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一話「少女、酒場にて。」

投稿したい衝動を抑えられなかったんだッ!

 家の外から悲鳴が聞こえる。

 外の様子を見てくると言って出ていった父は帰ってこない。

 不安になった私は守るように抱きしめてくる母の顔を見上げて不安そうにつぶやいた。


「ねぇ、おかーさん。おとーさんは?」


「大丈夫、きっと、すぐに帰ってくるわ。」


 見上げた母の顔は一瞬不安そうな顔をしていたような気がしたけれど、でも気の所為だった。母は笑顔で私の頭をなでながら大丈夫だって言ってくれた。

 私が怖い夢を見ないように、寝るときはいつもこうやって頭をなでてくれる。それで私はいつも安心して眠るのだ。

 けれどそれでも、今は不安だった。いつまでたっても外から聞こえる悲鳴はやまないし、ものが倒れる音や、窓の割れる音まで聞こえてくる。

 それにさっきから遠くで変な音が鳴ってるのだ。


「でもおそとこわいよ?」


 私の顔が未だに不安そうな表情をしているからか、母は私の問に今度はおでこにキスしてから答えた。


「大丈夫よ、家の中は安全だから――」


「でもおとーさんはおそとにいるんでしょ?」


 一瞬母の顔が曇る。


「……きっと、大丈夫よ。だってあなたのお父さんはこの国を守る強い兵士だから。……だから大丈夫、大丈夫よ。」


 少し間を開けて、けれど母はもう一度、私に大丈夫だと答えた。


 そうだ、父は兵士だった。

 でも最後の方の言葉はまるで、自身にも「父は大丈夫だ、自分達は大丈夫だ」と、そう言い聞かせているかのように聞こえた。


 ズシン。


 お腹に響くような重く低い地鳴りが聞こえた。


「アグゥゥウウウアアアアアアギィアアアアアアアア」


 そして先程遠くで聞こえた、変な音が今、頭上で鳴いている。


 ド。


 そこで意識が――痛い――。













「あっ……。まぁ起きたし、いい……かな?」


 頭上から聞こえたその謎の声の正体を探って、私は先程からズキズキと痛みを訴えてくるおでこを抑えながら、お酒と木の匂いがするそこから上体を起こした。


「ん……。」


 眩しい。すごく眩しい。


「はぁ……、女の子がそんなヨダレ垂らして寝ちゃだめですよ?……えっと、痛そうですね……ごめんなさい。」


 なんだか謝られた。

 とりあえず言われて私は片袖で口を拭おうと……、する前に口に布を押し当てられた。


 こんな風に世話を焼いてくるような人物は一体誰だろう。

 もしかして――


「おかあ……さん?」


 私は寝ぼけ眼にぼんやりと映るその人物に対してそう訪ねてみた。


「お母さんて……、私まだそんな年齢じゃないです!というかこんな娘……こんな……たしかに娘にするならエトちゃんみたいな可愛い娘がいいですけど……、っていうか!そんな事言われたって組合長(ギルドマスター)に知られたら私首になりますよ!!!」


「んー??」


 どうやらお母さんではないらしい。

 というか今のやり取りの間に私の左目が慣れてきた。

 私は周囲を見回す。


 どうやらここは酒場のようだ。そこに窓から陽の光が差しているということは今の時間帯は朝か、或いは夕方のどちらかで、恐らく今は前者なのだろう。

 だけどそれにしては広いし、一つ仕切りを挟んで向こうにはもう一つカウンターがある。そこにはお酒は置いて無いようだから、たぶんそっちは酒場ではないのだろう。

 つまりここは何らかの場所に併設された酒場ということである。

 私はその酒場カウンターの端っこでうつ伏せになって寝ていたらしい。たぶん、いつものことだ。


 しかし、……うん。どう見てもお母さんではない。いやお母さんがどんなだったかなんて覚えてないけれど。私のお母さんにしては若すぎる。それになにか、制服らしきものを着ている。


「じゃあ誰?」


「誰って忘れちゃったんですか?……私、確かに組合(ギルド)の中では一番若輩ですけど……、でもそこそこ付き合い長いですよね!?」


「ぎるど……?」


 ぎるど……、うーん……なんだったっけ。


「えぇ、それも忘れちゃったんですか?……はっもしかしてさっき頭を打った拍子に!??あっああああ私のせいですぅうううごめんなさいぃいいい!!!」


 なんだか叫びながら平伏している。

 そこの床、汚いんじゃない?


『あるじ、またものわすれかぁ?あるじはせわがやけるなぁ』


 唐突に、頭の中で子供のような声が響いた。

 うん。そのムカつく声で思い出した。


『えぇっあるじわれのことむかつくの!?』


 ちょっとだまれ。


『……。』


 そうだ、今の私は冒険者(トレジャーハンター)だった。

 "今の"と言うからには昔があるのだろうけど、……昔はなんだったっけ?まぁいいや。

 兎にも角にもここは、冒険者(トレジャーハンター)傭兵(マーセナリー)の仕事を斡旋している組合(ギルド)で、そして私が寝ていたのはそこに併設された酒場というわけだ。


「とっ……とりあえず至急、組合長(ギルドマスター)を呼んできますね!」


 あ、それは止めて欲しい。何故だか思い出せないけどすごく嫌だ。

 兎に角私は目の前の人物を呼び止めようとして、しかし名前を覚えていない事に気がつき、必死に名前を思い出そうとした。


「待って、えっと……ぱ……ぱ……、ああ、パセリシアっ!」


 うん。なんとか思い出した……んだけどなんだろうその顔は。


「はぁ……、誰ですその緑のもじゃもじゃした野菜でハーブの一種で料理の添え物みたいな名前の人は!私の名前はパ・ト・リ・シ・アです!パティと呼んでくださいっていつも言ってるじゃないですか……、いい加減覚えてくださいよぉ……。」


「詳しいね……?」


 パセ……、パトリシアは一気にまくしたてた。私は内心引き気味である。

 なんでそんなに詳しいんだろう。


「エトちゃんのせいです!」


「え?なんで??」


 なんでわかんないけど、私のせいらしい。

 もしかして私、いつも間違えてる?


