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第四十二節 緊張の糸が切れて

「かっ……」


 エクスカリバーの一撃によって断頭されたヴァン。

 彼の頭は悲鳴を叫び終える暇もなく、動かなくなった。

 頭と別れた体の方も、倒れて静かになっている。


(良し。オレの出番は終わったな。じゃ、よろしく)

(おま、ここで主導権を渡すのかよ!?)


 エクスカリバーより体の主導権を返されれば、いつものように疲労を背負わされる。

 今回は被弾したのもあり、痛みも背負わされた。

 疲労と痛みが急に来た俺はふらつき、聖剣エクスカリバーを杖にしてどうにか堪える。


「テノールさん!」

「ブレンダ……。君が無事で良かった……」


 心配して駆け寄るブレンダへ、せめて気丈な言葉を送った。

 こういうのも、割と勇者らしい一幕だろう。


(下衆いなぁ)


 他人に疲労と痛みを押し付ける奴に言われたくはない。


「ああ、俺も疲れたぁ。魔力の残量が危なかったなぁ……。あの魔術に魔力結構食われたぜ……」


 起死回生の一手となった攻撃、炎の魔術を行使したリカルド。

 彼は魔力を振り絞ったようで、疲れに抗わず床に座り込んだ。

 あの魔術は、おそらく聖剣デュランダルに宿る魂の魔術なのだろう。

 魔術師でないリカルドが、あんな効果範囲が異常に広い魔術を習得していたとは思えない。


(て事は、オレがテノールの魔力を使ってるみてぇに、デュランダルがリカルドの魔力を使ったのか?)

(……だとすると、かなりきつそうだな、リカルド)


 魔術行使による急激な魔力消費を、リカルドは味わった訳だ。

 慣れない感覚と喪失感に疲れるし、その疲れから座り込むのも無理はない。


「……手間をかけさせたようだな。すまなかった」


 疲労困憊な俺とリカルドに、レオナルドは謝罪した。

 その表情も実に申し訳なさそうだ。


「構わないさ。こっちが勝手にやった事なんだし」

「勇者として、当然の行いをしたまでです」


 対してリカルドと俺は、特にレオナルドを責めたりしなかった。

 悪いのはヴァンという奴なのだ。レオナルドに非はない。

 個人的には、レオナルドの技量で何故捕まったのかと問い質したいところではあった。

 でも、俺は勇者なので問い質せない。


「パースー、起きなさーい。ちょっと首と手首火傷したから、早く回復薬出してー」


 真面なやり取りをしている俺たちを他所に、マリーはパースを突っついていた。

 確かに注意深く観察すれば、マリーは言及した箇所を火傷している。

 手枷と首輪型の魔道具を外す時に負った火傷だろうか。


「『リトルスター』をくらったのだろう。あの魔術をくらったら数時間は起きない。だが、私に任せてくれ」


 レオナルドはマリーを下がらせて前に出た。

 パースの状態を正確に見抜いた上で、レオナルドには起こす方法があるらしい。

 そんなレオナルドの手には、いつの間にか手持ち鐘が収まっている。


The() sound(サウンド) of(オブ) the() bell(ベル), Calm(カーム) the() mind(マインド).『サイコアナライジス』」

「ん……、む……?」

「ほあぁぁ……、良く寝た。あれ?なんでこんな固そうな床で寝てたんだっけ」


 レオナルドが詠唱をしながら手持ち鐘を鳴らせば、眠りに落ちていた皆がそれぞれ目を覚ました。

 パースは神妙な面持ちでゆっくりと周りを見渡し、ユウダチが全く緊張感のない伸びをしている。


「パース、回復薬頂戴」

「え?あ、はい」


 マリーは寝起きに近しいパースへ回復薬を要求し、献上させた。

 火傷を早く治したいのは分かるが、少しは説明してあげてほしい。


「ユウダチ、それにムラマサ。大丈夫か?」

「あ?ムラマサも居る?あれ?じゃあフローレンスとリーダーは?」

「何を寝ぼけてるんですか、ユウダチ。ボクたち2人とその他でレオナルドを助けに来たんですよ」


 レオナルドが友人である2人の安否を訊ねたが、ユウダチは頭が半分眠ったままだった。

 ここに居ない誰かの名前を口に出し、ムラマサに頭を軽く叩かれる始末である。


「あ、ああ。そうだったそうだった。で、あれ?レオナルド助かってんじゃん」

「それについては確かに不思議ですが……」

「お前の言う『その他』が私を助けてくれたんだ」


 首を傾げるユウダチとムラマサに、レオナルドは呆れ交じりで顛末を語った。

 凄く省略された顛末だが。


「では、聖剣デュランダルを持ってくるまでもなかったと?」

「『セイクリッドブレイズ』は行使されていたようだが……」

「え?ユウダチも眠ってたのでしょう?誰が使ったんですか?」

「あ、俺です」


 ムラマサとレオナルドが話し合っているところに、話題の的となった行使者、リカルドが自供した。

 リカルドは気まずそうでありながら、しっかり挙手して主張している。


「……は?」

「あのだな……。なんか、聖剣デュランダルに選ばれた」

「はぁあ!?」


 ムラマサは素っ頓狂な声を2段階で上げた。

 眉尻が下がってから吊り上がるという、酷い落差を晒していたのだ。


「ちょっと、どういう事ですか!」

「俺だって良く知らんさ!なんか誠実さだのなんだのが評価されて認められたんだよ!」

「デュランダルを貸せ!本人に問い詰める!」


 『貸せ』と言いつつ引っ手繰るムラマサ。

 彼女の聖剣を注視する様子は真剣そのものである。


「ま、マジなんですか……?もう元の鞘に収まるつもりはない……?そ、そうですか……」


 聖剣デュランダルに宿る魂と思念を通わせているのだろうが、ムラマサが次第に気落ちしていった。

 そうして通わせ終えただろう後、ムラマサはリカルドを見つめる。


「持ってけ泥棒!」


 そして聖剣デュランダルをリカルドへぶん投げた。


「刃物を投げんな!危ないだろ!それと泥棒じゃなくて正式に認められたんだって言ってるだろ!?」

「お母さんは認めませんからね!」

「どの視点の発言!?」


 何故だろう、ムラマサとリカルドのやり取りが喜劇じみてきている。


「あー、失礼。とにかく、状況の詳しい説明をお願いできますか?」


 収拾が付かなくなる前にパースが制し、状況説明の場を無理にでも設けるのだった。

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