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六話「少女と組合長。」

サブタイ、修正しました。

一話のサブタイ、「少女、酒場にて」なのにこっちは忘却少女ってつくのおかしくね?

って思ったからです。


 それからの探索は非常に順調だった。

 オリーが索敵をして、敵を見つけると、ユピトーがタイミングよく障壁(バリアー)を貼り、敵が見えない壁に阻まれ調子を崩した隙に、ユピトーの左右アルンとオリーが飛び出て敵を切り裂く。

 それでも倒しきれない場合はオリーの指示で一旦引いて、カーラの魔術で吹き飛ばした。

 そうして一行は大した時間もかからずに、中層の階層主(フロアボス)を打倒し、安全地帯(セーフゾーン)へとやって来た。


「ふぅ、随分早かったな。」


 安全地帯(セーフゾーン)へ着くとオリーが息を吐いて言った。

 アルンは興奮して、ユピトーの背中をバシバシと叩いて褒めている。


「すごいなユピトー、お前が居るだけでまさかこんなに早く中層を突破できるなんて、思わなかったぞ!」


「そうね、やっぱり障壁(バリアー)が使える人が居ると戦闘が随分楽になるわね。おかげで私、ここまで来るのに、階層主(フロアボス)との戦闘ぐらいでしか魔力を消費していないわね。」


「フフ、そう言ってもらえて光栄だよ。でも、皆がすばやく敵を倒してくれるから、僕もあんまり魔力は消費してないみたいだ。」


 カーラがそれに同意するように頷きながら言うと、ユピトーは笑顔で感謝を述べた。

 アルンは、それを見てから、しかし残念そうな顔して呟いた。


「ああ、俺達の階級(ランク)黒鉄級(アイアン)だったらなぁ。このまま下層まで行けたんだけどなぁ。」


 始まりの迷宮(ファーストダンジョン)石級(ジェム)冒険者(トレジャーハンター)が入れるのが上層までであり、そこから中層は、青銅級(ブロンズ)以降、下層は黒鉄級(アイアン)以降、深層および最深層は銀級(シルバー)以降しか入れない。


 但し例外があり、中層から最深層までは、そこに入ることの出来る階級(ランク)冒険者(トレジャーハンター)が随行する事で、自身の階級(ランク)で入れる階層より二つ下の階層までは降りれるようになっている。また冒険者(トレジャーハンター)ではない一般人でも、組合(ギルド)から、階層ごとに用意された特別許可証を発行して貰うことで、その許可証で認められた階層には入ることが出来るようになるのだ。もちろん滅多に発行される事は無く、所属する組合長(ギルドマスター)の認可が必要であり、大抵の場合は自力で戦闘することが出来ない学者などが、冒険者(トレジャーハンター)を随行させる事を条件に、迷宮(ダンジョン)に降りる時などに発行される。


 すると、少し遅れて安全地帯(セーフゾーン)に入ってきたらしい、先輩冒険者(トレジャーハンター)と名乗る男達のうちの斥候(スカウト)らしき男が、アルンの呟きを聞いていたのか、話しかけてきた。


「お、それなら俺達が連れてってやろうか?俺らは銀級(シルバー)だからな。一応深層までなら連れてってやれるぞ。」


「えっ深層まで?」


 その言葉を聞いて、アルンは期待に胸を膨らませて、目を輝かせた。

 しかし、オリーとカーラはまだ男達をそこまで信用していないらしい。


「流石にそこまで面倒を見てもらうのは申し訳ないだろう。今回は遠慮する形で――」


「大丈夫さ、オリー。僕も一度深層まで連れて行ってもらったことがあるんだ。彼らの実力は本物だよ。僕なんか手も足も出す暇が無かったくらいさ。」


「そうだぞオリー!深層なんて、俺達の階級(ランク)じゃあ二つも先だから、こんな機会滅多に無いぞ!折角の機会だし、連れてってもらおうぜ!」


 オリーの言葉を遮るように、ユピトーとアルンが乗り気じゃなさそうな二人を説得しようと声を上げた。

 だが、それでもカーラは最深層に潜るのは不安らしい。


「ユピトーの時は一人だったから大丈夫だったかもしれないけれど、四人になると流石に厳しいんじゃないかしら?」


「ハハハ、銀級(シルバー)を舐めるなよ。……と言いたいところだが、ちゃんともし危険な状況に陥った時のためにこうして転移石(テレポーター)を人数分用意してる。最深層では出現率が良いからな。銀級(シルバー)になるとこれくらい用意するのは簡単さ。」


 魔術師風の男はその言葉を待っていたかのように懐から赤い水晶のようなものを取り出した。


 転移石(テレポーター)とは、迷宮(ダンジョン)内の魔物が稀に持っている魔道具に近い代物である。

 迷宮(ダンジョン)によってその形は様々だが、いずれも転移石(テレポーター)に少量の魔力を流し砕くことで、現在居る階層から最寄りの一つ上の階層の安全地帯(セーフゾーン)に転移することが出来る。

 これだけ聞くと転移を、少量の魔力で可能にする転移石(テレポーター)はものすごい便利な魔道具のように感じられるかもしれないが、もちろん迷宮(ダンジョン)の外では使えないし、同じ迷宮(ダンジョン)、つまりその転移石(テレポーター)が手に入った場所の迷宮(ダンジョン)でしか使えない。

