第14話:貴方の温もりを感じて
アジトから脱出した時には夕陽が沈みかかっていた。
救出したナマケモノたちを連れノロノロと橙色に染まる道を歩く。
目指す先は待ち合わせ場所。長老の軽トラ待機場所だ。
「あと、もう少し、ですね」
絶賛息切れ中のマースが呟く。彼は眠ったナマケモノを三匹背負っている。
「長老はちゃんと待ってるだろうか」
忘れて一匹村に帰ってないだろうな。
ダミ子の心配は杞憂に終わった。
向こうに軽トラのシルエットが見える。
軽トラの主はダミ子たちに気づいたのかクラクションを鳴らしこちらまで走ってきた。
「おーいみんな無事かぁ~?」
「村長さん! 無事救出しました!」
「一応全員いるか確認してくれ。私たちじゃ区別がつかん」
ひい、ふう、と長老は住人たちを数える。
「おぉ~全員いるな! よかったよかったぁ~」
安堵のため息を溢す。
ミッションは成功したらしい。
「本当にありがとなぁ。後はワシが村まで運ぶ。乗ってけぇ」
長老はトラックの荷台の方を指差す。
「じゃあお言葉に甘えて」
ダミ子が荷台に乗ろうとすると目の前を横切る残像が目に入った。
ナマケモノたちだ。
住人たちは物凄い速度で荷台に我先と乗っていく。
ナマケモノたちは狂暴さを剥き出しに誰が先に乗るかで喧嘩をしていた。「シャアッ!!」だの「キャシャアッ!!」だの鋭い爪で互いを威嚇しあう姿はすさまじい攻撃性を感じる。
「……あんたたち、盗賊に勝てたんじゃん」
「なまけることに全力の種族なんですね……」
二人は清らかな塩辛い涙を流した。
「さぁー帰ろ~い」
全員が無事荷台に乗ったのを確認するとトラックがエンジンを蒸かす。
ブルルル……と車体が上下に小さく振動すると、トラックはのんびりとした速度で走り出した。
ナマケモノたちはぎゅうぎゅう詰めで全員乗った。
結局最後に荷台に乗ったダミ子とマースくんはトラックの縁に腰かけ足だけを外へ出す姿勢で乗車した。
宙に浮く足をぶらつかせる。
夕陽が出ていた。
道端の草も木もみんなオレンジに染まっている。橙色の光がのどかな歩道を照らしていた。
ダミ子はトラックの中でボーっと座っているナマケモノたちを見る。
ナマケモノ(大量)と軽トラに乗車する経験なんて滅多にない……ていうかシュールすぎる。
「確認だが一名足りないなんてことないよな」
「なに突然不安になってるんですか」
「だって奴らみんな同じ顔じゃん。長老のことだから大丈夫だろうけど長老だからイマイチ安心できないというか」
「村の人たちが見れば一発ですよ。長老さんが一番よくわかってますよ信じましょう」
「やっぱ同じ種族だと見分けがつくのかな」
「ダミ子さんだって薬草の種類を瞬時に見分けられるじゃないですか。僕には全部同じに見えますよ」
「そんなもんかね」
「そんなもんです」
小刻みに揺れるトラックの荷台は絶妙に眠気を催してくる。
ダミ子はうつらうつらと船を漕いだ。
身体が前に倒れそうになるとマースがダミ子の肩を抱いて自分の方へ引き寄せた。
「落ちたら危ないですよ」
「あぁ、ありがとう」
ダミ子はお礼を言うと隣に座るマースに少しだけ半身を預けた。
「だ、ダミ子さん?」
「着いたら起こしてくれ。疲れた」
マースに寄りかかるようにしてダミ子はそのまま眠りに落ちていった。
ゴトゴトゴト。
軽トラはゆっくり走っていく。
この調子だと村に到着するのは夜の帳が降りてからだろうか。
マースは一人沈む夕陽を見つめていた。
ダミ子もナマケモノたちも今日の疲れでみんな眠ってしまっていた。
濃い橙色の夕陽は夜の闇へ堕ちていく。静かに侵食される景色は、まるで世界の終焉のように見えた。
「……」
隣を見ればミルクティー色の小さな頭。ウェーブのかかった髪は夕陽を浴びて艶々と輝いている。
左側にかかる微かな重みにマースの心臓が淡く高鳴った。
(しばらく着かなくてもいいや)
そんなことを思いながらゆっくり進む軽トラは橙色の道を後にした。
お疲れ様です。
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