勇者御一行編 なんだこの状況?
なんだこれ?
11.2歳くらいの薄いピンク髪の少女は確かに「ようこそおいでくださいました!勇者様方!どうか私達人間を魔王の手からお救いください!!!」といいやがった…
おいおい女神さんよ…使命は特にないんじゃなかったのかよ…ちなみに俺は胸は好きだがお子ちゃまは守備範囲ではない。なんでせっかくの初異世界人が綺麗な巨乳のおねぇさんじゃなくてロリッ子なんだ…
「えっ…あの…これは一体どういう事なんですか?」
目の前の高校生らしき4人組の中の1人の小柄でお下げ髪の瓶底眼鏡をした女子が狼狽えてながらもピンク髪の少女に声をかける。しかし答えたのはピンク髪の女の子ではなく4人組の中の唯一の男 出っ歯の身長低めの小太りでニキビ面の髪が脂ぎった男だった
「いやいや…絵美…どう考えても勇者召喚物だと思うぞ?」
男は不気味な笑顔と共に小柄な女子の肩に手を置く。
瓶底眼鏡の絵美と呼ばれた女子は肩に置かれた手を眉間に皺を寄せた表情でチラリと見て二歩ほど横にずれて肩に置かれた手から逃れる
それを見た出っ歯男は肩をすくめ「やれやれ…」と言葉を吐いた
その様子を見ながら苦笑いする4人組の中の2人の女子
1人は楓よりも背が高く178cm程あるだろうか…しかしその背の高さに似合わない程にガリガリに痩せていて頬はこけて目の下にはクマがある。髪はパサパサのロングヘアーでさらに半袖のブラウスから右腕だけボロボロの包帯が雑に巻かれている
(リスカ跡でも隠してんのか?)
もう1人は楓よりも背は低いが巨漢。目は糸目で口はおちょぼ口で半開き。まともに息が出来ないのか呼吸の度に「ふすーふすー」と音が鳴っている。髪をきっちりと結ってポニーテールにしておりブラウスもスカートもパツパツになっていてブラウスのボタンとボタンの間は布が足りていない。その隙間から見える肌と下着らしき黒い布に対して
(ひゃっほ〜う!目の保養だぁ〜)
なんて思うはずもなく楓は
(くそっ…見たくもないのに目が行っちまう…)
と自分の節操のないエロへの探究心に血の涙を流している気分だった。
それぞれの反応を見せる召喚された者たちをピンク髪の少女は胸の前で手を組みながらキョロキョロと見渡す
「あ、あのっ…申し訳ありません…やっと召喚が成功してつい興奮してしまいまして…いきなりこのような事言われても困惑されるのも仕方ないですよね…こんな場所ではなんなので詳しい説明は場所を改めさせて頂きたくおもいます。みなさん付いてこられてください。」
そう言って少女は振り返り歩き出す。
4人組は少し目を合わせた後チラリと楓のほうを見て少女の後を追った
「はぁ…」
ため息を1つ吐くとそれに続いて楓も歩き出す。騎士たちも勇者達を取り囲むかの様に移動を開始した
5人が手を広げて並べる程の広さの廊下には赤い絨毯、壁には絵画や高級そうな置物が飾られている。
一定間隔にある大きな窓から見える景色には城下町が広がっており小さいながらも沢山の人の往来が目に取れた。
「すごい…本当に日本じゃないんだな…」
自分達が今いると思われる建物の作りだけでなく窓から見える街並みや家屋の作りを見て改めて出っ歯男が声を漏らした。
やがて兵士が左右に立つ大きな扉の前に来ると楓たちの周りの騎士の1人が兵士の側へ行き何やら耳打ちをした。騎士が耳打ちをするまで楓達を不審者を見るような目で見ていた兵士は騎士から耳打ちをされると目を見開きながら「なんとっ…とうとう…」と呟いた後大きな扉に手をかけて扉を開いていく
扉が開ききるとピンク髪の少女が少し振り返りながら「さぁ皆さんこちらへ」と中へ歩き出した。
室内は広々とした作りをしており赤い絨毯の左右には多数の騎士が槍を構えたまま整列しており、大きな窓、天井は高くシャンデリアが飾られており室内の奥には玉座が2つ。向かって左の玉座には豪華な刺繍があしらわれた赤マントを羽織り王冠を被るでっぷりと太った60歳程の男が座っている。向かって右の玉座は空席である。
ピンク髪の少女がある程度玉座に近づくと跪き楓達を囲っていた騎士達もそれに合わせて跪く
少しの間沈黙が流れた後楓が「あぁそういうことね…」と呟いた後跪く
それを見た4人組は焦ったようにそれに続いた
それを確認したピンク髪の少女が口を開く
「お父様…とうとう勇者様方の召喚に成功したしました。」
「シャーロットよ…よくやった…皆の者 面をあげよ…」
その言葉に合わせて皆が面をあげ王の言葉を待つ
「我はこのワドニア王国の王 ヨハン=ワドニア32世。勇者様方よ…我ら人間を魔王の手からお救いくだされ!どうか!!どうかっ!!!」
そう言って頭を下げた
「なっ!?陛下!!国を統べる者が軽々しく頭を下げてはなりませぬ!!」
王が頭を下げたことに対して玉座に1番近くにいたハゲの男が声を荒げた
「馬鹿者っ!今はそのような事を言っておる場合ではなかろう!!世界を…セリスを守る為なら我が頭を下げる事などに些かの迷いもないわっ!!」
しかしハゲた男の荒げた声よりもさらに大きな声で王が怒鳴る
