いえ、誤解です。私が絶対守ります!
「全校集会が終わってしまった・・・」
当初は全校集会など、これ以上なく退屈な時間になると思っていた。
だが、櫻子を眺め続けるだけで、名残惜しい時間へと変わった。
「もう3時間ほど演説をしてくれて良かったのに……気が利かない校長だ。」
まあいい過ぎてしまったことは仕方ない、なぜならば……!
「ビバ! 待っていました下校時間!!」
そう! 妹との下校が待っているからです!
「こうしちゃいられないぜ!」
さあ! 帰ろう! 今帰ろう! 妹の待つ校門へ!!
「良平君! まだ帰りのHRが残ってるよ!!」
「おっと、そうだった。つい勢いで・・・」
そういえば、そんなものもあったな。煩わしい
「座ろう? 先生も多分そろそろ来るよ?」
「ああ・・・」
とりあえず座ったものの、待っている間暇だな……
そうだ! 鷹志と妹ークでもするか!
「鷹志! 妹ークをしようぜ!」
「お待たせしました。帰りのHRを始めます」
何とも間が悪いタイミングで帰ってくる担任教師……。
まあ、早く帰れるならそれに越したことはないが
「先生来たし、また今度ね?」
仕方ない、妹ークはまたの機会にしよう。
◇◇◇
「兄さん、来ましたね」
桜舞い散る今日も良き日、校門前で兄を待ち続ける妹。良い! 凄く良い!
これぞ妹学園生活、遂に始まったって気がする。最高だな! ぐへへへ
「また気持ち悪い顔をしてますね・・・。目立つからやめてください」
「おおっと、すまない。ぐへへ」
「はぁ~・・・、兄さん気持ち悪いです」
呆れている妹も可愛いなー! もっと見ていたい!
だが、これ以上は櫻子の言う通り、確かに目立ったしまう、そろそろやめよう
「そういえば、高校はどうだ? うまくやれそうか?」
「中学とあまり変わりませんね」
「まあ、そんなもんか」
「立ち話もあれですし歩きながら話しませんか?」
「それもそうだな」
妹の横に並びながら歩きだす。肩が当たりそうだドキドキする。
けれども嫌がるそぶりはありません。意識し過ぎか?
「兄さんの方はどうですか?」
「ああ、鷹志とも一緒のクラスだし良いスタートだな」
「あの体育館で会ったお友達さんですね」
「よかったじゃないですか? あの人は多分良い人です」
「ああ、本当に良いやつだぞ! 自慢の友達だ!」
「ホント、なんで兄さんと友達なのか不思議なくらいです」
「鷹志、高評価!!?」
そういえば全校集会の時も何となく仲がよさそうだったし・・・まさか!?
「まさか・・・鷹志に気があるとかはないよな? ないよね?」
「なんでそんな真剣に聞いてくるんですか? 少し気持ち悪いです」
「否定しない!!?」
「違います! 別に気なんてありません」
「よかったー!! 危うく鷹志と戦わなければならないところだった」
「どんだけですか・・・」
だが、油断ならない……。口ではこう言っているが警戒するに越したことはない
とりあえず、鷹志を櫻子に近づけさせるのは今後阻止しなければ……
「なんかよからぬことを考えてる気がします・・・」
「お兄ちゃん頑張ります!」
「何をですか・・・」
「秘密!」
「はぁ~別にいいですけど」
とりあえず鷹志の話題は止そう。だが、そうなると何を話そうか?
う~ん、思った以上に話すことが……ない?
「いい天気だな!」
「そうですね、いい天気です」
会話終了! またしてもミスリード?
誰だよ!? とりあえず天気の話をしておけばいいって言ったやつ!?
「・・・・・・」
「誰も言ってないな・・・しいて言うなら俺か」
「何の話をしているんですか・・・」
怪訝な目で見られている、どうしよう?
このままだと、無言で気まずい……そうだ!
妹の顔を眺めよう! 我ながら天才的だ!
「今度はなんですか? 私の顔に何か付いていますか?」
「・・・・・・」
「ガン無視&ガン見ですか・・・やめてください」
「・・・・・・」
「だから黙らないでください!」
「すまん、何を話していいかわからなくて」
「意味が分からないです・・・」
これも失敗か……。もう俺はどうすればいいんだ!!?
「櫻子!」
「・・・なんですか?」
「生まれてくれてありがとう!」
とりあえず感謝をしてみた。もう俺自身何がなんやらわからん!
「・・・兄さん、今日はいつも以上におかしいですよ。学校で何かありましたか?」
真面目に心配されてしまっている!?
どうしよう、若干逃げ出したくなってきたぞー?
「兄さん? 聞いてますか?」
誰か! 誰でもいい! このピンチを切り抜ける方法を教えてくれー!!
「兄さん、もしかして・・・あの時の怪我がまだ・・・」
櫻子が少し俯きがちに泣きそうになっている。
不味い! ただ、話の話題を考えてただけなんて言い出しにくい!!
どうする? どうすればいい!! ……は! わかったぞ!! これしかない!
