表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/221

第三十七節 敵陣にありて

「ほへぇ……。こいつは凄いなぁ、こんなんが地下に建造されてたんかぁ」


 ぶち抜いた穴から建造物に侵入したユウダチは、感嘆としてそんな感想を漏らした。

 そうなるのも無理はないだろう。

 そこには、地上での建造も難しそうな、神殿の如き通路が伸びていたのだ。

 その内装に俺は神聖さを感じ、そして、既視感も覚える。


「パースさん、この建造物ってもしかして」

「レヴィのダンジョンに似てますねぇ」


 同じく既視感を覚えているだろうパースに話題を振ってみれば、見事に同意を得られた。

 そう。この通路は、魔王軍幹部レヴィが作ったダンジョンの通路と、酷く似ているのだ。


「レヴィって、少し前にドラクルへ仕掛けた魔王軍幹部だったよな。なんだってそんな奴のダンジョンとここが似てるんだ?」

「単純な話でしょう。ここも、レヴィが作ったのです」


 リカルドが繋がりを見出せない2点を、パースはさっさと繋いでみせた。

 そのパースが述べた繋がりにリカルドは目を剥いているが、その他の者に目立った反応はない。

 俺は元よりパースと同じ意見だったからである。

 ニオはそういう訓練をうけたのだろうか。努めて冷静に振る舞っていた。

 ユウダチとムラマサはおそらく、誰が相手でもレオナルドを救出すると、そう誓っている故か。


「少なくとも、魔王軍幹部が1人居ると、思っておいた方が良いですか」

「最悪2・3人とか居そうですけどねぇ。レヴィは人攫いに向いてなさそうですし」


 パースの言う通り、レヴィは前回の戦い方からすれば拠点防衛向き。

 逃げ回らねばならない奴隷商に適性はないだろう。

 とするならば、人攫いをするもう1人が居ると、想定してしかるべきか。


「よぉし、じゃあ幹部2人居るって事で。まずは床をぶち抜くか」

「待て待て待て待て!敵地なんだからそんな軽率に動くな!」


 ユウダチがまた大槌を振り上げたところで、リカルドがその腕に掴みかかった。

 今度は間に合ったようで、ユウダチは振り上げた姿勢のままだ。


「えー?なんでー?救出が目的なんだから、さっさと救出対象掻っ攫って帰って良いじゃーん」

「ユウダチ、首飾りが示すに直下ですから、多分振り抜いた大槌がレオナルドに直撃しますよ。死にはしないでしょうが、貴方が死を覚悟する羽目になるんじゃないですか?レオナルドに怒られる方向で」

「おっし、作戦変更だ。で、どうするんだ?」


 ムラマサの忠告に、ユウダチは大槌を背中へ収めた。

 上級魔術を使える魔術師を怒らせるのは、確かに死を覚悟する程怖い。

 ユウダチの態度は健常だ。


「レオナルドさんの他にマリーさんやブレンダさんも捕まっているでしょうから、彼女たちを探さないとですねぇ。なので、まずはこの建造物を探索しましょうか」


 この集団の暫定的な取りまとめ役であるパースが、行動の方針を定めた。

 その方針について、意見を述べる者は居ない。


「じゃあ手分けして探すか?」

「いえ、一塊になって動きましょう。この建造物がレヴイによる物だとすれば、彼女の陣地も同然です。いつ攻撃が飛んできてもおかしくありません」


 ユウダチは探索の効率を考慮し、手分けする事を提案した。

 だが、パースは危険性の観点からその提案を蹴ったのである。

 レヴィのダンジョンを経験した俺としても、一塊で動く事に賛成だ。

 同じく経験者であるリカルドも、一応あのダンジョンをその目にしたニオも、パースの言葉に頷いている。

 これで、パースの方が賛成多数で可決された。


「了解。そういう事ならまとまって動くか」

「そっちの方が良いと言うならそっちで。探索やらダンジョン攻略やらは素人ですから、口出ししませんよ」


 ユウダチとムラマサも反論はせずに従う。


 そうして多少進んだところで、内装の様子が変わる。


「当たりですねぇ」


 パースは誇らしげに呟いた。

 何故なら、そこには人が捕らえられた牢屋が連なっているからだ。

 レオナルドたちの行方不明と奴隷商が関係している事。

 パースのその推測は見事当たった訳である。


「こんなに人が……」


 俺は牢屋に捕らえられている人を観察した。

 そのほとんどが少女または幼女であり、手枷や足枷を嵌められた状態で寝かされている。


(ふむ、好機だな。彼女たちを救い出せれば、一気に若い女性層の支持者が稼げる。あわよくば俺の侍女なんかに……)

(おい、ヌエトラにも読まれるぞ)


 しまった。俺の心が読めるのは今に限ってエクスカリバーだけではない。

 首飾りに宿っている魂ヌエトラに俺の本心が読まれるのは、非常によろしくない。


(ま、嘘だけどな。あいつは首飾りの仕事に専念してっから、お前の心は読めねぇよ)


 ……こいつをムラマサに叩き直してもらおうか。性根とか真っすぐに修正してほしい。


(無理だな。死んでも直らなかったんだぜ?)


 『馬鹿は死んでも治らない』と、『主神スタッカート』は偉大なる言葉を残している。

 エクスカリバーの性根もその類らしい。諦めよう。


「……レオナルドさんたちが居ませんねぇ。もっと奥でしょうか」


 パースが牢屋を見回したが、本命の人物は見つからないようだ。


「この人たちはどうするんだ?」

「申し訳ないですが、後回しです。敵を叩かないと、安全に救出できません」


 枷を解いていたり、人を運んでいたりの最中は手が塞がる。

 そんな時に攻撃されようものなら、対応が遅れ、救出者と共にやられてしまうかもしれない。

 そういう事で仕方なく、救出は安全を確保した後に回された。

 俺たちはさらに奥へと進む。

 そうすると、微かな声が鼓膜を揺らす。


Twinkle(トゥウィンクル), twinkle(トゥウィンクル), little(リトル) star(スター), How(ハウ) I(アイ) wonder(ワンダー) what(ホワット) you(ユー) are(アー). Up(アップ) above(アボーブ) the() world(ワールド) so(ソー) high(ハイ), Like(ライク) a() diamond(ダイアモンド) in(イン) the() sky(スカイ).」


 その声が唱えるのは『エイゴ』。

 『エイゴ』は何に用いられるかとすれば、必然、魔術である。


(テノール!)


 エクスカリバーの警告もあり、俺は敵の魔術に備えるべく聖剣エクスカリバーの柄を握った。

 しかし、遅かったのだ。


Good(グッド) night(ナイト).『リトルスター』」


 俺にも、パースたちにも強烈な眠気が襲い掛かり、誰も抗えなかった。

 俺たちは、眠りに落ちていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