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落としたのは妹ですか?   作者: 狼煙緑
家族 編
3/39

はい、私です。兄が気持ち悪いです

 

「そうしようぜ!」


 と、櫻子の案に賛成し、とりあえず家の中に入ったわけだが・・・


「で? どうするんですか?」


 コタツで寝っ転がりながらマイシスター櫻子が尋ねてくる。

 おいおい、既に我が家って雰囲気がすごいな・・・悪くない


「どうするって? 決まっている! とりあえずお兄ちゃんって呼んで♡」

「そんなことは聞いてません。後、気持ち悪いです」


 どうしよう、この妹様はどうやら俺をお兄ちゃんとは呼んでくれないらしい。

 だが、諦めんぞ! こうなったら耳元でお兄ちゃんを連呼してやる!


「黙っててください。お願いします」

「はい! 黙ります!」


 妹にお願いされたので、とりあえず黙ることにした。


「それでお母さんどうしますか?」

「今日は顔合わせに来たんですよね。もう帰っていいです?」


 なんだと! 妹との日常は今日からスタートではなかったのか!

 親父のやつ何にも言ってなかったぞ!


「うふふ、そうね~」

「このまま住んじゃおうかしら」


 あ・な・た・は神ですかっー!!!

 その一言を待っていた!! いや、本音言うと予想すらしてなかったけど

 いやー、さっきは悪魔とか言ってごめんなさい。桜さんあんたはやっぱり神だよ!


「ふざけないでくださいお母さん!」

「着替えとかどうするんですか!?」

「う~ん。どうしようかしら」


 おーっと、雲行きがあやしくなってきたぞ。

 このままでは妹は帰ってしまう。なんとか阻止しなければ・・・

 だが、どうやって? 俺の下着を貸すか? それしかない。


「それについては心配ない!!」


「お、親父っ!!」

「いつの間に部屋にいたんだっ!?」

「さっきからいたわっ!!」

「そんなことはどうでもいい。女物の着替えが必要なんだな?」

「まさか・・・親父! 持っているというのか!?」

「デザイナー舐めんな! 女物の着替えの一つや二つぐらい持っている!」

「おぉ! カッコよくないけど、カッコいい!!」

「見直したぜ!」

「へへ、よせよ。照れんぜ」

「いや、なんで持っているんですか、龍平さん最低です」

「資料用! 資料用だって!!」

「うふふ、流石ね」


 初めて親父がデザイナーの仕事をしていてよかったと思った日だった。



 ◇◇◇



 結果から言おう。妹は家に泊まってはくれなかった。


「現実的に考えてください。無理に決まってるじゃないですか」

「まあ、そうよね。うふふ」


 コタツとか出ている時点でお気づきかもしれないが、現在は2月。

 何が言いたいかというと、新生活を始めるには、中途半端な時期なのだ。


「そもそも、私たちは3月の終わりごろに引っ越す予定ですよね?」

「ええ、そうよ~」

「そうだな」

「そうなの!?!?」

「あれ? ちゃんと言っといただろ?」

「おいおい、親父! 何も聞いてないぞ!」

「あれ? 言ってなかったけ?」

「言ってねぇーよ!!」

「そうか? わりぃ、わりぃ」


 うん、やっぱり訂正。この親父はやっぱり糞だ。

 見直した俺が馬鹿だった・・・。


「私、明日学校がありますし、そろそろお暇したいんですけど」

「そうね、私も引き継ぎを終わらせないといけないわ~」


「えっ? マジで帰ってしまうのか!?」


 このまま、帰してしまっていいのだろうか? 

 今、思い返せば俺、二人のこと名前しか知らなくないか?