「はっ…!すまない勇者様方…お恥ずかしところをお見せした…なぜ今回勇者様方を召喚するような事態になったかと言うと………
国王とやらの話をまとめると
最近行われた世界会議なるもので国王に同行していた
第1王女のセリスが帰り際に行方不明になり、予定されている公務などからしょうがなく国王は帰国。その後国の情報網を駆使して調べた結果はどうやら世界会議に参加していた魔族を統べる魔王ゼノンに攫われたというものだった。それから魔王ゼノン率いる魔族に宣戦布告を受け現在ワドニア王国と魔王ゼノンは戦争状態にある。そもそも人間と魔族では戦闘能力の違いから圧倒的に人間の方が不利であり、戦況でいっても不利な状態が続きなんとかこの状況を打開する為に今回の勇者召喚が行われたらしい。
その説明を受けた楓は何処かに引っかかる思いを抱いたが
「任せてください!!必ずや僕達がこの世界を救ってみせます!!なぁ!みんなっ!!」
と太っちょメガネがノリノリで安請け合いをしていた。それに対し瓶底メガネの女の子は「ちょっと!先輩!何勝手にひきうけてるんですか!?」と小声で抗議したが関取系女子と鶏ガラ系女子は割と乗り気なようで瓶底メガネの少女を諌めていた。
その後案内されたのは兵士達が訓練などを行う広場だった。壁際には刃を落とした剣など殺傷力を落とした武器が置かれている。さらに地面はわざと固められておらず足場が不安定な場所でも戦えるようになるためなどの工夫もしてあるようだ。そして楓達の前には筋骨隆々で少し白髪の混じった40代と思われる男とピンク髪の少女が立っている。
「改めまして私はワドニア王国第2王女のシャーロットと申します。今後勇者様方のサポートを色々とさせて頂きますのでよろしくお願いします。そして私の隣にいるのが我が王国最強の騎士のジェイドといいます。」
「はじめまして勇者様方。私はワドニア王国騎士団長を務めさせてもらっているジェイドという者だ。まずは勇者様方のお名前をお聞かせ願えるだろうか?」
「俺の名前は醜面 輝樹だ!ジェイド!よろしくな!」
(!?)
「ふすーっ私は怒洲恋 明音よ。ふすーっよろしく」
(っ!?)
「…私の名前は鳥柄出汁 麗奈よ…」
(なっ…!?)
「あっあの…私は瓶底眼鏡 絵美といいます!よろしくお願いしますっ!」
(こいつら…あだ名を苗字のように使っているのか?)
「…えっと…楓です。あだ名は特にありません…」
すると先に名乗っていた4人が怪訝な顔をする。
「はあ…お前は何を言ってるんだ?何であだ名なんかを名乗るんだよ…普通に苗字を名乗ればいいじゃないか…」
輝樹がため息を吐きながら腕を組んで楓を睨みつける
「……?日下部 楓です。よろしく…」
「臭壁?聞いたことない苗字だな…」
楓の苗字に輝樹は首を傾げた
(確かに苗字ランキングは高くないけど…完全に失礼な勘違いされてる気がするが…ここはスルーだな…)
「ふむ…もしや勇者様方はこの世界の東方にある島国と同じような名の順番ですかな?先に苗字、後に名前といった…」
それを聞いて楓達ははっとする。とりあえず召喚されてまだ少数の人しか見ていないがこの世界の住人見た目は明らかに日本人離れしている。名乗る際には自分達がいた世界で言うところの外国で名乗られている順番と気付いてもよさそうだが言葉があまりにも日本語と同じように違和感なく聞き取れている事に流されていたようだ。
「と、言うことは輝樹、明音、麗奈、絵美、楓が名前という事でよろしいかな?ひとまず当分の間は勇者様方には魔族と戦えるように訓練をしていく事となる。とは言ってもいきなり訓練と言われても困るだろう。まずは勇者様方がこの世界でどのような訓練を積んでいけばより効率的に強くなれるかを確認したいと思う。「ステータスオープン」と口に出して見てもいいし、心の中で念じてみても構わない。やってみてくれ」
「よしっ!きっと俺にはチートなスキルがあるはず!ステータスオーーーーープン!」
輝樹が気合の入った声を上げる。
「ふすテータス ふすーっ オープン」
明音が何故か四股を踏みながら唱える。
「…面白いじゃない…顕現せよ…私の能力…」
麗奈がアゴを上げながら右手でパサパサの髪をかきあげた後右手を顔の左隣へ配置させて勢いよく右側へ手を払う。
「……ス、ステータスオープン」
絵美が少しズレ落ちた眼鏡を上げながらほんのり顔を赤らめて呟いた。
(付き合ってられん…ステータスオープン…………っ!?)
楓が口に出さずに心の中で唱えると目の前に文字が羅列された半透明のボードが現れる。
しかし4人組とジェイドを見てみるが楓の目には自分のボードは見えているものの他の人のボードは見えていない。
「ふむ…楓殿は気付いているようだが目の前に現れたのはステータスボードと言われるもので基本他人から見られる事はない。あるスキルを用いれば見れない事もないがそのスキルはかなり希少なものでそうそう他人にステータスを見られるという訳ではないから安心してくれ。」
そう言われて楓は改めてステータスボードに目を落とす。