第8話:住人が見当たらない
軽トラを追いダミ子たちはその先に見えたナマケモノの町に入ることにした。
「これが、ナマケモノの町?」
「人間たちが住む町と全く同じじゃないですか」
驚いたことに、ナマケモノの町は人間の住む町そのものだった。
まず家が建っている。
木製の家が並び、そのなかには丸太を使ったログハウス的なものもある。立派な煙突付き。
町の奥にある広い畑にはこの時期に採れる野菜がたくさん実り、その隣には彩り豊か果物が実をぶら下げていた。なんなら田んぼもあった。水路がちゃんと引かれている。
「ナマケモノの町はちゃんと町だった」
「なんですかその語彙力のない説明は」
「いや、ナマケモノって凄ぇんだなって」
ここが人間の町だと言っても信じられる程の出来だった。
ただ一つだけ気になる点があった。
「なんか、物凄く静かなんだけど」
「外に誰もいない……誰も家からも出てきませんね」
まだ明るいというのに広い町には誰一人いない。物音も一切なく町は静まり返っている。
「まあナマケモノだから昼間っからウロウロしないか」
「いやでも静かすぎません? 生きものの気配がしないっていうか、これ誰も住んでないんじゃないですか?」
「さっき軽トラ運転してた奴いたじゃんか。それに空き家ならもっと家はボロくなるし畑の作物だってこんなたわわに実りっぱなしにならないだろ」
たしかに住民の生活音が聞こえない。
しかしダミ子はこの町の家が空き家とは思えなかった。
空き家にしては住んでいた者たちの温もりが多すぎる。そう、ついこないだまでここで生活していたような。
「おやお客さんかい」
声をかけてきたのは先ほど軽トラを運転していたナマケモノだった。
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