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100万人目で抜けるつもりだった聖剣の100万人目だった勇者  作者: 霖霧 露
第一章~勇者(?)の受難、それと女難~
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第十二節 真実への一歩

 近々ダンジョン探索の王命が降るだろう俺は体を休めるついでに、王立図書館で勇者アルトに関する書物を読み漁っていた。

 時折ではあるが、俺は勇者アルト伝説の真実を探っているのだ。

 聖剣エクスカリバーの伝説が全て嘘だと知っている俺は、もしや勇者アルトの伝説も全て嘘なのかもしれないと疑っている。

 個人的に、全て嘘では困ってしまう。俺が勇者となれたのは勇者アルトの伝説が前提にあるからだ。


(全てが嘘ではないと思うぜ?実際、魔王は1度撃退されたんだ。オレは魔王も勇者アルトもこの目で見てきたしな。オレが生き証人って事だ)

(死んでるだろ、お前)

(オレの魂は死んでねぇ)


 生身の体もない癖にエクスカリバーが謎理論を展開しているが。

 とにかく。こいつの言う事が正しければ、勇者アルトが魔王を撃退したのは事実だ。

 では、聖剣エクスカリバーを使っていたという伝説だけが嘘なのか。

 残念ながら、約1000年も前の事を詳細に記した物はない。


(勇者アルトの伝説って細部が曖昧だしな。勇者アルトの最期にしたって、『レヴィ・ガーン』って奴の謀反に倒れたって事になってるが、こいつの謀反の理由が全く伝わってねぇ)

(謀反で受けた致命傷を癒す霊薬の探索についても、『パース・ヴァル』が失敗したっていう端的な事しか伝わってないからな。おかげで『パース・ヴァル』は、ある劇じゃ忠臣、ある伝記じゃ無能と、好き放題書かれてる)


 我が国を建国した王だというのに、建国されたその国の王立図書館がこの始末。

 伝説の真実を解き明かすなど、望むべくもない。


「テノールさん!」


 内心げんなりしていた俺の耳に少女の大声が響いた。

 おかげでげんなりした気分は払えたが、無駄に他の図書館利用者から注目を集めてしまう。どちらかと言うと、集めているのはその少女、ブレンダの方だが。


 ちなみに、この図書館の常連には俺も半ば常連であると周知されており、俺の訪問が騒ぎになる事はない。


「ブレンダ。図書館ではお静かに、だよ」

「そ、それはそうなんですけど……。そんな事より大変なんです!魔道具の解読が終わったんですが、大変な事が分かっちゃったんです!」

「……何?」


 まさか、解読を頼んでから2日も経っていないのに終わるとは。

 それにしてもこのブレンダの慌て様だ。嫌な予感がする。


 俺は机に積んでいた書物を片付け、ブレンダと共に彼女の部屋へ急ぐ。




「まず結論から述べると、例の魔道具は録音機でした」


 3番隊隊舎にあるブレンダの自室にて、ブレンダは解体された例の魔道具が置かれたテーブルを挿み、俺へ真剣な面持ちで言葉を述べた。


「ろ、録音機だって!?」


 音を記録する魔道具が、よりにもよって俺の部屋に設置されていたとは。

 これは、非常に(まず)いかもしれない。


「それって、俺の声が録音されてたって事だよな」

「はい、しっかり録音されていました」


 ブレンダは録音魔術石を例の物と違う魔道具に装填する。

 すると、その魔道具は音を奏でたのだ。


〈ガッシャン!〉

〈どうしてこうなった!〉

〈全てお前のせいだろうが!〉

〈もっと俺に力があれば……。抗える力が……〉

〈クソ……。こんな事なら、勇者になるんじゃなかった……〉


 少し雑音混じりだが、その音は確かに俺の声だ。再生された言葉には、ちゃんと言った覚えすらある。


「盗聴、されてたのか……」


 事態が予想以上に悪すぎて冷や汗が止まらない。

 今自室で変な事口走ってないのを必死に祈ってる。


「照明魔道具にこれを仕込んでいた時点で悪質ですが、それだけじゃありません。こちらを見てください。こちらの黒板には、例の魔術石に描かれていた魔術式を転記してあります」


 ブレンダの指し示した黒板には、『エイゴ』の文章が並んでいる。


「ここの『The() sound(サウンド) is(イズ) that(ザット).』、『その音はそれである』という部分と、ここの『That(ザット) is(イズ) recording(リコーディング) thing(シング).』、『それは録音するモノである』という部分。この2文で録音機能を構築しているのですが、普段はこんな回りくどい文章にしません。『Record(リコード) the() sound(サウンド).』、『その音を録音せよ』の1文で済みます」

「巧妙に魔道具を隠した上、魔術式も分かりづらくしていたと」

「はい」


 されたくない肯定だったが、肯定の有無で事実は変わらない。


 俺は、この事態を打開する手に頭を回す。


「……ブレンダ、この魔道具と同じ物って作れるか?」

「え?……まぁ、機構は理解したし、工具はあるから。後は、うん。同じ型の照明魔道具があれば、作れるかな?」

「さすがだ、ブレンダ!」

「え?ちょ、て、テノールさんの手、手が!?」


 突然手を握られた事にブレンダが動揺しているが、それどころではない。


「同じ型の照明魔道具なら王宮にいくらでもあるから取ってくる。対価もきっちり払う。だからお願いだ、お前だけが頼りなんだ。どうか力を貸してくれ」

「ひゃ、ひゃい!」


 舌噛んでるけど頷いてるし、これで言質は得た。


(録音機なんて複製して、どうすんだよ。テノール)

(この録音機を作れれば、犯人を特定できるんだよ)


 録音されたなら、録音し返せば良いのだ。


(犯人っぽい奴の部屋に仕掛けるのか?それだと何回も仕掛ける事になっぞ?)

(いや、1回で充分だ。俺の部屋に仕掛ければ良い)

(は?……あー、なるほどな。昔からよく言うよな、『犯人は現場に戻ってくる』って)


 そう、『犯人は現場に戻ってくる』のだ。さらに、魔術石の性質上、犯人はその魔術石を回収しなければならない。

 魔術石を回収しなければ、録音を聞く事はできないのである。

 よって、ほぼ確実に犯人は俺の部屋へ訪れる。

 俺はその現場を録音すれば良いだけだ。


(待ってろよ、犯人。賠償金をふんだくって、牢屋にぶち込んでやるからな)


 俺は勝利を確信し、犯人を法廷に引っ張り出すその日を楽しみにするのだった。

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