第四十三節 面倒事の後も面倒事
「魔道具の調査中にその魔道具製作者と遭遇し、精神干渉系魔術でレオナルドさんたちは捕まってしまった。これが発端であり、第1段階ですね?」
敵が居なくなった敵陣に設けられた状況説明の場。
パースは説明を受けたりしたりの後に、状況を整理していた。
それで、整理される第1段階。
レオナルドたちがヴァンに捕まった経緯を聞き、それを簡略化してまとめていた。
経緯を話したレオナルドやマリーとブレンダが頷き、そのまとめが正しい事を示している。
「レオナルドさんの危機を首飾りの魔道具で知ったムラマサさんが、聖剣デュランダルを修理した上で、同じく危機を知ったテノールさんたち及びユウダチさんたちと合流。集まった6人でレオナルドさんたちの救出に向かいました。これが第2段階」
整理された第2段階は俺たちが救出に向かった経緯、それを簡略化したモノ。
ムラマサが何故ここに居るのかというレオナルドの疑問も、しっかり事前に回答されている。
「ムラマサさんと合流した我々はムラマサさんとユウダチさんの先導の下、敵拠点への侵入に成功しました。しかし、敵に感知されており、すぐさま精神干渉系で返り討ちにあいました。これが第3段階」
第3段階は、敵拠点の発見と侵入、返り討ちにあった経緯。
捕らえられていたレオナルド、マリー、ブレンダへ、すでに細かく説明されている。
「敵の精神干渉系に偶然にも対抗できたテノールさんが奮戦し、同時に聖剣デュランダルに選ばれた事によって対抗できたリカルドさんも加勢。聖剣デュランダルの能力によって、敵は全滅手前まで打倒できましたと。これが第4段階」
第4段階は、俺とリカルドがヴァンと戦っていた経緯。
俺とリカルドが皆に説明した事だが、お互い聖剣に宿っている魂について伏せている。
そのため、精神干渉系魔術への対抗方について曖昧になっていた。
ただ、皆はそこに言及はしてこなかったのだ。
俺は内心、リカルドは明け透けに安堵している。
「敵がテノールさんとリカルドさんへ掛かりきりになったところで、マリーさんが拘束を解き、ブレンダさんとレオナルドさんを解放しましたと。これが第5段階」
第5段階は、捕まっていたはずのマリーたちが解放されている経緯。
なんと、マリーが視界を奪われているのに魔術で手枷を切ったらしい。
手探りと言うか肌探りと言うか、とかく触覚で枷の大きさ・位置・質を分析したとか。
でも、やはり視覚程正確な照準ができなかったため、火傷を負ってしまったようだ。
だが、手は自由になったおかげで目隠しも外す事ができ、足枷も首輪型魔道具も外せたのである。
首の方はそっちも視覚に頼れなかったため、照準を誤ったそうだ。
一応、先にブレンダの首輪型魔道具を外していたため、解体手順を間違って起動させるような事はなかった、との事である。
「人質も居なくなった敵を、テノールさんがとどめを刺して撃退。レオナルドさんが私たちにかかっている精神干渉系魔術を解いて、終了と。これが最終段階ですね」
最後に自身らが目覚めた経緯を整理して、パースは状況整理を締めた。
ちなみに、『撃退』と表現したのは、ヴァンの不死性のせいである。
ここに居るヴァンは全て殺した訳だが、各地に居ると思われるヴァンまでは殺していない。
よって、魔王軍幹部ヴァンは滅ぼせていないから、討伐という表現ではない。
「では、次にすべき行動を整理しましょう」
状況整理という過去の整理が終われば、続くのは未来の整理である。
マリーの探していた魔道具は見つかっており、パースも奴隷商を撃退できていた。
当初の目的はおおよそ達成できているのだ。
しかし、やるべき事は残っている。
「マリーさんは当初の目的通り、魔道具の調査ですね。マリーさん、ブレンダさん、ユウダチさん、レオナルドさん、ニオ。その5名は引き続き魔道具の調査を」
魔道具は見つかったが、見つけた瞬間に捕まってしまったため、魔道具の詳細な調査ができていないのだ。
だから、護衛役の2人と足である1人も合わせ、調査続行である。
「私は、奴隷たちの解放ですねぇ。身元を聞いて、送り届ける仕事ですよぉ……。テノールさんも付き合ってくださいね」
そして、こっちは奴隷商の置き土産を処理せねばならない。
途中で見かけただけでも、結構な数が捕まっていた。
その者たちを故郷へと帰す仕事は、とても忙しそうだ。
パースも忙しくなる事を予想し、覇気を失いつつある。
俺は多少でも仕事を減らしてやるべく、パースに協力するしかない。
専ら俺の足であるパースに、過労で倒れられては困るのだ。
「リカルドさんとムラマサさんは、聖剣デュランダルに関する事後処理、ですかね」
聖剣の修理を国王の許可なくしてしまった事。
それに、その聖剣に選ばれてしまった事。
ムラマサとリカルドは、元々彼女らが結んでいる契約も合わせ、聖剣デュランダルに付随する面倒事を片付けなければならない。
国王にも関わってくる事だし、ムラマサたちはそっちが急務だ。
「という感じで、各々次の行動に移ってください。真に残念ながら、休んでいる時間はないですよぉ」
皆の次にすべき事を整理し、それぞれが理解したところで行動開始だ。
仕事が山積みの俺たちを、時間は待ってくれないのであった。