 加えて一方通行、つまり上の階層から下の階層にある安全地帯(セーフゾーン)への転移は出来ない。

 さらに、転移石(テレポーター)のドロップ率は非常に低く、中層や下層では滅多に手に入らない。


 そして、ここ、始まりの迷宮(ファーストダンジョン)は別名水晶の迷宮(ダンジョン)と呼ばれ、下層に行くに連れ、迷宮(ダンジョン)内の壁から水晶が覗くようになる。

 そして、転移石(テレポーター)は赤い水晶の見た目をしているのだ。


「はぁ……、そこまで言うのなら連れて行ってもらうか……。」


「アルンがこうなったらもう手がつけられないわね。」


 二人は仕方なくといった感じで、了承するしかなかった。

 そうして一行は、下層へと続く階段を降りてゆく……。



 ■ □ ■ □ ■



『あるじ、おきろ!いやなよかんがするぞ!!』


「!!」


 脳裏に響いた大声に、私は飛び起きた。

 その勢いで、肩にかけていたコートがずり落ちる。


 グレイが嫌な予感と言った時は大体当たる。

 それは正しく、良くないことが起こる前兆だ。

 組合(ギルド)に居る時にそれが発動したということは……。


 幸いこの体は見た目の割に頑丈で、あんな体勢で寝てもそこまで体が凝るということにはならない。

 窓の外を見る限り、時刻は昼過ぎ。この凝り具合を見るに、恐らく私は一日近くは何もせずに酒場でゴロゴロしていたに違いない。

 私は、左手で目隠しになっているターバンを上げ、右手でベストの胸の中心に繋がれたお腹の位置まで垂れる金色のチェーンをつまんで、左胸のポケットから、黒鉄(クロガネ)製に金の文字盤があしらわれた懐中時計を引っ張り出し、文字盤が目線の位置まで来るようにチェーンを高くつまみ上げる。

 くるくると不安定に回る懐中時計の文字盤針の先を目で追うと、それから懐中時計本体には極力触れないように(・・・・・・・・・)元の胸ポケットに押し込んだ。


 この懐中時計は、確か……、万物時計(クロノグラフ・オムニア)?といって、現在の時刻を使用者の確認したい単位で表してくれる。要は、使用者の見たい時刻によって文字盤が変化し、年月から日付や曜日、更には秒の百万分の一でも、十億分の一でも、千兆分の一でも見ることが出来る不思議な時計。

 但し、一応保護はしてあるものの、込められた魔力が切れると止まってしまうので、私が直接触るのは避けるようにしている。偶に忘れて触ってしまったり魔力を込め忘れて止まったりするけど。


 そうして私は、今日の日付と時刻と、それからここで寝始めて(・・・・・・・)どれほどの時間が経ったのかを確認する。


 時刻、特に年月を表す場合は、ある時点を零としてその経過を表す。

 それは世界の誕生からだったり、神様の誕生からだったりと様々だけど……、つまりこの懐中時計の使用者は、ある時点を零とした、即ち、それを新たな単位としてある時点からの経過時間を、時刻として表示させる事ができる。


 どうやら私が昨日に寝始めてから、既に一日と半日以上は時間が経ってるみたい。

 それをグレイも私の視界を通して見ていたのか、話しかけてきた。


『あるじ!やっとおもいだしたぞ!きょうは……、やつがかえってくるひだ!』


 やつとは誰なのか、その二文字だけで、しかし私にしては珍しくその存在を覚えていた。

 つまりそれは私にとってはかなりの要注意人物という事なのだろう。

 私は悪寒を感じながらもすぐに席を立ち、床に落としてしまった黒いコートをすばやく拾い上げる。


「エトちゃん?急にどうしたんです?」


「き、急用を思い出した。」


 後ろから、パ……、パセリ?何とかが声を掛けてきた。私はそちらを向いて一瞬足を止めるが、今はこれ以上言葉を返す余裕も、ついでに名前を思い出す暇も無い。


「珍しく何かを思い出したと思えば、急用……、ですか?昨日はずっと寝てましたけど……」


「パティ覚えてないの?ほら、確か今日は――」


「あ、そっか。昨日は私、余りにもエトちゃんがぐうたらしているので忘れてましたけど、そう言えばしばらく組合(ギルド)本部への出張で居なくて、今日帰ってくるんでしたね。ぎるd――」


 私はそれ以上、パセリ(仮)ことパティと、もはや顔すら覚えていない同僚らしき女性が言っていることを無視して、組合(ギルド)唯一の脱出口、というかただの入り口から出ていこうと振り返り――


「ただいまー!」


「!!!!」


 その瞬間、柔らかで、それでいて母性を多分に含んだような声とともに、私は暴力的な程の質量と柔らかさに顔面を蹂躙され、視界がブラックアウトする。



「あれっ???あのすごく可愛いくて、いつもはそっけないけど、でもやっぱり超絶可愛い私のエトちゃんが私に抱きついてる!??!??!……はっ、私はなんと罪深いことをッ!!寂しい思いをさせてしまったわね!あなたのママはここよッ!!」


 そのまま私は背中に手を回され、か細い見た目とは裏腹に、自身の身長の二倍ほどある大剣(グレートソード)ですら軽々と振り回せるほどの腕力を持つ私が、振りほどくどころか、顔面のクッションから一切の隙間すら空ける事も出来ずにガッチリとホールドされた。


 息が……、出来な……い……


 余りの自体に、脳裏に駆け巡る淡い記憶が少しだけ呼び覚まされて、今更ながら名前を思い出したパトリシアが引きつった声で言った。


組合長(ギルドマスター)!エトちゃんが死にそうですから離してあげてください!!」


「えっ?」


 私の意識はそこで途切れた――。

取り敢えずまた3話投稿したので、書き溜めます。

それと次話以降からは主人公おんりーです!

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