いえ、校内での評判です。妹に友達ができました
次の日の昼休み。俺は妹と昼飯を食べるため、櫻子の居る1年生の教室を訪れようと廊下を歩いていた。
「妹が作った弁当を妹と一緒に食べる!……素晴らしい!」
理想の妹ライフが着実に叶っているな~と、実感していると見知らぬ後輩少女に道を遮られる。
「行かせませんよ!」
「えぇ…と、君誰?」
「貴方の敵ですよ。お兄さん」
どうして俺は見知らぬ後輩少女にお兄さんなどと呼ばれているのだろうか?
そもそもこの子は誰だ? 見覚えがない。
敵とか言ってるし、過去に何かしてしまったのだろうか?
「すまん!俺が悪かった!!」
「……なんのことですか?」
どうやら何かしたわけではないらしい。
良かったけど、よくない。
このままでは妹の元へ行けないではないか!
「よくわからんが……そこを通してもらおうか!」
「通しません!」
どうやら意地でも通してくれないらしい。さて、どうしたものか?
「なぜ!俺の邪魔をする!」
「お兄さんが変態だからです!!!」
「な、なんだってっ!!?」
この見知らぬ後輩少女はこんな人通りの多い廊下でなんてことを叫ぶんだ!
これでは俺が下級生を虐めている変態上級生と認知されてしまうではないか!!
「俺のどこが変態だと!!」
「そんなことも分からないんですか!!」
「わからん!!」
この後輩少女は、どうやら意地でも俺を変態に仕立て上げたいらしい。
さて、どうしたものか? 一旦引くか?
それだと櫻子と昼飯を食べる時間が無くなってしまう。
「何でもいい!!ともかくそこを通してくれ!」
「認めるんですね!!やっぱりそうなんだ!!」
「俺はどうすればいいんだ!!?」
もう仕方がない、多少気が引けるが無理やり通ってしまおう。
「もう変態でもいい!ともかく通させてもらう!」
「させませんよ!!」
後輩少女が無理やり通ろうとする俺の制服を掴み引っ張り出す。
「おい!そんなに引っ張られると……!」
「えっ?」
俺の体が引っ張られた勢いで倒れ、後輩少女に覆い被さってしまう。
「痛てて……言わんこっちゃない。大丈夫か?」
「いえ……大丈夫です…。っ!?」
どうやら怪我とかはないらしい。よかった、よかった。
おっと、心配している場合ではない! 早く妹の待つ教室に行かなければ!!
身体を起こそうとして気づく。この右手の感触はなんだ?
「柔らかい……」
「いや……!やめてください……っ…」
後輩少女が涙を浮かべ訴えてくる。もしかしてこれって?
「胸?」
「放して……ください…お願いします…っ……」
まずいまずいまずい!!!
このままでは言い訳出来ないレベルで変態扱いを受けてしまう!
ともかく起き上がろう! そして謝ろう! それしかない!
「何をしているんですか……兄さん?(殺意)」
見上げると櫻子が悪魔の形相でこちらを気持ち悪そうに見ている。
その目に一切の慈悲はなく、どうあがいてもこの後の展開を予期させた。
「後輩少女を押し倒して胸を揉んでいます……」
「言いたいことはそれだけですか?」
「ありません、煮るなり焼くなり好きにしてください……」
「はい」
妹パンチと思いきや、妹キックが俺のみぞうちに放たれる。
一応、頭は配慮してくれたのね……優しい! と思いながら床で悶える。
「貴方は大丈夫ですか?」
「は、はい!」
「家の兄さんが変態行為を働いてしまい、本当に申し訳ありませんでした。」
「とりあえず、その変態はきつく言っときますので許してはいただけないでしょうか?」
「そ、そんな!許します!許します!」
「そうですか、ありがとうございます」
立てますか? と言い後輩少女を櫻子が手を伸ばし起き上がらせる。
その手を兄ちゃんにも欲しいなと思ったが黙って痛みに悶えておく。
「貴女は確か……私の後ろの席に座っている…有坂 秋穂さんでしたよね?」
「私の名前を覚えてくれているんですか!!」
「えぇ、自己紹介の時に自分で言ってましたよね?」
「はい! そうです! 有坂 秋穂です!」
「いや、だから知ってますよ?」
「嬉しいです! 新谷さん!」
「櫻子でいいですよ。そこの兄と被りますし…」
「いいんですか!?では私の事も秋穂と呼んでください!」
「分かりました秋穂さん」
「秋穂でいいです!」
「では、秋穂。お昼ご飯は食べましたか?」
「え?まだです!」
「でしたら私と一緒に食べませんか?」
「是非!」
「では教室に戻りましょう」
「はい!」
二人はそのまま歩いてその場を去ってしまう・・・。
「……友達が出来て良かったな櫻子」
「なんであの人廊下で寝てるの・・・」
「さっき、女の子を押し倒してたぞ!」
「……変態ね。気持ち悪い……」
その後、後輩女子を押し倒した変態野郎として、学校で噂になるのだった。