明はどうなったんですか?」

女神は頭をぶつけた痛みでまだプルプルしている。俺の声なんて聞こえていないようだ。

俺のジト目がとんだ。今度は女神に効かなかったようだ。


 なんなのこの女神、頼むからもうちょっとちゃんとしてくれよ、、、

そう思いながら女神のほっぺに手を伸ばす。

もちろん慰めのために頬を撫でるためではない。イケメンなら喜ばれるかもしれないが、こんなインキャぼっちの俺にやられても嫌がられるだけだろう。なのでとりあえずほっぺを引っ張る。


 「いひゃい!なにしゅるんへすか!あの、いひゃい、いひゃいのえやめへくらひゃい!」

うん、何をいっているのかわからない。なので続けることにする。


それから数分した後流石に可哀想だとおもったので辞めました。

すげ〜モチモチだったーもう少しモチモチしていたかっ、、、いやなんでもないです。

女神の激しいジト目が俺の精神をゴリゴリとけずっている。

いや、本当にごめんね、、、


 「先程は取り乱してしまい申し訳ありませんでした。今度こそしっかり説明させていただきます。」

女神様は一拍、二拍と間を空け真実を紡ぐ


 「実は貴方の好感度というか、惹かれやすさというかそういうものの設定を間違えて設定してしまって、、、」

(心当たりはある、異常な程度には女子がらみのトラブルにまきこまれていた)


 女神様がいうにはこの世に生まれてくる全ての生命は色々な能力が平等に振り分けられて生まれてくるらしく、今回の俺に当てはまる性別による好感度を例とすると、男子が1、女子が1というふうに決められているらしいのだが、俺は男子がマイナス1、女子が3というまぁ微妙な感じになっていたらしい。

いやマイナス1って比率として存在するのかよ、、、


 「というわけで、状況の説明はこのようなかんじです。」

「いや、このような感じと言われましても、、、」

このまま間違えました、ごめんなさいで終わられてもこんなしょうもない人生とか死に方で終わるのも困るんだけど、

 俺がそんなふうに考えをめぐらせていると

「そこでしょうもない死に方をしてしまった貴方に2つ選択肢を用意しました。」

「1つこのままもう一度違う世界で生まれた変わって2度目の人生をおくる。」

いわゆる異世界転生というやつだろうか、中学生ぐらいのときによく夢想したものだ、かなりこの選択肢は俺の中では好感触だが、もう一つの方はどうだろう。


 「もう一つの選択肢はこの身を貴方に捧げて、、」

「一つ目の方でお願いします。」

「即答ですか!ってまだ話終わってないじゃないですか!」

「いや、私の全てをあげます的なやつでしょ、そんな不純な同期で全てを捧げてられても困るんですけど、、、」

「私的にその返答の方がありがたいんですけど即答って、」

なんか女神様が落ち込んでいるがこれでいいんだ。


 「それではこれから行ってもらう世界について説明させていただきますね。」

頬をぱちん、仕切りなおし話を始める。

 「貴方には魔法の世界にいってもらいます。」

なるほどこれまたテンプレというわけか、だがテンプレなら剣と魔法の世界というとおもったが、剣なら元いた世界にもあるから省いたのだろうか?


 「この世界には様々な種族がいまして、人間族はもちろん、魔族やエルフ、獣人族などが存在しています。」

「人間族と魔族は対立しあっていて時たま戦争を行っていますがどちらも攻めきれていないという状況です。」

「エルフは基本的に集団でかたまり森の集落から出て来ません。」

「獣人族は人間族と魔族の中立的存在でどちらとも友好的に関わり合っています。」


 等々種族に始まり、大まかな地理や他にも色々と説明してくれた。どうやら化学などはあまり発達していないようで、近代的というよりかはどちらかというと中世によっているようだ。


 「このぐらいの説明で大丈夫でしょうか?」

「ああ、ありがとう女神様」

「名前、マリアでいいと言ったじゃないですか」

「、、、ありがとうマリアさん」

「さん?」

勘弁してくれ!ただでさえ女性の名前呼びも慣れていないというのにいきなり呼び捨てとかキツいって!


 「んー、今後の課題ですね」

マリアさんが何か言っているが無視だ無視


 「とりあえずひと段落したので、異世界へと送ろうと思うのですがよろしいですか?」

「はい、よろしくお願いします」

いざ異世界転生となると緊張するな。

よく考えたら転生したらまずは1人か?よくわからないところだと心細いな。

「異世界に行かれる前に一つ、私とお友達になってくれませんか?」

急だな、タイミングも少し、、、いや心ぼそいと感じていた俺のことを気遣ってくれたのだろうか。そうだとしたら感謝しなければ。

「ありがとう、ぜひよろしくお願いします」

女神様はニコッと女神スマイルをした。そして

「それでは始めますね。」

いよいよなようだ、第二の人生精一杯楽しむとしよう。

「新たな人生が素晴らしいものでありますように。」

しだいに薄れてゆく意識、死んだ時と似たような浮遊するような感覚。それでも死んだ時と違いどこか暖かく、どこか穏やかな気持ちになるような心地、そんななか新しく始まる人生に想いを馳せながらまどろむ意識に身をゆだねるのだった。

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