はい、新生活は波乱万丈です
「・・・・・・兄さん」
「なんだい? マイシスター櫻子よ」
「どうして兄さんと二人きりなんですか?」
「それはね・・・神様にお願いした結果だよ♡」
「気持ち悪いです。自覚してください」
「えっ、何を?げへへ」
「・・・・・・もういいです」
「はぁー。お母さんたちのせいで・・・」
どうも、こんにちは、妹とデートを満喫中で幸せ真っ盛り、新谷 良平です!
いやー、自分でもどうしてこんな幸せ空間ができたのか不思議でなりません!
まぁ、なんでこんな時間を過ごせているかと言われると・・・
昨日の夜がきっかけだった・・かな
「はーっ!食った食った」
「親父食いすぎだろ、メタボで死ぬぞ」
「馬鹿いうな! メタボ如きで死ぬか!」
「それに見てみろこの腹を! ほら?脂肪も少ししか付いていないだろう!?」
「あ~、はいはい、汚い汚い」
「何だとっ!」
「汚いものを見せつけないでください。気持ち悪いです、龍平さん」
「ごめんなさい」
「わかればいいんだよ」
「お前が言うな!」
「うふふ、楽しいわね~」
そう、思い出した。親父が頼んだ出前の寿司を食べ終わった時だった。
桜さんがとても素晴らしい提案をしてくれたんだ
「ねぇ、龍平さん? 明日、街の案内をしてくれないかしら?」
「おお、デートか! もちろんOKさ! 良平、お前たちはどうする?」
「それはもちろん! 櫻子とデートに決まっているだろっ!」
「嫌です。私は家でゆっくりしています」
「ふふふ、櫻子ちゃんも引っ越したばっかりでこの辺りは分からないでしょう?」
「だったら、お母さんの方へ着いていきます」
「待つんだ、マイシスター櫻子よ。二人っきりのデートを邪魔をしてはいけない」
「別にいいじゃないですか? そもそも街の案内が目的ですよね?」
「お母さんは龍平さんと二人っきりで出かけたいわ~。ふふふ」
「桜さん~♡ぐへへ」
「親父の顔が緩みきっている・・・キモい」
「兄さんもたまにそうなっていますよ」
「マジか・・・気を付けよう。ぐへへ」
「もうなっているじゃないですか・・・」
「そう~。げへへ」
割とナチュラルに兄さん呼びをしてくれるようになってきたな
これはもう、結婚式も近いのではないのだろうか?
「いえ、むしろ遠のいてます」と妹ボイスが聞こえた気がしたが気のせいだろう
「良平! 俺は桜さんと二人っきりでデートに行ってくる!」
「だから櫻子ちゃんを頼むぞ! 家長命令だ!」
「うふふ、よろしくね~」
「任されました!! 親父殿!」
◇◇◇
隔して俺は櫻子と一緒にこうしてデートをしている訳だが
「違います。ただの案内です」
「まぁ、そうとも言うんだけれども」
「そんなことよりここが私たちが通う学園ですか?」
「そうだけど、入試とかの時に来なかったの?」
「来ましたけど・・・その、方向音痴なものですから・・・」
方向音痴と場所がわからないは関係あるのだろうか?
まあ、そうゆうところも可愛いから別に気にもしないのだが
「つまり、毎日俺と登校したいということだな!」
「違います!」
「けど・・・初めの方は一緒に行って欲しい・・です。」
可愛すぎないか? いや、もう可愛いとかいう次元では表現できない!
尊い。ただ尊い! 守りたいこの妹! フォーエバーぁぁあああ!!!
「初めの方と言わず3年間一緒に行こう!!」
「兄さんは2年後には卒業するじゃないですか!」
「留年すれば楽勝だぜ!」
「アホですか・・・。まあ、今更ですけど」
呆れている妹も尊いな~。ぐへへ
「とにかく初めの方だけでいいです。お願いします。」
「お願いされては仕方ない! 任せろ!」
「・・・・・・段々不安になってきました」
「新学期が眩しすぎて見えなくなりました」
「真似しないでください! 気持ち悪いです!」
「・・・可愛い♡」
「素で言わないでください!!」
そろそろ校門の前も飽きてきたな・・・。
というか、ほぼ毎日のように通ってるし見慣れているだけだろうが
そんなことはどうでもいい。次だ! 次!
「櫻子、他に行きたい所あるか?」
「だったら・・・あそこに行ってみたいです」
「あそこ?」
櫻子が指をさす方向を見ると一際高い建物が目につく
「なるほど、ポートタワーか!」
◇◇◇
「兄さん! すごいです! 凄いです! 富士山! 富士山が見えますよ!」
双眼鏡覗きながらはしゃぐ妹マジ尊い・・・!
