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異世界事情

 …なんていうか異世界舐めてたわ。まずいきなり一晩家に泊まらせてもらえたのは運がよかったと言えるだろう。だけどあくまでもそれだけだった。ユニの家で出された食事は俺の渡した塩コショウがあったからましだったものの、うまいものではなかった。パンは硬いし肉も硬い、スープにいたっては塩コショウの味しかしなかった。まあこれだけ硬い物を食べているからかユニの家族はとてもパワフルな感じがしたが。


 で、風呂がない。どうやら水に浸した布で体をぬぐうだけ。ユニに聞いてみると貴族や裕福な商人などの家にはあるかもしれないとのこと。平民では管理しきれない金額だそうだ。さらに布団もユニの家にはなかった。布を引いて床で寝るだけ。藁とかの上に布を引いてもいいんだそうだが、チクチクするし虫が湧くので頻繁に取り替えられないと使えないという理由で布だけなんだそうだよ! つまり…


「あ゛ぁ゛~…バキバキいう」


 一晩寝ただけなのに体中が痛くなるわけ。腰を叩いたり腕や足の曲げ伸ばし首を左右に振って体の調子を整えていると、横で気持ちよさそうに寝ているユニが起き上がる。そう…寝るのも所謂雑魚寝ってやつね。


「天使様…早いでふね…ふぁ~」


 早く置きたくて起きたんじゃなくて体が痛くて寝てられなかったんだよっ まあ折角寝る場所を用意してくれたんだからそんな文句は言わないが…


「そういえば天使様の今日のご予定は?」

「海」

「カイ様」


 予定か~…特に何かやれとも言われずこの世界に送られたからな。何もないと言えばないが、ひとまず色々と知っておかないとそのうち大ポカやらかしそうで怖いんだよな。


「まずはこの村を見て回ろうかなと」

「でしたら天使様の守り人である僕の出番ですね! 任せてくださいっ」


 ちょっと待て。今なんか変な言葉が出なかった?


「なんだって?」

「言っていませんでしたね。僕天使様の守り人ナンバー5なんですよ!」

「…んん?」

「はぁ~ 朝から騒がしいったりゃありゃしない…まだ日が明けたばかりじゃないかい」


 ユニの謎の言葉とともにさらにその隣で寝ていたユニの母が起き上がる。薄暗い室内なので気がつかなかったが、扉の隙間から日が差し込んでいた。ちなみに窓はガラスなどではなく木で出来ているので閉じているとほぼ室内は真っ暗になる。


「カイさんあまりこの子の言うこと真に受けないようにね? なんかね天使様の守り人とかいう変な集まりに参加してるみたいなのよ」

「変って酷いよ母さん。ただ僕たちは天使様について語ったり、いつか現れる天使様を守るために活動しているだけなのに~ そしてこうやって天使様は現れた!」


 いや…目をキラキラさせてこっちに手を差し出されても俺天使じゃないし。まああれか結局天使様って言うのが何者なのかはっきりはしていないが(一般的に言われる天使かどうかわからないという意味)、天使オタクによるファンクラブてきなやつかなと俺は解釈した。そんなもんの対象にされるのは困るが、何気に色々と教えてもらえるし今のところは勝手に勘違いさせておけばいいと思う。


「あーはいはい…食事の用意始めるから顔でも洗っておいで」

「はーい」


 ユニに連れられ家の外の水瓶から水をすくい一緒に顔を洗った。寒い季節でなくてよかったと思ったよ。この世界の季節がどうなっているかわからないが、今は比較的快適な気温をしているからね。


「では天使様行きましょうか!」


 朝の食事を終えユニとともに今家の外にいる。どうやら村の案内はちゃんとやってくれるみたいだね。ちょっと変な子だけど親切だしいい子だよな。


「ではまずここが僕の家です~」

「ああうん…」


 そこからかよ。


 ユニの案内でそれぞれの家や畑などを紹介される。どうやらこの村には店のようなものは何もない感じで、民家と畑しかなかった。だから見るところも少なくあっという間に終わったわけで…


「なあ店とかないみたいだけど食べ物もだけど他のものとかどうしてるんだ?」


 そう俺はそれがちょっと気になったんだ。店がないってことは野菜はまだ畑があるからいい、他のものはどうしているのか。服とかも自分たちで作っているのかもしれないけど、それにしたって布がないと作れない。だけどユニの家にはその布を作るための道具は何もない。だとすると各家庭で作っているのではなく、どこかで作っているか店があってもおかしくないのだ。


「えーとですね。定期的に商人が売りに来るんですよ天使様」

「海な」

「それとですねここから西の方にある港町に自分たちで買いに行くこともありますよカイ様」


 港町か。そういえばこの世界にやって来て屋根の上から遠くに海のようなものが見えていた。なるほどね。だったら次はそこに行ってこの世界で過ごすための資金稼ぎをした方がよさそうだな。いつまでもユニの家にやっかいになるわけにもいかないし。


「なあユニ、港町へ行けば俺でも何か仕事出来るものあるかな?」

「え! 働くのですか天使様!?」

「流石に無一文じゃ過ごせないだろう?」

「確かに…! 言われてみれば天使さ…カイ様はその身一つでこの地へやって来たんでしたっ 仕事…カイ様は何が出来るんですか??」


 俺に出来ること…何が出来るんだ? 元一般学生に。

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