赤ダンを手にした日
着替えを終えたアイナとエイミーがトレーニングルームに入ると多くのAU達が鍛錬をしていた。AU達の多くが男性だ。大きく重い武器や防具を軽々と扱うには鍛錬が必要なのだ。
(な…、何なのこの人達…。大きな身体を激しく動かしてる…。しかも汗が飛び散ってるよ…。うち…、何か入るとこ間違えたような気が…。)
AU達が大きな筋肉を激しく動かし、更に飛び散る汗を見てアイナの顔が青ざめた。その一方でエイミーは…。
「見て、皆の精悍な身体。まるでゴーレムみたいで惚れ惚れするわ!」
何とAU達の筋肉に恍惚としていたのだ。
(あー…、今時の女ってこんなむさ苦しいのが好みなのかい…。)
エイミーの妙とも取れる趣味にアイナは更に難色を示した。そんな中、一人の精悍な身体のブリジット族の女性がやって来た。
「こんにちは、エイミー。ふふっ…、今日はブリジット族のお友達を連れて来たのね。」
「はい…、同じアカデミーの者同士偶然出会いました。何でもこちらを利用するのが初めてという事で私が今案内していたところです。」
「うち…、アイナっていいます…。ティーンアカデミーのニュートラル科の五年です…。」
「あなた、アイナというのね。わたしはメフレックス。鉄騎士団団長で白き女傑の隊長も兼ねているの。」
(見た目すっごい強そう…、なのに意外と優しい感じだな…。)
アイナとメフレックスは自己紹介をした。強そうな見た目と優しい性格のギャップにアイナは戸惑い気味だった。
「まずは準備運動をしましょう。」
メフレックスはアイナとエイミーに準備運動を促した。
準備運動を済ませた後、メフレックスはアイナとエイミーに両端が丸い鉄の塊らしき物をそれぞれ二個一式丁寧に渡した。アイナは小さめで、エイミーはそれより一回り大きめだ。
「これは…?」
アイナは二振りの鉄の塊らしき物が気になった。
「『赤ダンベル』よ。略して『赤ダン』。」
「どうして『赤』なんですか?見た目全然赤くないんですが…。」
アイナは『赤ダン』の「赤」の理由が気になった。
「赤は『ヒッタイト』の事で、このレッドガルドで産出される鉄の事なの。他のガルドの鉄よりも多くの赤のEL粒子を帯びているから『赤い鉄』と呼ばれているの。『赤い鉄で出来たダンベル』を略して『赤ダン』となったのよ。」
メフレックスはアイナに『赤ダン』と呼ばれる理由を説明した。
「わかりました。」
アイナはやっと理解出来た。
「じゃあ、『カール』を始めましょう。左右交互に15回ずつね。」
メフレックスは二人に『カール』の動作の手本を見せ、二人はメフレックスの動き通りにしようとするが…
「熱っ…!」
アイナは熱さのあまり赤ダンを落としてしまった。一方エイミーは難なくこなしていた。
(何だこの熱さは…。まるで筋肉があぶられたような感じだ…。この赤ダンどもはまるでうちを拒んでるかのようだな…。なのに何でエイミーは造作もなく扱えんだよ…?)
アイナは赤ダンに拒絶されたような気がして動揺した。エイミーが造作もなく扱う様を目の当たりにしたのも拍車をかけた。
「アイナ、大丈夫?」
メフレックスはアイナを気遣った。
「メフレックス姐ちゃん…、やっぱうちには無理です…。」
アイナは弱音を吐き、メフレックスとエイミーはそれに動揺した。果たしてアイナはダイエットをこのまま挫折してしまうのか?