転生or転移
「な、なんとなく死んだような気もするので話を先に進めてください……」
頭をがっくしと落としながら手を差し出す。実際には全く死んだ時の事など覚えてないのだが 粘ればさらに辱しめを与えられそうなので先に促す。
「わかりました。先程も言いましたがこの空間はイレギュラー時に使う空間といいましたね?」
「あぁ…そんな事言ってましたね……」
「私は第15世界の輪廻転生を司っているのですが本来あなたが輪廻転生を行うのは第29世界での事なんです。」
「はぁ……?……つまり?」
「まぁつまりは迷子ですね。そうそうある事ではないんですけど時々輪廻転生の輪から飛び出してしまって外の世界からこちらの世界の輪廻転生に迷い混んでしまう事があるんですよ。逆にこちらから別の世界の輪廻転生の輪に行っちゃう事もあるんですけど…あ、ちなみにこの前の全世界〈輪廻転生を司る神〉会議で聞いたところ第15世界から第29世界に行っちゃった人でスゴい有名な人が出たんです なんでもアドルフ・ヒトラーって人なんですけど…」
「あぁ…悪い方で有名な人ですね…それ…」
「あら…そうですか…悪いほうで有名なんですね……だから皮肉を効かせた感じで言われたんですね……第29世界の〈輪廻転生を司る神〉は割と雑なお方なんで多分リセットを行わずそのまま輪廻転生の輪に加えたんだと思います。まぁ元々第29世界の人達はスキルや称号の枠が存在しないんで油断するのは分からないでもないんですけど…」
「リセット?スキル?称号?」
「第15世界はいわゆる剣と魔法と冒険の世界なのです。今のまま転生してしまうと全くスキルや称号がない状態なのであっという間にお亡くなりになって輪廻転生の輪に並び直さないといけなくなるんですよ。」
「おぉ…」
まさか自分の身になろう要素が降りかろうとは…
「という訳で迷い込んできた方にある選択をしてもらい、スキルと称号枠を作って場合によってはスキルと称号取得の作業をここで行なっているわけです。」
「選択…どんな選択ですか?」
「転生か転移かですね。」
「あぁ…転生は記憶なんかなくして生まれ変わる
転移はこの姿、記憶のまま第15世界に移動する
って認識で合ってます?」
「合ってます合ってます!理解が早くて助かります!」
「んーなんと言いますか今 転生と転移が流行ってるんですよね」
「へ?どうやって流行るんですか?」
「あぁ小説の話なんですけど…あとパーティーから追放されて酷い目にあわされてパーティーに復讐したりとか最弱だったのに最強になって仲間や世間を見返したり魔物とか物に生まれ変わったり性別変わったりおっさんだったりダンジョン作ったり領主になって内政したり…」
「……第29世界の人達は現実逃避したい人が多いんですか?」
「かもですねぇ…」
「「はは…」」
2人は顔を合わせ苦笑いする
「じゃあ転移でお願いします。」
「あら?即決ですか?まぁ私も転生より転移をオススメするつもりではありましたが…」
「はい。昔、長生きするという約束をしたんですよね…(まぁ一回死んでるけど)」
「そうですか。 えっ?あっ はい はい わかりました お伝えします。」
突然軽く上を見上げ頷きながら何かに返事をする〈輪廻転生を司る神〉
それを見て「あれ?もしや電波感じる系女子?」なんて失礼な事を思う楓
「どうやら〈発明を司る神〉も出来れば転移をお願いしたいそうです。楓さんの知識で世界の発展に貢献して欲しいと」
おぉ 神様はテレパシー的なものが使えるのか
「えーと…自分化学とか機械とかそこまで詳しくないですけど……」
「1から100まで最初から全てを作り出せって訳ではなくて行き詰まっている分野やまだ思いつかれていない物が生み出される切っ掛けを作ってくれるだけでいいみたいですよ」
「まぁそのくらいなら…そういや転生がオススメじゃない理由とかあるんですか?」
「えっと…お恥ずかしい話なんですがカエデさんがおられた第29世界と比べるとあまり治安が良くないといいますか文明レベルが低いといいますか…生まれる場所によっては食事事情がよろしくなくて育つ前に亡くなるかもしれませんし下手したら口減らしに奴隷として売られてしまったり…仮にそんな事がなくても住んでいる所が魔獣の群れに襲われて滅ぶ事も無いわけじゃないので……」
「え?魔獣?モンスターがいるんですか?」
「ええいますよ。なんて言ったって剣と魔法と冒険の世界なのですから」
「そう言われればそうか……自分格闘技とか学校の授業くらいでしかやったことないんですけど…大丈夫なんですかね?」
「だからこそのスキルや称号なのです。スキルや称号が無ければとてもじゃないですけど魔獣を倒す事は出来ません。かといって子供だとスキルや称号を上手く使えない事も多いですし…」
そう言われると下手に記憶を失って意思が薄弱な子供時代を過ごすよりチートな能力を貰って今の状態で転移して無双した方が良さそうだな…
楓は顎に手を当て頷く
「分かりました!ということで是非すごいチートスキルか称号をお願いします!」
「え?チート?そんなものないですけど?」
「ないんかあああぁぁぁーーーい!」