「櫻子」
名前を呼んでこちらを向いた瞬間抱きしめる。いきなり抱き着いて驚いたのだろ。
いきなり何ですか!? と言わんとばかりの顔をしている。
「心配しなくていい。もう何ともないよ」
キメ顔で囁く。どうだ! これならば! というかこれでよかったよな?
間違っていたら恥ずかしいのだが!!
「・・・っ、本当ですか?」
「あぁ、何ともない。全然へっちゃらさ!」
「そうですか・・・良かったです」
涙目で微笑む櫻子最高ーぉおおお!!!
誰が想像しただろうか? 下校するだけでこんな顔が見られるなんて!
舞い落ちる桜の花びらも相まって、まるで映画のワンシーンではないか!!
「ぐへへ~~」
俺の頬が緩むと同時に、櫻子のお顔がどんどん凶変していく
あれ? もしかしてこれは・・・怒ってらっしゃる?
「こんな時まで気持ち悪い顔をしないでください!!」
「兄さんの馬鹿!!」
渾身の妹パンチが俺の緩みきった顔に放たれる!
痛い……。だが、幸せだ~~ ぐへへ~
「本当に気持ち悪いです! もう兄さんなんか知りません!」
そんな俺の顔を見てか櫻子は頬を少し膨らませ走り去ってしまう
「ま、待ってくれ! 俺が悪かった~」
「知りません!」
か、可愛い! おっと、惚けている場合ではない追いかけないと!
「・・・・・・」
「真面目に心配した私が馬鹿みたいじゃないですか」
「・・・お兄ちゃんの馬鹿」
「何か言ったか?」
多分、何かを言ったのだろう、けれども声が小さくて聞き取れなかった
なぜかは分からんが、とても惜しいことを気がする・・・なぜかでだろう?
「ふんーだ!」
そう子供のように振り向く櫻子はやっぱり可愛かった。
◇◇◇
「見てはいけないものを見てしまいました・・・」
決して…その…覗き見をするつもりはなかったんです。
私はただ友達になりたかっただけなんです。
私の名前は、有坂 秋穂。新谷 櫻子さんと同じクラスメイトです。
新谷さんは、入試のときから気になっていました!
席も前後で近かったですし、声を何度も掛けようとしました!
ですが、その……引っ込み思案な性格ものでして……あと一歩の勇気が出せなくて…
きっかけが掴めず、その時は一言もお話することが出来ませんでした。
諦めかけてたそんな時でした、なんと新谷さんと同じクラスになりました!
しかも入試の時同様! 私の前の席です! 奇跡です!
神様がこんな私にまたチャンスを下さったのだと思いました。
ですから今度こそと思い、私は勇気を出して話しかけようとしました。
~~~~~例えば、朝のHR終わり~~~~~
(次は体育館で全校集会だよね? 一緒に行くチャンス!)
「あ、あの!」
と前の席へ声を掛けましたが既にもぬけの殻でした。
~~~~~例えば、全校集会の時~~~~~
(今度はちゃんと居るよね! よし!)
「あの!」
「何をしてるんですか兄さん」
「櫻子に会いたくて来ちゃった♡」
(私が話かけようとしたのに・・・)
~~~~~例えば放課後~~~~~
(今度こそ一人ですよね・・・よし!)
「あ、あの一緒に!」
「兄さん、来ましたね」
「え?」
振り向くと体育館のときに私の邪魔をした、あの人が現れます
「おおっと、すまない。ぐへへ」
今までの発言を聞くに新谷さんのお兄さんのようですが……
(気持ち悪いですね・・・)
そんなことを思っていると二人は歩きだしました。
(あれ? 私と家の方角同じなんだ?)
私は声を掛けるチャンスだと思い、後ろからこっそりと着いて行きました。
(一体どのようなお話をしているのでしょう?)
離れているので声は聞こえてきませんが、何やら楽しそうです。
(いいな……私もあんな風に新谷さんとお話したいな……)
そんなことを考えているときでした……
なんとお兄さんが急に新谷さんを抱きしめました!
(え? 道端であんな・・・え? 兄妹だよね?)
突然あらわれた目の前の光景に私は驚きを隠せませんでした
(ど、どうしよ? 止めないと! でも! ~~~)
あまりの光景に固まっていると新谷さんがお兄さんを殴り、走り去ります
(しゅ、修羅場! わ、私とんでもないものを見ちゃった・・・)
そんな風に惚けていると、いつの間にか二人は見えなくなっていました。
「新谷さんはお兄さんに付きまとわれていた迷惑しているのでは・・・」
私は思いつきました。あのお兄さんが居なければいいのではないかと
今思えばあのお兄さんのせいで、私は新谷さんに全く話しかけれません
さっきの様子から察するに、新谷さんはお兄さんに迷惑しているはずです。
「つまり! 私があのお兄さんを何とかすれば新谷さんと仲良くなれる!」
我ながらナイスアイデアです! これで仲良くなるきっかけが出来ます!
「待っていてください新谷さん! 私が必ずお兄さんから守ります!」