というか、今までで一番はしゃいでないか?
まあ、可愛いからいいけど・・・
「何富士山に嫉妬してるんですか! 兄さんも見てください! すごいですよ!」
「別に~嫉妬なんてしてないし~」
「してるじゃないですか。そんなことより、ほら見てみてください!!」
妹がグイっと俺を掴んで双眼鏡を覗かせる。
おぉ! 距離が近い! 妹急接近!!!
お兄ちゃんの心臓バックバクだよー、破裂しちゃう!
「ちゃんと見てますか!」
「見てる! 見てるぞ! ぐへへ」
「気持ち悪いですけど気分がいいので許します」
「許された!?」
「そんなことより、どうですか? 兄さんにも見えましたか?」
「おぉ! あれか! すげぇーマジで見える!!」
「ですよね! すごいですよね!! 富士山が見えるなんてすごいです!」
富士山ぐらいで大げさな・・・と思ったが確かにすごい。
壁の案内を見ると天気のいい時にまれに見れるらしい
つまり、俺たち超ラッキー!
妹と急接近できるし、富士山さま様だな!!
「拝んでおこう」
むむむ。なんか徳が集まるのを感じるぞ。早速効果が出ててきそうだ!
「なんで拝んでんですか? 流石に気持ち悪いです。あっち行ってください!」
どうやら徳ではなく怪訝な視線が集まっていたようだ。
◇◇◇
「はぁ~。何もあんなに怒らなくてもいいじゃないか」
「兄さんなんて知りません!」 と一言残し行ってしまった・・・
まあ、ドーナツ状の空間だから一周すれば戻ってくるだろうけど
・・・飲み物でも買って機嫌を直してもらおう。
そう思い、エレベーター付近の自販機で適当に飲み物を買う
「お茶だったら文句もないだろう」
飲みきりサイズのお茶を2つ携え、妹の帰りを待つ
「・・・・・・おかしいな来ない」
割とすぐに飽きて戻ってくると思ったが待ち人はいらっしゃらない。
「動くと入れ違いで下に行かれかねないしな・・・」
「やめてください! 離してくださいっ!!」
妹の叫ぶ声が聞こえる。明らかに普段と声色が違う
それに次第とその他大勢の声がざわついて聞こえる
何か起きてるに違いない。そう思うと考えるより先に体が動いていた。
「いいじゃねぇかよ、ちょっとぐらい!」
「その汚い手を離してください! 警察呼びますよ!」
目の前に映るのは妹が男に乱暴を振るわれている光景。
そこから導き出される俺の答え、考える必要はない腕が勝手に動いてた
「俺の妹に何してやがるっ!!! この糞野郎がぁあああ!!」
ナンパ野郎の腕を掴み、とりあえず櫻子から解放させる
「に、兄さん・・・」
顔を見ると僅かに涙がこぼれている
気丈に振舞って必死に耐えていたのだろう。
よくやった。後は兄ちゃんに任せろ!
「俺の妹を泣かしてんじゃねぇええ!!!」
渾身の右ストレートをお見舞いする。持っていたペットボトルで威力も倍増だろう。
「・・・っ痛ってぇーじゃねぇか!」
「俺は殴られたんだから正当防衛だよな・・・ただで済むと思うなよ!」
ナンパ野郎が殴りかかってくる。
自慢じゃないが俺は喧嘩は得意じゃない。せいぜい親父を蹴り飛ばすのが関の山だ。
「うらぁっ!」
ナンパ野郎の拳をもろに受けて地面に倒れる。
顎にクリーンヒットしたのだろう視界が霞みだんだん意識が薄れていく。
「兄さん!!」
意識をとられまいと必死に抵抗していると・・・マイシスター櫻子の泣き顔が映る。
「兄さん! しっかりしてください!! 兄さん!!」
瞳一杯に涙を浮かべてこんなダメダメな兄ちゃんを心配してくれている
あぁ・・・あんなに泣かせてしまった・・・俺、お兄ちゃん失格・・だな・・・・
次第に妹の声をその他大勢さんの声がノイズのように遮る
うるさいな、妹の声が聞こえないじゃないか・・・
「兄さん!! 兄さん!!」
兄さんも良いが・・・お兄ちゃんと呼んで・・欲しいな・・・
そう思うと同時に俺の意識は刈り取られた。
◇◇◇
目を開けると知らない部屋の天井が見えました。
ここはどこだろうと周りを見渡すと横で妹が寝ているではないですか!
