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第2話 触らぬ神に祟りなしだよねと言った

 弥生と麗華は馬車に乗せられ、領主の屋敷へと案内(連行)された。

 領主と言うからお城を想像していたが普通の御屋敷であった。いや、規模は普通では無いんだが。


「ようこそいらっしゃいました、ミレシア族の聖女様。わたしがメカラーラ領主のツヴェルト・ラフタール、それからこちらにいるのが市長のカッシェル・ヤーガーです。」


「どうかお見知りおきを。」


 領主のツヴェルトはダークエルフ族(レハラントのみで使われる呼称。レハラントではエルフとダークエルフを区別するが、国際的には同種族でルナット族と呼ぶのが一般的。尚、作中では便宜上“闇ルナット”とさせていただく)の初老男性。

 市長のカッシェルはインセクト族(レハラントのみで使われる呼称。国際的にはパラビュサス族と呼ぶのが一般的)の男性だ。

 パラビュサス族は1セルベ(メートル法換算2メートル)を超える巨体の甲虫の様な種族で、複眼と四本の腕、四本の脚を持つ。四本の腕のうち、上部一対は大きな鋏、下部一対は3本の指を持つ。色や頭部の角の形に個体差があるのだが、弥生と麗華には牛頭族(レハラントのみで使われる呼称。国際的にはシャーハット族と呼ぶのが一般的)並みに見分けがつかない。「お見知りおき」と言われても、街中で会っても分からないだろう。


「対魔王召喚者にお会いできるとは実に光栄でありますなぁ、ツヴェルト様。それが例え“あの”レハラントの召喚者であっても。」


 う…、嫌な感じ…。しょうがないけど…。弥生は縮こまる。


「市長、失礼ですよ。ところで…。」


 ツヴェルトはカッシェルを諫めて、弥生たちに向き直る。


「レハラントの魔王討伐団は現在、魔王の拠点に向かっている最中…という話を耳にしておりますが?」


「はい…その通りです。」


「お二人は何故メカラーラにおられるのでしょう?」


「ええと、その、わたし達、レハラントでは皆さんの事を魔族って教わっていて…でも、魔王討伐でレハラントの外に出たら何か教わってたのと違うんじゃないかって感じて…。

 そしたら“猟奇姫”に実はみんな同じ人類って教えて貰って、レハラントに嘘を教えられてたって分かって…。」


「りょ、“猟奇姫”!? あのジアッラ・テレーザ・シャマルに会ったのか!?」


 カッシェルが驚く。


「は、はい。」


「そんでレハラントの奴らムカつくから討伐団から脱走してやった!」


「…。

 あっははははっ!」


 麗華の一言にツヴァルトとカッシェルは一瞬ポカンとした後、大笑いした。


「なるほど、事情は分かりました。つまりあなた方はレハラントで言うところの“ヘテロ族”になった訳だ!

 しかしですね、魔王討伐は人類にとって重要な事なのですよ? わたし達にしてみれば討伐されるのであれば、討伐者がミレシア族召喚者、つまりレハラントの討伐団でも一向に構わないのです。」


「魔王討伐が重要なのは分かっています。でも、討伐団のリーダーの人は召喚された最初の頃とは人が変わっちゃっていて、“猟奇姫”に『レハラントに毒された』と言われていました。

 自分もこのままレハラントに付いていては洗脳されちゃんじゃないかって…。」


「…ふむ…。そのお気持ち、理解できます。

 それで、当市には何か目的があって参られたのですか?」


「あ、それは偶々なんです。わたし達、レハラント以外の事は詳しく教わっていなくて、適当に飛んでいたらここに着いただけで…。」


「飛んで?」


「あ、はい。実はわたし念動ギフトを持っていて、<飛行>魔法が使えるんです。」


「おお、それは素晴らしい♪ 私どもは熱気球で浮かぶか、飛翼獣の背に乗らなければ空を飛ぶなど叶いません。魔法の力を使って自分の身体一つで自在に空を舞い飛ぶというのは、幼い頃に夢見たものですよ。」


 ツヴァルトは瞳をキラキラさせながら語る。


「今日の所はとにかく一度御挨拶せねばと思い、準備も無くお呼びしましたが、是非お食事などをご一緒したいと思っております。いつまで当市に御滞在を予定しておられますかな?」