「そ、そうだ! 自己紹介! 俺、二人のこと全然知りませんし・・・」


「そういえばお前、二人とは今日が初対面だったな。」

「あんまりにも馴染みすぎてて忘れてたぜ!」


 糞親父!本来だったらお前が切り出してくれって話だよ・・・

 そんなことを思っていると櫻子が切り出してくれる。


「若草・・・これからは新谷でしたね。」

「新谷 櫻子です。言うまでもないと思いますが・・・」

「4月から一応・・・兄さんと同じ高校に通う予定です」

「・・・よろしくお願いします」


「兄さん・・キターーーー!!!!」


「なんですかっ! 大声を出して気持ち悪いです!」


「もう一回! もう一回言って! 録音するから!」


「キモいです! 調子に乗らないでください、お願いします。」


「お願いされては仕方ない・・・録音はやめよう」

「当たり前です」


 我ながら妹にチョロ過ぎな気がするが・・・兄ってこういうもんだろ?

 それにしても俺と同じ高校に通うのか・・・!

 つまり、後輩で妹! 属性強すぎないか! ひゃっほーう!


「私も紹介しようかしら? うふふ」

「お願いします! ぐへへ」

「元気ね~。 うふふ」

「私は、新谷 桜よ~。」

「龍平さんとはお仕事で知り合って~」

「歳は~~いくつに見える?」

「24歳!」

「いい子ね~。うふふ」


 やったぜ! 頭撫でてもらっちゃった!

 それにしても見た目凄い若いよなー。

 あれで娘を産んでるんだからなー

 櫻子が15歳としてーあれ? 桜さんの実年齢って・・・


「それ以上は考えちゃいけないわ~。ふふふ」


「痛い、痛い! 桜さん! 爪が! 爪が頭に!」


「お母さんって呼んでもいいのよ?」


「お母さんこれからよろしくお願いします!」


「いい子ね~。 うふふ」


 この人は怒らせない方が身のためだな。

 そんなことを思っていると、親父が寂しそうにこちらを見ている。


「なぁ、この際俺も紹介したほうがいいか?」

「えっ? 別に。親父のことなんて知りたくないし」

「息子が冷たいっ!」

「私も別にいいです」

「櫻子ちゃんも!?」


 今更知る必要もないだろう。

 新谷 龍平。デザイナー、最近テレビでよく見る。

 ほら、別に知りたいことなど別にない。

 そんなに言いたきゃテレビで言ってろ!


「そんなことより俺の自己紹介だろ!」

「新谷 良平! 16歳!」

「好きなものは妹で、嫌いなものは親父だ!」

「よろしく!」

「つまり、アホってことですね。わかりました」

「なぜだぁ!!?」

「いえ、気持ち悪いので」

「届けこの愛!」

「届きません」


 つれないなー。まあ、そういうとこも含めて可愛いと思うが


「だから、口に出てます。気持ち悪い」


 出してないと思うんだけどな・・・顔か? 顔に出てるのか?

 そうに違いない! 愛が溢れてとまらない!


「・・・・・知らないです」

「ふふふ、外も大分暗くなってきましたし、そろそろ帰りましょうか?」

「そうですね。お母さん行きましょう」

「それじゃ、また来ますね~。バイバイ良平くん。龍平さん♡」

「お邪魔しました。ほら母さん行きましょ」


 ・・・・・・帰ってしまった。


「なぁ、親父・・・」

「なんだ良平?」

「二人は次、いつ来るの?」

「そりゃー、3月終わりごろ・・・の引っ越しの時だろ」

「・・・・・・」

「1ヶ月も会えないじゃん!!!」

「今更だな!!」


 この日の晩は1ヶ月も妹に会えないことを悲しみながら枕を濡らすのだった




 ◇◇◇




 帰り道


「ふふふ、良平くんに実際に会ってみてどうだった?」


「気持ち悪かったです。あんなのが兄だなんて信じられません」


「ふふふ、そうかしら? きっといい子よ~」


「お母さんは見る目がないです。」


「そう? お母さん、男を見る目には自信あるのよ~。うふふ」


「ないです。節穴もいいところです」


「うふふ、そうかしら?」

「けど、きっと櫻子ちゃんにもわかる日が来るわ~。きっとね」


 お母さんが真面目に喋っているのは久しぶりに見ました。

 なにが、そんなにいいんだか? ・・・考えるのはやめましょう

 どうせ、一緒に住みだしたら、わかるんでしょう・・・多分


「・・・・・・」

「お兄ちゃん・・・か」




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