「これなんてエロゲ?」
エロゲってなんだろう? 何か知らんが自然と口に出た。
ちょっとよくわからないが甘美な響きだなー。
そんなことを思っていると、ゴソゴソと妹が動き出す。
「っん~~」
眠たそうに瞼を擦りながらこちらを見る。
「おはよう! いい天気・・・ではないな。暗いし」
何を言っていいか分からず、とりあえず天気の話をしようとしたがミスリードだった。
「兄さん・・・!」
「良かった・・・もう目を覚まさないかと・・・」
俺の上着を力なく掴み、泣きながら離さまいとしている。可愛い。
「心配かけたな・・・もう大丈夫だ」
顔をうずめられているので見えないだろうが出来るだけ優しい顔で答える
「っ・・・うぅ・・・ぅっ」
俺は櫻子の頭を優しく撫でる。
櫻子の髪の毛は触り心地が最高だなーと思うが、勿論口には出さない。
そんなやり取りを楽しんでいると親父と桜さんが部屋に入ってくる。
「おっ! 元気そうじゃないか良平~」
「あらあら、うふふ~~」
「親父! 桜さん! 居たんだな!」
「いるに決まってるだろ・・心配かけやがって」
「悪かったって」
「聞いたわよ~、桜ちゃんを守るため暴漢と戦ったんでしょ~」
「あ、聞いちゃいました? 恥ずかしいな~」
「カッコいいわ~。私も襲われたら龍平さんは守ってくれるのかしら~。うふふ」
「そりゃー守るさ! 父ちゃんこれでも学生時代ドラゴンって呼ばれてたから」
「それって、龍平の龍を横文字にしただけだろ?」
「バラすなよ~、強そうな雰囲気台無しだろ~」
「うふふ、良平ちゃんみたいに身体を張って助けてくれるって信じてるわ」
「もちろんだ! 家族はこの身に変えても守る!」
「流石だわ~惚れなおしちゃう♡」
「ぐへへへ~」
あ~あ~台無しだな親父。
おっとそんなことはどうでもいい。聞きたいことがあったんだ。
「親父、あの後どうなった?」
「あぁ、直接見てないし警察から聞いただけだから詳しくは分からんが・・・」
「相手の男は警察に連れてかれて、お前は病院」
「周りに人たちが証言してくれたみたいでな、お前はお咎めなしだとよ」
「そうか・・・良かった」
最悪、妹のためなら犯罪者になることも厭わないが
やはり犯罪者になるのは世間的によくないからな! セーフ!
「そういえば親父、俺ってどのぐらい寝ていたんだ?」
「せいぜい5、6時間ってところか? おっといけねぇ」
「どうした親父?」
「そろそろ面談時間終了なんだわ」
「はぁ、何言ってんだ? それじゃあ俺が入院するみたいじゃないか?」
「入院すんだよ! 頭打ってるんだから」
「なんだって・・・。 じゃあこの櫻子との幸せタイムは!?」
「終了だな、そしてお前はここで独りの夜を明かせ」
「うんな馬鹿なぁ!!」
「そんだけ元気だし大丈夫そうだが、念のためな? 諦めろ」
「・・・仕方ない。これ以上心配かけたくないしな」
「なんだ? やけに聞き分けがいいじゃないか?」
「まぁ・・・、駄々をこねると櫻子が心配するからな」
今も俺を離さまいとずっと服を握ってくれている。
こんなに俺のことを心配してくれているんだ。我儘を言っている場合じゃない。
「ずっと一人っ子で心配だったが・・・杞憂だったな」
「当たり前だ! だってもう俺はお兄ちゃんだぜ!」
「・・・成長したな、良平」
「あぁ、もう俺も高校生だ・・・大人だよ」
「立派な男になった・・・」
おいおい、親父の奴泣きそうになってんよ! 勘弁してくれ!
涙は櫻子のだけで十分だ!
「あの・・・本日の面談時間は終了なので・・・」
言い出しにくそうに看護婦さんが面談の終わりを告げる。
「ほら? 親父! 時間だ。また明日な」
「ああ、ゆっくり休め」
「うふふ、これが親子の絆ね~羨ましいわ~」
「ほら? 櫻子ちゃん時間よ? 行きましょ?」
「・・・・・わかりました。明日必ず来ます」
俺に心配をかけまいと思ったのだろう、あっさり引いてくれた。
「それじゃ、私たちは帰るわ~良平君」
「大人しくしていろよ~」
「またね・・・おにいちゃん」
そう櫻子が言うと同時に扉がしまる。
「うおぉおおおお!!! お兄ちゃん! きたー――ぁああ!!!」
その日は興奮して眠れませんでした。ちゃんちゃん