「行き当たりばったりだから予定ナシ!」


 麗華が元気良く答えた。


「ははは、では是非ゆっくり観光などお楽しみください。当市は穏やかで美しい海と獲れたての海の幸を観光の売りにしておりますから。」


 弥生と麗華はそう言われて屋敷から解放された。

 二人が出て行った部屋の中ではツヴァルトが側近に指示を出していた。


「魔法局長。」


「はっ。」


「魔法士協会に掛け合ってあの二人の魔法士免許を当市交付という事にして再交付出来ないかね?」


「! ツヴァルト様、それは…。」


 カッシェルは異を唱えようとしたが、ツヴァルトはそれを手で制した。


「御存知の通り、魔法士協会は国際魔法士連盟の出先機関で事実上の治外法権に近いですから、掛け合っても聞いてくれるかどうかは何とも…。」


「そうか・・。」


「ツヴァルト様、まさかあの者らを匿うおつもりですか? 現在、レルシェンとレハラントはレハラントの魔王討伐団の狼藉が原因で戦争になっております。もし、その討伐団に参加していた者、それも中心人物である聖女を匿ったと露見すれば外交問題になりますぞ。」


 カッシェルがツヴァルトに意見を申し出た。


「私の見立てでは、あの戦争はすぐに決着が着く。レハラントに勝ち目は無い。

 それよりだ…あの二人は“猟奇姫”と接点を持っている。“猟奇姫”が二人の事をどう思っているのかは分からんが、気に入られているという可能性が僅かでもある以上は…。」


「ある以上は…?」


 ゴクリ…、とカッシェルは唾を飲み込む。


「邪険に扱って機嫌を損ねたら怖いじゃないか! “猟奇姫”は邪魔者や敵対者に対しては躊躇一切無しで苛烈! 非情! 残虐! そして猟奇! 外交問題など可愛いもんだ…。」


「怖いですね。」


「幸い彼女たちは偶々ここへ来ただけで目的は無い。冒険者になろうとしたのも当面の生活費や旅費稼ぎだろう。思惑が無いのであれば、こちらからの関与を極力避けつつ、避けられなければ最上級の持て成しを。そして、さっさと立ち去ってくれる様に必要そうな物があればくれてやった方がいい。」


「そうですね。触らぬ神に祟りなしという方向で対応しましょう…。」


「だって怖いじゃん。脳ミソ飛ばされたくないじゃん。」


「わたしもです…。」


 さて、そんな腫れ物扱いされている弥生と麗華は、クアドとアリーヤと共に馬車で冒険者組合へと戻っているのだが、その馬車が急停車する。


「どうした?」


「女の子が突然飛び出して来て…。」


「女の子? 誰もいないじゃないか。」


「あれ? いえ、でも確かに居たんですよ。」


 クアドが御者と押し問答を始めた時、彼女は突然現れた。


「わたしである!」


 クアドが立ち上がって空いた席の上に、彼女は威風堂々と立っていた。

 無着衣文化を踏襲する全裸の幼女。

 身長7/10セルベ(140センチメートル)。黒髪パッツン姫カットショート。鋭いが凛々しくもある目つきに黄色い瞳。体型こそお子様体型だが、稀に見る美幼女。

 乳首にピアス。腰回りにはピンクのSMボンテージ調のハーネスを着けているが、陰部は丸見え。鋲の付いたパンク調ブーツ。婚姻者を示す首輪とクリトリスのピアスも付けている。


「“猟奇姫”…さん?…様?」


「わ~い! “猟奇姫”さんだよ~!」


 呆気に取られる弥生とは対照的に麗華は“猟奇姫”こと、ジアッラに飛びつき抱き付いた。弥生の全身の毛が恐怖に逆立つ。

 死んだ…と弥生は覚悟を決めた。


「キャハハ! でっかいワンコみたいで可愛いな、こいつ!」


 ジアッラは麗華の髪をワシャワシャしながらじゃれ始める。


 あ…そうなんだ。いいんだ。


 弥生は胸を撫で下ろすが、他の者はそうはいかない。


「りょ、りょ、りょ、“猟奇…姫”…だって?」


 クアドとアリーヤは顔面が蒼白、御者は失神して倒れた。


「この二人を借り受けるぞ。いいな?」


「ははははは、はいぃ。どどどど、どうぞ。」


 クアドとアリーヤは震える声で了承した。


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