『あるじぃ、われ、ぱせりはにがてだなぁ』


 そっか。

 今度ごちそうしてやろう。

 苦手は克服しなきゃ駄目だって誰かが言ってた。誰の記憶だろうか。

 ちなみに私はパセリは食べない。だってあれは食べ物じゃなくてただの飾りだから。別に苦手なわけじゃない。ぽりしーだ。

 だからそんな恨みがましそうな目で見るんじゃない。


 ん、何やらパトリシア言いたげだ。


「エトちゃんは今日も依頼は受けないんですか?」


「依頼……ってなに?」


「もう、忘れたフリしないでください!依頼ですよ!い・ら・い!組合(ギルド)にはお仕事たくさん溜まってるんです!もう騙されませんからね!」


 えっと、本当にわからない。

 どうやら私はこの言葉をよく忘れるらしい。


「え?あれ?まさか本当に忘れて……ます?あ、やっぱりさっきのが……、いやでも演技だったら……うーん。」


 私の本当にわからないという顔を見て、パトリシアが狼狽え始めた。

 でも私はその困った顔を見て、思い出してしまった。

 いやほんとは覚えている……、というより知識があるというだけ。

 昔のあの国にも組合(ギルド)に近い物は存在したから。

 まぁ要はお仕事だ。

 組合(ギルド)に届けられる「あれをやってほしい」「これをやってほしい」という頼みを、対価をもらって受けるというわけだ。

 …………。


 さて、やりたくないから寝よう。

 また同じような夢を見るのは嫌だけど、……まぁそれも私の義務みたいなものだ。

 きっと私にとって、それは重要なことだから。


 私は自身の頭に手を伸ばしてサラサラとした髪をなでた。


 ……あれ?いつも巻いているターバンが無い。

 どうしよう、あれが無いと右目を隠すことができない。

 無意識に、今はこうしてしっかりと右目は閉じたままだけれど、そっか、無いのか。

 こうやっていつも片方の目を閉じて常に半分を睡眠状態にし、英気を養っている……、という訳ではなく単に事情があって、あれがなければちょっと気を抜いただけでちょっとずつ魔力が漏れてしまう。

 それに、あれがないとアイマスク代わりにできないから、眩しくって眠れないのだ。

 というか私的にはそっちのが困る。すごく。


 私は周囲に目を彷徨わせて、やがて一点に目を留めた。

 パトリシアの手に握られている黒い布。

 これは先程私の口にあてがわられた布で、……うーん。

 たぶん私の頭にいつも巻かれていたはずのターバンで間違いない。


 ていうかなんで私のターバンを奪ってそれで口拭いたの?


 やがて私の様子に気がついたパトリシアが憤慨したように言った。


「あ、やっぱり分かってますね?もう観念してください。お仕事しないといい加減追い出されちゃいますよ?……って言いながら私もそんな事にならないんだろうなって薄々分かってますけどね。組合長(ギルドマスター)があれですから……。」


 後半の声はなぜだか哀愁と諦観に満ちていた。

 しかしそんな事はお構いなし。

 私は自分の所有物を返してもらうために、パトリシアの右手を指して少し攻めるように言った。


「私のターバン……。」


「え?……あっ、あはは、いやぁ手元に拭くものがこれしか無くてですね、……いえ、あの、すいませんでした……。」


 私がジトッとした目で自身の手の先に握るものを見つめていることに気がついたパトリシアは慌てて私にターバンを返してきた。


 しかし、これでなんで私がおでこをぶつけたのかわかった。

 きっとパトリシアが私を起こそうとしてターバンを引っ張って、私の頭が中途半端に宙ぶらりんになったところで、するりとターバンから転げ落ちてしまったのだろう。

 結果私はカウンターに思い切りおでこをぶつけ、パトリシアの手元にはよだれを拭うのに丁度いい布が手に入ったというわけだ。


「ありがとう。じゃあ、おやすみ。」


 まぁ何はともあれこれでぐっすり眠れる……。

 私は受け取ったターバンを巻き付けた上で、ずらして両目に被せると、再びカウンターにうつ伏せになった。


「……、って寝ないでくださいよ!?」


「…………。」


 私は慌てて起こそうとしてくるパトリシアの声に全く構うこと無く、目を瞑った。

体調を考えれば、投稿は非常にスローペースになるかと思います。

継続が難しくなれば、途中で長期間、投稿をお休みする事もあるかもしれません。

以上の事を読者様にご理解頂ければ幸いです。


一話の文字数は2000文字ちょっと……、を目指しているのですが大体4000文字超えちゃったりするので、大目に見てください。少ないよりマシでしょ!!

一先ず一日一話を三話ほど投稿してみて、様子を見たいと思います。

あとはなんか適当に活動報告とか見て!!

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