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二話「駆け出しパーティ、迷宮都市へ。」

 亡国の英雄、龍滅の(ドラグスレイ・)騎士(ナイト)の物語。


 その昔、まだエルガト国が大陸北東を支配する帝国ではなく、現在より北に位置する小国であった頃。

 エルガトの更に北には国交結ぶ、同じく小さな国があった。


 名をアンクティオというその国は一年のうちの殆どは雪に閉ざされ、北の海から取れる幸と、エルドミッド山脈に連なる白亜の山の麓、唯一地熱によって雪が溶けるその場所に畑を作り、白亜の山の鉱脈を掘って取れる金や銀などの貴金属その他鉱石、まれに取れる聖銀(ミスリル)などを他国に売り、冬の厳しさに負けず人々はそれなりに豊かに暮らしていた。


 しかしある時、白亜の山に住む(ドラゴン)の中に、悪しき力を持つ邪龍が現れた。

 邪龍は白亜の山に住む他の(ドラゴン)やその系譜である眷属達を統べると、アンクティオに戦争を仕掛けた。

 アンクティオは小国だ。しかし、大陸最北に位置し、冬が厳しく、常に畑を荒らそうとしてくる白亜の山の魔獣達に立ち向かわなければならない、そんなアンクティオの騎士達は他のどの国の騎士達よりも強かった。

 それでもやはり(ドラゴン)は強大だ。厚い鱗に覆われた皮膚は人とは違い、中途半端な力で振るわれた、刃や魔術を弾き、そして寒さに強い。

 アンクティオの騎士達が劣勢になるのにはそう時間はかからなかった。


 しかし、そこへ一人の英雄が現れた。


 その若者は騎士などではなかったが、人々の依頼を受け日々魔獣と戦い駆逐する、傭兵(マーセナリー)だった。


 若者は、いずれも巨体を持つ邪龍の眷属達の、その質量を伴う素早い攻撃を華麗に避け、魔術によって強化された剣を用いて、その強固な鱗を刺し貫き切り裂いて、時には強力な魔術を用いて次々と打倒していった。


 やがてその活躍は王の目に留まり、若者はアンクティオの騎士となった。

 そうして、騎士達に傭兵(マーセナリー)達も加わった混成軍は、その若者を筆頭に、邪龍の軍勢を劣勢へと追い込んだ。

 ある時、邪龍の軍勢の中でも特に強大な力を持った(ドラゴン)が若者と混成軍の前に立ちはだかった。

 (ドラゴン)は今までの敵とは比べ物にならないほど力強く、そして無尽蔵の魔力を持ち魔法を操る。そして人を喰らい、ある程度強力な魔術さえも打ち消して、その両方から魔力を奪う力を有していた。

 敗北を喫した混成軍は一度退却せざる負えなかった。

 しかし、命からがら生き延びた若者はそれでも闘志を絶やさなかった。

 その報を聞いた王は、若者に国宝である魔導書を託すことにした。


 その魔導書の名を――








「――時限の書(クロニクル)という、だってさ。一体どんなすごい力を持ってたんだろうな。俺も欲しいなー。」


 荷馬車の外は相変わらず、なだらかな丘陵が延々と流れてゆく。

 茶髪の少年は退屈そうにしながら、街で買ったらしい古びた本を片手につぶやいた。

 すると隣りにいた赤髪の少女が少年の手にあった本を上から取り上げた。


「何言ってんのよっ!「あっ!」そんなものあんたなんかが貰えるわけ無いでしょー。大体、龍滅(ドラグスレイ)の英雄はそれが無くても強かったから、王様に託されたんでしょ?じゃああんたには無理ね。」


 赤髪の少女は意地の悪い笑顔でそう言った。

 茶髪の少年は本を取り上げられて不服そうにしながら、強気で言い返す。


「俺も強くなるし!それこそ、時限の書(クロニクル)なんて無くても(ドラゴン)を倒せるくらいにな!」


 臆面もなく、(ドラゴン)を倒すとまで言った、茶髪の少年に、赤髪の少女はニヤリと笑う。


「でもあんた、強化系(エンチャント)の魔術使えないじゃない。」


「う、うるさいな。これから覚えるんだよ!」


 茶髪の少年は苦虫を噛み潰したような顔をしながら反論するも、赤髪の少女の笑顔は深まるばかりだ。どうやら勉強は苦手らしい。

 それを見て赤髪の少女は言った。


「バカっぽいあんたには無理ね。」


「なっ!なんだとこの!」


 茶髪の少年が少女に今にも飛びかからんとしていると、二人の向かい側に座っていたもうひとりの黒い髪の眼鏡を掛けた少年が言った。


「まぁまぁ二人共、そこら辺にしておけ。そろそろ見えてきたぞ。」


 なだらかな丘陵のその先が突如として開けると、やがて城壁を備えた大きな都市の街並みが姿を現す。

 秋の訪れを告げる初風が、ひやりと少年たちと少女の頬を撫でた。

実は、一話以降は結構主人公出てきません。

四話あたりでちらっと出てきますが、本格的に出てくるのは六話以降です。

( ^ω^ )どうしてこうなった!

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